その手法に賛同してもしなくても、ウォーレン・バフェットは偉大な投資家です。彼には数々の名言がありますが、賢い人が失敗するのは「3つのL」しかない、と言っています*1。
only three ways a smart person can go broke: liquor, ladies and leverage,"
賢い人が壊れるのは「酒と女とレバレッジ」しかない
酒と女というのは、男が致命的な失敗をする理由としてよく出てきますね。「飲む打つ買う」という表現もあります。「打つ」の代わりに、ここで「レバレッジ」が出てくるのが投資家らしいところ。
さて、レバレッジの是非は置いておいて、酒と女というのは古今から溺れて死ぬと言われ続けているものです。なぜなのでしょう?
酒とは何か
酒というのは、比喩的なもので贅沢一般を指すというのが1つあります。贅沢の定義はいろいろですが、価格と効能があまり比例しないものと考えると僕のなかでは腑に落ちます。別の言い方をすると、機能面ではなくステータスなどの記号的価値が大きいものとでもいましょうか。ブランド品などがそうですね。
酒は、その中でも特に効能と価格が比例しません。安いアルコールなら1リットルで数百円ですが、ウィスキーなどでは何千円が当たり前ですし、ワインになると数万、数百万円になります。当然美味しさが違うといえば違うのですが、価格と比例するかは怪しいところ。それは、ワインの味を鑑定するのが専門のプロであっても、ラベルなしでは高いワインと安いワインを見分けられるとは限らないということを見てもわかります。
お酒というのは、記号的であるがゆえに、浪費しやすく、だからこそ浪費自体をステータスと考える人にとって、お金を使いやすいのでしょう。
もう一つ、酒というのは「世界3大ドラッグ」の1つだということ。『ドラッグは世界をいかに変えたか』には、大麻やアヘン、覚醒剤と並んで、ドラッグのビッグ・スリーとして、アルコール、カフェイン、ニコチンが挙げられています。ニコチンは嫌煙のトレンドもあって摂取する人は限られていますが、アルコールはイスラム圏を除いて一般的ですし、カフェインは日常的に摂られているものです。
薬物の面白いところは、脳に直接働くだけに、確実に簡単に幸福感が得られかつ依存性があることです。そして、生きていくうえで必須ではないのに、求めて止まれません。
薬物の特徴は、依存しやすく、かつ正常な脳の働きを阻害すること。アルコールも人間性を麻痺させることで、普段ならばやらない行動を取ったりすることで、取り返しのつかないミスをしてしまいます。お酒を飲んで気が大きくなってしまい、つい飲み会で全員に奢ってしまった……こんな経験をしたことのある人もいるでしょう。
こうした薬物下では、賢い人でも正常な判断はできないわけで、それは当然失敗につながるわけです。
女性とは何か
女性は、同様にいくらでもお金を費やせる対象です。高級レストランやアクセサリー市場は、男性から女性へのプレゼント需要がけっこうな比率を占めるでしょう。またトロフィーワイフという言葉があるように、金銭的成功を女性を使ってステータスに変えるというのもよく見る光景です。
この『損する結婚 儲かる離婚』という本は、極めてドライに結婚にかかるコストを計算したものです。結婚して家族を持つということはたいへん素晴らしいことですが、それを金銭換算するとものすごいコストとなります。何しろ結婚するということは、単純にいうと、その後得た金銭の半分を分け与えるという契約でもあるのですから。
Amazonの創業者ジェフ・ベゾスが離婚にともない、15兆円の資産の半分が婦人に分与される可能性が話題になりました。結局譲渡されたのは4兆円にとどまったようですが、婦人はこれで世界3位の女性富豪になったといいます。
本来女性との付き合い方も、人対人として考えるべきなのですが、お金があればそれを武器にしたいと思うのも人情。そして、それを求める女性がいるのも事実です。こうしたことが、女性での失敗につながっていくのかもしれません。
お金を使ったっていいじゃないか
一方で、お酒やそれに伴う交流、そして女性との向き合い方の価値はひとそれぞれであり、そこに高い、安い、合理的、非合理的という判断は必要ないという考え方もあります。
お酒の場で楽しい時間を過ごし、結果的に多くのお金を失うことになっても、それはそれ。女性絡みで莫大なお金を使うことになっても、本人がそれに納得していればいいともいえます。
この「3つのL」は、きっと人間の根源的な欲求であり、だから本能的にも社会的にも、金銭的な合理性が働きにくいものなのでしょう。
*1:実際には、ウォーレン・バフェットのパートナーのチャーリー・マンガーが言った言葉のようです