FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

パタゴニア創業者、全株式NPOに譲渡 会社の新しいカタチかも

パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードが、4000億円超といわれる同社の株式をNPOに譲渡しました。今後、パタゴニアの利益を気候変動対策に充てると宣言しています。

forbesjapan.com

パタゴニアの精神

パタゴニアは年間売上高が15億ドルにものぼるアウトドアの大手です。そしてそのうちの1%を、自然環境の保護、回復のために寄付することを誓約し、実行してきました。その総額は1億4000万ドル以上になります。

 

これは世によくあるCSRとは違います。パタゴニアの精神とは、アウトドアアクティビティを楽しむために、自然を守ることにあるためです。

 

そもそも、パタゴニアやガチの登山家のためのギアを作る会社でした。しかし、あるときアパレルに参入し、フリースなどで大ブレイクします。このときも、ウェアの開発は本当に過酷なアウトドアでしっかりと使えるかどうかでした。しかし、アパレル参入の意図はほかにもありました。それは、高利益率のアパレルで得た収益で、真の登山家の役に立つギアを作り続けるということです。

 

つまりパタゴニアにとってアパレルは金儲けのための手段であって、だからパタゴニアのウェアは高いのです(もちろん機能的にも優れていますけど)。で、その金儲けは1%の寄付にまわって地球環境を守り、またシリアスな登山家の助けとなる道具作りに生かされます。

 

僕の大好きな本の1つに、『社員をサーフィンに行かせよう』があります。これはパタゴニア創業者が、パタゴニアがどう考えて経営をしてきたかを記した本です。

そのタイトルに現れているように、パタゴニアの社員は全員アウトドア好きです。そして、店舗が忙しかったとしても、ビジネスと良い波の両方がきていたら、当然のように波を選ぶし、社員にもそれを当然のように推奨します。そのように経営してきたわけです。

 

ビジネスを無駄に拡大することを良しとしないパタゴニアの姿勢は、下記の有名な広告にも現れています。

パタゴニアは、「会社として消費者主義の問題に正面から取り組む時がやってきた」と書いています。

たちが作るすべてのものはこの地球から、戻すことのできない何かを奪っています。パタゴニアのウェアのひとつひとつが、たとえそれがオーガニックであれリサイクル素材を使ったものであれ、その重さに対して何倍もの温室ガスを排出し、最低でも半分の廃棄物を生み、地球上のあらゆる場所でだんだんと希少になっていく淡水を大量に使用しているのです。

「Don't Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」:ブラックフライデーとニューヨーク・タイムス紙 - Patagonia

 

そんなわけで、パタゴニアのウェアを選ぶ人は、ザ・ノースフェイスとかアークテリクスを選ぶ人と、ちょっとコンセプトが違います。もちろん、コスパに優れたモンベルとも違います。モノはいいけど、それ以上に高くて、でも高い理由も分かっていて、そうした活動を支援するために、敢えて高くてもパタゴニア製品を買うのです。

地球がパタゴニアの株主

そんな、いわゆる金儲けとは真逆の方針でやってきたパタゴニアという会社が、ここまで大きくなったのですから、不思議なものです。環境保護のためにお金を回したいし、社員からアウトドアの楽しみも奪いたくない。だから良いものは作るけど、それ以上に高いよ? そしてあまり売れると地球環境に悪いから「買わないで」、壊れても「修理して使おう」と言っています。

 

こういう会社なので、創業者が「富豪と呼ばれたくない」とか、上場させるのではなくてNPOに議決権を譲るといった決定をすることは、意外でもありません。

 

そして、これを「地球が私達の唯一の株主」だと言っています。素晴らしい考え方ではないですか。

企業は何のためにあるのか

ぼくは企業のCSRは基本的に欺瞞だと思っています。営利目的でもっとカネ儲けすることを目指している会社が、「もしかしたら会社のイメージアップにもつながるかも」とか考えて行うCSRというのは、いってみれば費用対効果の低い広告のようなものです。

 

災害地域に会社として寄付金を出す企業もあります。当然、多額だと株主が許しませんから、ほんの数百万円とか。これも、経営者の自己満足であり、強く言えば株主に対する造反行為です。そんなに寄付がしたいなら、自分の報酬の中から出せばいいのに、会社を私物化しているがゆえに、コソコソと寄付をするのです。

 

上場し、株主に会社の成長とリターンを約束した時点で、その企業は約束を守らなければならないのです。

 

しかし、非上場の企業はまた別です。少数株主の意見は尊重しなくてはなりませんが、その企業をどんな目的で活動させようとも、それはオーナーの自由。そして、投資するのではない関わり方ーーその会社で働くとか、その会社の製品を使うとかーーならば、ぼくは利益最重視の企業よりも、設立時のビジョンを守って運営している会社のほうを選びます。

 

そんな意味で、イヴォン・シュイナードの決定は素晴らしいと思いますし、強く尊敬するとともに、さらにパタゴニアへの愛が増しました。ぜひ、パタゴニアの高いウェアを購入して、少しでも地球環境に貢献したいと思います。

 

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