FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

これから50年、必要になる考え方や能力について(2)会計力

夏休みで暑いので「これから50年を考えると、こんな考え方や能力が必要になるんじゃないか」と思っていることを、さらさらと書いてみます。それは、科学的思考力と会計、そして統計的発想です。前回は科学的思考力について書きました。今回は会計力です。

商売の積み重ねが経済になっていく

ぼくは基本リバタリアンなので、アダム・スミスの言う「見えざる手」が大好きです。各自が自分の利益を追求することが、実は社会全体の利益につながる。これってかなりすごいことだと思いません?

 

学校の道徳の授業では「みんなのことを考えなさい」「自分勝手はいけません」と習います。いろいろな昔話も故事成語も、自分だけ儲ければいいやと好き勝手やる人を否定します。時代劇でいえば、自分の利益だけを追求する人は悪徳商人であり、私財をなげうって世のために尽くす人が聖人とされるのです。

 

にもかかわらず、アダム・スミスは、みんなが私利私欲に突き進めば経済が発展するというのです。この概念を初めて知ったときは衝撃でした。

 

もちろん、そこにはいくつか制約があって、例えば法を犯しちゃいけないとかもあるし、重要なこととして情報の非対称性もあります。これは、その商売を専門にしている売り手と、素人の買い手では持っている情報に違いがあるので、売り手は相手を騙しやすいということです。

 

ビッグモーターじゃないですが、よく中古車の例が使われます。中古車販売店は、その車のコンディションを把握していますが、買い手はよく分かりません。そのため売り手は相手の無知につけ込んで、不具合のあるクルマを高く売ることが可能になってしまうという話です。

 

純粋な私利私欲に従えば、相手を騙して高く売ることもできてしまいますが、これがよろしくないのはその通り。これを防ぐには、第三者の査定を入れたり、メディアなどの情報流通によって情報の非対称性を解消していったり、事後的に口コミなどによって評判をチェックしたりなどの方法があります。でも最終的には職業的倫理観に頼るしかないともいえるかもしれません。

 

ともあれ、個別の企業の利己的な営みが積み重なると、大きな経済というものになっていく。ミクロ経済的な捉え方ではありますが、世の中に対する一つの見方なのではないかと思っています。

会計という考え方

そんな企業の営みを理解する上で、会計はその行動をクリアにしてくれます。アダム・スミス的な文脈において、企業は自らの利潤=利益を最大化するように行動するわけですが、その利益とは基本的に会計的なものを意味します。

 

これが、売上からコストを引いた残りが利益――というような、家計簿的なものであればわざわざ会計なんて言葉を持ち出す必要もないかもしれません。この式においては、企業は売上を上げるかコストを減らすしか、利益を増やす方法がないからです。

 

ところが現実の企業では、ここに借り入れと設備投資が入ってきます。借り入れはPLには直接は反映されず、金利負担くらいしか出てきませんから、貸借対照表(B/S)を理解する必要があります。設備投資は、キャッシュは一気に出ていきますが、B/S内ではそれが土地や機械などの資産に姿をかえます。そしてPL上は、定率または定額法で減価償却していくわけです。

 

売上の基礎は生産設備であり、それを増やすには現金が必要で、それは前年利益を再投資するか株主から調達するか借り入れを行うかしかありません。この資金調達=ファイナンスが、世の中の企業の動きの多くを動かしていることに気づくと、これまた世界の見方が変わります。

どうやって会計力を身につけるか

ではどうやって会計力を身に着けたらいいのでしょうか。この分野も数多くの本が出ていますが、実はオススメは自ら取り組んでみることです。

 

そもそも会計のPLやB/S、CF計算書といった財務諸表は、投資家や銀行や経営者自身が、自らのビジネスを把握するために作るものです。そして投資家や銀行は、財務諸表を見ることはあっても、「来年の財務諸表をこうしよう」と意志をもって行動することはありません。

 

自ら財務諸表を作る立場に立つと、来年の財務諸表をどうしようという点から経営戦略が立てられるようになります。現場の管理職や営業本部長はどうしても視点がPL止まりですが、CFOや社長の立場だとB/Sをどうしていくかという点で事業を見られるようになります。

 

ぼく自身は会社づとめをしているときに、幸いなことに財務諸表を株主などに説明する立場でした。そして予算という観点で財務諸表を作成し、予実を追っていたわけです。さらにFIRE後は、自分の会社のPLやB/Sを作成して内容を確認しています。これぞ活きた会計の使い方なんじゃないかと思っています。

 

もう一つ、たいへんオススメなのが企業研修でしばしば登場する「戦略MGマネジメントゲーム」です。これは各自が社長となって、原料を仕入れ、加工し、販売してお金を回収するという、基本的な商売の流れを体験できるゲームです。ポイントは、毎期PLとB/Sを自身で作成し、ビジネスの状態を分析し、来期の予算を立て、来期のゲームに臨むということを繰り返すことにあります。

※大型機械3台という重投資戦略♪

 

ゲームですから現実よりもテンポよく進行し、なぜPLやB/Sをチェックする必要があるのか、なぜ予算を立てる必要があるのかということを肌で実感できます。

 

そして、特に事業拡大期において、キャッシュがいかに重要かを理解できることも戦略MGの特徴です。銀行が貸してくれないなら高利貸から年利20%でも借りたい気持ち、とか、積み上がった在庫を原価割れでも売っぱらって現金に換えたい気持ちというのが、腑に落ちるわけです。

ビジネスと金融、そして投資の基礎

ぼくは投資においてあまりファンダメンタルズを意識する投資家ではないのですが、それでも財務諸表から、その企業がどんな状況にあるかを理解するのは重要だと思っています。そして、優秀な経営者は誰でも口がうまいわけですが、数字は決して嘘をつきません。その企業が粉飾でもしていない限り、財務諸表は信頼できるのです。

 

大学が科学的思考力を身に着けたのと同様に、20数年の会社員生活で得たスキルのうち、最重要なものがこの会計力だったのではないか。最近はそんなふうに思っています。

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