株や投信などの金融資産は、配当などのインカムゲイン、値上がり益のキャピタルゲイン以外にも、実は収益を上げてくれます。今回はその方法について。
保有する株や投信が稼いでくれる
株や投信はうまく活用すれば、それ自体が利益を上げてくれます。空売りをしたい人に株を貸し出して対価をもらう貸株、信用取引の証拠金の代わりに使う代用有価証券、借り入れの担保に入れる証券担保ローン、そして証券会社が保有投信に対して付与する投信マイレージといったところです。
メジャーな銘柄なら0.1%程度の貸株
まずは貸株です。対象は上場株式で、小型で値動きが荒く値下がりリスクが大きい株式ほど貸株料が高くなっています。
正直、メジャーな株はだいたいどの証券会社でも0.1%か0.05%。1%以上の貸株金利が付くのは聞いたこともない小型株がほとんどです。まぁ自分のポートフォリオ内の銘柄の貸株料をチェックするくらいの意味はあります。
米国株の貸株を行っているのはSBI証券だけ。貸株料は各社で異なりますが、頻繁に変更にもなるので、よほど差がないと移管までする意味があるかどうか。ぼくは以前みずほ証券で貸株を行ったことがあります。こちらネットで手続きが完結せず、都度相対で紙の契約書を結ぶというものでした。ただ貸株料はネット証券に比べてちょっと高め。銘柄によっては対面証券で相談してみるのも一案です。
さて貸株にはいくつかの注意点とリスクがあります。まずは優待と配当金は貸株状態だともらえません。そのため証券会社は権利付日だけ貸株を解除するサービスを提供している場合が多いのですが、意図しない動作になったという報告も度々聞きます。これが注意点の一つ。
もう一つが税金です。貸株からの収益は「雑所得」に分類され、自動的には税金がひかれません。つまり確定申告の際に雑所得として申請して自分で税金を払う必要があります。なお確定申告をしていなくて、かつ雑所得の額が年間20万円以内なら申告は不要です。
最後にリスクを。株式は通常ほふりに預けられていて証券会社は取り次いでいるだけです。そのため証券会社が破綻しても自分の株式には影響はありません。いわゆる分別管理ってやつです。ところが貸株をしている最中は証券会社名義となり、証券会社が破綻すると株式は戻ってきません。
貸株の金利が年利0.1%だとすると、証券会社の信用リスクだけ見ても、1000年に1回、その証券会社が破綻するリスクを負っているのと同じです。
時価の8割の価値に 代用有価証券
信用取引をする場合、通常現金で証拠金を入れる必要があります。ところが、証拠金の代わりに株式や投資信託を代用有価証券として使うこともできます。現金は金利を産みますし、借り入れにはコストもかかるので、代用有価証券の活用は収益を生んでいるのと同じことになります。
掛け目は株式でも投資信託でも8割以下です。基本的には80%だと考えていいでしょう。例えば100万円の時価の株式なら80万円分の代用有価証券として利用できます。80万円の現金と同じ価値を持つということです。
現金に付く金利が0.2%(あおぞら銀行の場合)なら、代用有価証券として使うことの収益率は0.16%です。また1.5%で借り入れることを考えると、収益率は1.2%にもなります。正直、信用取引を使う人なら、貸株に入れるよりも代用有価証券として活用したほうがリターンは大きいと思います。
ただしすべての証券会社でどんな株式や投信でも代用有価証券として使えるわけではありません。例えば全ての証券会社において、NISA口座内の株式は代用有価証券に使えません。また、米国株の信用取引において代用有価証券に使えるのは米国株だけです。
なお、代用有価証券として使いながら貸株にも出せるというサービスも最近増えてきています。少し貸株料が減る感じです。
株式を担保に現金を貸出
株式などを担保にして現金が借りられるのが証券担保ローンです。基本的に富裕層向けのサービスで、銀行が傘下の証券会社を通じてサービスを提供していたり、プライベートバンクでも定番のサービスです。
その中でも手軽なのが、野村證券と野村信託銀行の野村Webローンでしょう。現時点では、各種証券を担保に金利1.5%でお金を借りられます。Webから手続きでき入金も即時。キャッシング的に簡単なサービスです。金額は10万円から1億円まで。
掛け目はざっくり下記の通りの時価に対する比率です。
- 国内株式 50%
- 日本国債 80%
- 国内社債 60%
- 投資信託 60%
- 外国株 50%
- 外国債券 60%
何に使うのが合理的か?
それぞれのサービス、人によって魅力を感じるポイントはそれぞれだと思います。ぼくの場合、ほぼ毎月月末に信用取引で大きなポジションを取るので、その観点でどのサービスを利用するのがベストか考えてみます。
まず貸株は、0.1%程度しか利益がありません。一方で証券会社破綻のリスクも負います。まぁ大手ネット証券が破綻するリスクは極小とは考えていますが、これだけの利益(1000万円貸株しても年間1万円です)のために全損リスクを負いたくはないという感覚もあります。そのため、ほかに選択肢がなければ、そしてわざわざ移管の手間をかけないで済むなら使おうかくらいの消極的な向き合い方です。
その上で、代用有価証券と証券担保ローンはよく考えないといけません。いずれもメリットがあるので、商品別にどちらを使うか考えてみます。
まず日本株・東証上場ETFです。代用有価証券として使った場合掛け目は8割。一方で証券担保ローンの場合、掛け目は5割です。信用取引の証拠金として使う場合の掛け目と利率は次のようになります。
- 代用有価証券:8割・コストゼロ
- 証券担保ローン:5割・1.5%
これは代用有価証券として活用するのがベストですね。
続いて投資信託です。こちらも代用有価証券として使うほうが良さそうです。ただし日興証券では投信は代用有価証券に使えず、楽天かSBI、マネックスで使う必要があります。
- 代用有価証券:8割・コストゼロ
- 証券担保ローン:6割・1.5%
そして外国株です。外国株は外国株の信用取引における代用有価証券にしか使えません。つまり月末のクロスには利用できない。となると、野村證券に置いて証券担保ローンに活用するのが有効です。ちなみに外国証券の移管は、どの証券会社でもほぼ無料で行えるようです。
- 代用有価証券:ー
- 証券担保ローン:5割・1.5%
ただしWebローンは担保に使える米国株はかなり限られます。有名個別株はけっこういけますが、ETFとかは意外とダメ。ここが意外と難しい。現在利用できるメジャーなETFはこんな感じです。IEFはないのにTLTがあるのが今風でしょうか?
- QQQ
- SPY
- TLT
- VTI
- VOO
- VIG
※初出でVTとVTIを誤って記載していました。正しくはVTIです。VTは対象外でした
ぼくはAlphabet、Meta、Amazonを野村に入れて証券担保ローンを使っていますが、ほかのETFも野村に移そうか検討中です。