FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

書評『日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨』ハイパーインフレに備える

元JPモルガンの敏腕トレーダーである藤巻氏の最新著書を読みました。日本の財政が厳しい状態にあり、破綻は不可避。で、どのように破綻するかというと、ハイパーインフレが起き、日銀が倒産して、新日銀が誕生するというシナリオではないか? ということを記した本です。

日銀破綻

日銀破綻

 

 

これから日本に起こることと対応策:ドル資産編

「何が起きるのか」「なぜこんなことが起きるのか」の前に、こうなったら投資家はどうしたらいいのか? の解説からチェックします。藤巻氏は、一環して、対応策は「ドル資産と仮想通貨だ」と言っています。

 

日本では「円こそが避難通貨だ」と信じている人がいるようですが、米ドルこそが避難通貨です。世界ではそう考えている人のほうがよほど多いと思います。

2018年8月12日の日経新聞「トルコショック、市場を揺らす」の記事の中でステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのマイケル・アローニ氏は「安全資産への逃避でドル高が継続すれば――」と発言しています。世界では「安全資産はドル」と思っている証拠です。

ドルの持ち方としては、「ドルMMFかドル預金をお勧めします」としています。この2つの違いは税金で、下記のように選べばいいということです。課税所得330万円以上で、所得税10%+住民税10%となって20%に達するので、所得が圧縮できる人以外は源泉分離課税が有利です。

  • ドルMMF 源泉分離課税 20% 所得の多い人向け
  • ドル預金 総合課税 累進課税 所得の少ない人向け 要確定申告

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また長期のドル建て債券はやめた方が良いと言っています。それは、日本にXデーが来て円が暴落すれば、米国長期金利も上振れする可能性が高いからです。金利が上がれば債券価格は下がります。しかも、長期になるほど(デュレーションが長いほど)金利変動の影響を受けるからです。

ドルを買うのは日本の金融機関でいいのか?

ドルを買っても、日本の金融機関にあずけていたら結局封鎖されたり召し上げられたりという疑念もあります。ただし藤巻氏は、次のように書いています。

ドル預金の場合、預けてある銀行がつぶれてしまえば話は別ですが、生き延びるのならきちんと返ってくると思います。最近、特にメガバンクは日本国債の保有を減らしていますから、金利上昇リスクに決して弱くはありません。

銀行システムは基礎的なインフラですから、時の政府はなんとかして維持を図るでしょう。

さらに、海外の金融機関に口座を開くのはたいへんで、さらにマネーロンダリングに外国の政府や金融機関が敏感になっているためたいへんです。

日本の金融機関に依存しない仮想通貨 

もう一つの逃避先が仮想通貨です。

そもそも仮想通貨であるビットコインが世界的に注目を浴びたのは、2013年の欧州危機です。債務不履行の危機にあったキプロス政府が預金封鎖による資金課税を実施した際、キプロスの預金者と同国をタックスヘイブン(租税回避地)としていたロシア富裕層が「避難先」として選んだのがビットコインだったのです。

ビットコインのような仮想通貨は、どこの政府の管理下にもありません。つまり、封鎖しようとしてもできないのです。さらに、金の地金などとも違い、多額でも送金が低コストで簡単、保管も容易です。

 

乱高下による価値毀損のリスクはありますが、日本破綻時は間違いなく仮想通貨のレートは暴投するでしょう。

 

こうした目的で仮想通貨を買う場合、最も歴史が長く、多くの人が使っている、仮想通貨の王というべきBitcoinが唯一の選択肢になると思います。

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いったい何がおきるのか?ハイパーインフレ

 藤巻氏の日銀破綻へのシナリオはこうです。

通常、財政赤字がたまると長期金利が上昇し、財政赤字への警告が発せられ、累積赤字の蓄積が止まるのです。

とろろが、発行する日本国債を日銀が書い続けるために国債価格は下落せず、つまり長期金利は上昇していません。これによって、市場のコントロールが失われ、日本はいくらでも国債を発行できる状態になっています。

 

ところが長期金利の上昇が抑えられているため、短期金利と長期金利の金利差がなくなり、地域金融機関の経営悪化が止まらくなってきました。長期金利をうまく誘導できずに上昇が始まると、それは国債価格の下落とイコールです。

日銀の保有資産の運用利回りは2017年度で0.264%。うち国債の運用利回りは0.279%です。ということは長期金利が0.279%に達する(ただし期間全部で金利が並行して上昇することが前提)と、日銀は時価ベースでは評価損を計上し始めることになります。

評価損が貯まり、債務超過に陥ったら、日銀の信用は失墜します。それはつまり日銀が債務として発行している日銀券、つまり円の失墜。円の価値が大幅に下落する、いわゆるハイパーインフレへと突き進むというシナリオです。

景気拡大にともなうインフレを止める手段がない日銀 

異次元緩和によって景気浮揚策を取り続けていますが、藤巻氏が問題にするのはその後の出口戦略がないことです。つまり、いざインフレが始まり、それをコントロールしようとしても手段がないことを意味します。

 

通常は短期金利を上昇させてインフレを抑制します。現在とり得る金利上昇手段は、「日銀当座預金への付利金利を引き上げるという方法」になります。これは銀行が日銀に預ける金利を上げるという方法です。しかし、FRBと同様に付加金利を上げる策を取った場合、 日銀が支払う金利額が膨大になります。

付利金利が2%になれば1年ちょっとで「引当金勘定+準備金」を使い果たし、債務超過に陥ります。

というわけで、出口戦略を取ろうとすると日銀の経営が危うくなるというのです。

実際に(債務超過に)陥らなくても明確に債務超過に陥ることがわかった時点で、円は急落していくでしょう。円の急落は、物価を上昇させます。さらなる付利金利の引き上げが必要になり、債務超過はさらに大きくなります。さらに円安が加速するという悪循環です。日本売り(通貨、国債、株式の売り)の発生が予想されるのです。

ハイパーインフレへの国の対策は? 

ハイパーインフレが起きた場合、昭和2年や21年に行われたような預金封鎖と新券発行が考えられますが、藤巻氏はその可能性は低いといいます。

(当時は)私有財産権が確立していない憲法だったのですから、かなり強烈なことができたのかもしれません。しかし私有財産権が確立している現憲法下で同様のことができるか私には疑問です。

次に財産税の徴収の可能性ですが、こちらも低そうだというのが藤巻氏の見立てです。ハイパーインフレは実質的に借金(国債)を棒引きにするようなものなので、そもそもが大増税に等しいからです。

 

そして一番ありそうなシナリオが、「日銀を倒産させ、新しい中央銀行を創設すること」だとしています。これは日銀券=円 が無価値になり、新しい中央銀行が新しい紙幣を発行することを意味しています。

日銀という半官半民の会社がつぶれて、債権者(=国民や民間金融機関)が債権(=日銀の債務である発行銀行券や日銀当座預金)を実質失うことは、憲法で認められている私有財産権の侵害にはならないと私は思うのです。

円建てのすべてがガラガラポン 

このように、ハイパーインフレで円の実質的な価値が失われ、さらに日銀破綻で円が無価値になったとき、当然日本国債は超大暴落、日本株も大暴落しているでしょう。その時価値を保つのは、実利用できる不動産や、海外でも価値がある金、そして米ドル、さらには仮想通貨となります。

 

財政悪化の要因である、年金などもガラガラポンで大きく内容が変わるでしょう。「円」で計算されるすべてのものが価値を失うというわけです。

 

藤巻氏のシナリオの通りになるのか、またそれはいつなのかは分かりません。5年後かもしれませんし、30年後かもしれません。しかし、異次元緩和に出口がないのも事実のようです。僕らができるのは、実物資産のほか、ドル建て資産、金、そして仮想通貨を保険代わりに持っておくということになると思います。

日銀破綻

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