新興国の債券に投資するETFが相変わらず人気です。ただし、この債券には2つのリスクがあります。
自国通貨建てでは為替変動
新興国が債券を発行するときに、自国通貨建てで発行する場合があります。ブラジルであれば、自国通貨のレアルですね。円をレアルに替えて債券を買い、レアルで分配金が出る形です。
この場合、為替レートが動くと損失が出たり利益が出ることが分かります。例えば、2015年のレアルは45円程度でしたが、現在は29円まで下落しています。レアルの価値が64%まで低下したということです(下図)。
ブラジル国債の利回りは10%近くありましたが、これで4年間複利運用すると46%増です。一方で為替は36%下落しており、両方をかけ合わせると、93%になってしまいます。さらに利益分については税金もかかりますね。
新興国の利回りが高いのは、インフレ率が高く、それはつまり通貨価値が下落する傾向にあるからです。利回りの高さはインフレによって打ち消され、ほとんど利益が出ないということが分かります。
下記は、新興国の自国通貨建て債券を組み合わせた1566の組入比率です。
外貨建て債券ではデフォルトリスクが
新興国の債券にはもう一つ、外貨建ての債券があります。多くは米ドル建てですね。こちらの場合、ドルで購入してドルで分配金が出て、元本もドルで返済されます。そのため、インフレの影響は受けないといえます。
先の1566は自国通貨建て債券へ投資するETFですが、例えば新興国債券ETFのEMBなどは、ドル建て債券への投資になります。
ただし、こちらにはデフォルトリスクがあります。デフォルトとは、債券の利払いができない状態のこと。つまり、払ってもらえるはずの分配金が出ないリスクがあるということです。
デフォルトは珍しいのか? と思ってちょっと調べてみると、2000年以降でも下記のようにいろんな国がデフォルトしています。ギリシャなどは恒常的にデフォルト状態だそうで、高利回りでも貸しにくいですね。アルファベットは、S&Pが国債(ソブリン)につけた長期格付けです。
ギリシャ 恒常的 B+
ジンバブエ 2000年
コートジボワール 2000年
ケニア 2000年 B+
ナイジェリア 2001年、2004年 B
アルゼンチン 2001年 B
インドネシア 2002年 BBB-
ミャンマー 2002年
パラグアイ 2003年 BB
ウルグアイ 2003年 BBB
ベネズエラ 2004年 SD
ドミニカ共和国 2005年 BB-
エクアドル 2008年 B-
最高がAAAでAA、Aと下がっていき、BB以下は投資不適格と言われます。 ベネズエラはSDとなっていますがSDとDはデフォルトです。ベネズエラは200万%を超えるハイパーインフレとなっており、国内がこういう状況では、当然ドル建て債券の返済もできず、デフォルトするということです。
為替変動は長期的に起こる
為替の調整で高利回りが打ち消される状況は、継続的に起こるのではなく、長期的に調整が入って起こります。つまり、比較的為替が安定していても、あるタイミングで一気に暴落します。
逆にいうと、それが起こるまでは、高金利の恩恵を受けられるというわけですね。これを狙って投資することは、投機となります。
ドル建て資産も同様の影響を受ける
一方で、日本の場合はなかなかデフレを脱却できず、海外のほうが金利が高い状況が続いています。つまり、金利差を調整するように為替レートが変動するのであれば、円の価格は長期的に上昇することになります。
※目先1ドル100円、来年90円台PPPは中短期の尺度にあらず
この図のとおり、物価指数は継続的に下落しておりデフレ状態ですが、ドル円レートは連動していないのがこの20年です。
つまり米国という高金利通貨への投資は、本来ならば為替レートの調整で損得なしになるはずが、日米の現状は為替レートが調整されずず利益が出ているということになります。
円高リスクと日本の国債デフォルトリスク
本来なら金利差に従って円高が進むはず。ただし、日本はGDP比率200%を超える債務比率によって、デフォルトリスクもあります。先のS&Pによると、日本国債の長期格付はA+。かろうじて投資適格の状態ですが、日本国債がヤバイとなったら、国債は暴落、つまり円も暴落するでしょう。
現在は、金利差による円高と、デフォルトリスクが示す円安が綱引きしている状態ではないか? とそんなふうに思っています。
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