FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

VIXで損失と利益の心理的影響を実感する

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同じ利益でも損失でも、その状況によって人の感じ方は変わります。買った株が暴落して半値になったら夜も眠れないほどの悲しみになりそうですね。では、売った直後に暴騰してしまったら、同じように夜も眠れないほど悲嘆にくれるでしょうか?

損得とアクションの4パターン 

考え方して、能動的にアクションしたか/何もしなかったか、得られるはずの利益を失ったのか/実際に損したのか、の4パターンで考えてみます。

 

  1. 買っておけば、儲かった      動かない結果、利益逸失
  2. 売らないでいれば、儲かった    動いた結果、利益逸失
  3. 売っておけば、損をしなかった   動かない結果、損
  4. 買わないでおけば、損をしなかった 動いた結果、損

 

最近の市場動向から、どんな例があったか見てみます。この(1)の例としてはVIXロングの再投資がそうです。結果論ではありますが、再度VIXロング・ポジションを取っていれば、トランプ対中貿易戦争で大きな利益を得られました。(2)は、VIXロングの売却です。売却しないでロング・ポジションを取り続ければ、1 と同様に利益が得られたはずです。

 

(3)は株価下落への直面。ゴールデンウィーク明けは株価の調整が続きましたが、株を売らずに持ち続けた結果、損を出しました。(4)は昨年のVIXショック時の追加証拠金です。VIXが急騰し、ロスカットを避けるために追加証拠金を入れたのですが、結局、ETN自体が償還されてすべてが水の泡となりました。素直にロスカットされていれば傷は浅かったというのが後知恵です。

  

損失は利益逸失より辛い

行動経済学でいうプロスペクト理論として、損失回避傾向があります。期待値が同じでも、利益よりも損失のほうを重く見るというものです。シンプルな例として、ある手術があったとき、「1割が死亡します」というと手術を避ける傾向がありますが、「9割が生存します」というと手術に前向きになるというものがあります。

 

投資において、得られたはずの利益を失うことを利益逸失といいます。これは本質的には損失と同義のはずです。例えば、100万円の当たりくじを紛失した場合、本来は100万円もらえていたはずですから、本質的には100万円の損失です。ただしこれは、100万円入った財布を落としてなくしてしまったよりも、心理的なダメージが小さく感じるはずです*1

 

先の例だと、最も強く損失を意識して心にダメージを受けるのが(4)と(4)です。利益逸失よりも損だからです。

 

逆に、「10年前にAmazon株を買っておけばよかった」というのは、利益逸失ではありますが、心にダメージを受けるようなものではありません。

 行動した結果のほうが辛い

何かを決断して行動するのは大変ですね。多くの場合、現状から変化させるのは、そのこと自体にパワーが必要です。逆に「今のままでいる」というのは人にとって心地いいもののようです。決断が不要だからでしょうか。

 

いったんある状態になったら「そのまま」を選好することから、「デフォルト」を変更することで、人の考え方を簡単に動かせることが知られています。行動経済学でいう「ナッジ」の一つです。

 

海外の例では、確定拠出年金のデフォルト設定を株式にしておくことで、多くの人がそのまま株式に投資を続けることが知られています。逆に、日本の401kなどではデフォルトが定期預金です。その結果、ほとんどの人が株式ではなく定期預金で401kを運用するというマズイ状況になっています。

 

行動した結果出した利益逸失や損失は、やはり心のダメージが大きいですね。先の例でいうと(3)より行動した結果の損である(4)のほうが辛く感じます。(1)より(2)のほうが心にダメージです。

投資しないという「選択」による利益逸失

いずれも本質的に損失ならば、最大の問題は実は(1)です。それは心のダメージが最も小さいために、これで損をしたという意識がほとんどないからです。

 

例えば、

  • 10年前にS&P500のインデックスを買っておけばもうかった
  • 10年前にAmazonを買っておけば激しく儲かった

というのは事実ですが、現金のまま銀行に眠らせておいたら利益を逸失しています。

 

もちろん、これは後知恵です。儲かったのはたまたまだとも言えます。もしかしたら、現金で持ち続けることが正解だった可能性もあります。ただ、これが利益逸失であり、本質的に損をしているという実感が全くないことが問題だと思うのです。

 

実際に損を出せば、反省し、何がいけなかったか考え、次回に向けて対策を取ります。ところが、損をしている実感がない場合は、こうした行動を取らないんですね。知らない世界の出来事だと思って終わりです。

利益の可能性とリスクを常に考えて行動したい

改めて思うのは、ほかにもっと利益を得られる可能性はないのか、そのリスクはどのくらいなのか、を常に考えていたいということです。

 

現金をそのまま持ち続けるなら、債券を買うことで少なくとも利子を得られます。金利変動によって債券価格も変動してしまうリスクはありますが、現金より期待値は高いでしょう。株価指数を買うという選択も同じです。

 

自分が現金を持つのなら、ほかの選択肢も考慮した上で、敢えて現金を持つ。現金を持つ選択をする。そういう行動をしたいものです。

 

また同様に、株式を持ち続けるのなら、税金や手数料を考慮しないとして、いまその株式を全額売却し現金化したとして、その現金でまた同じ株を買うかどうかを自分に問いたいと思います。いったんポジションをクリアして、現状肯定バイアスをなくした上で、改めて決断したいものです。

 

*1:なけなしの100万円を失ったほうが、それはダメージが大きいだろうという解釈もあるかもしれませんが、例えば宝くじで100万円得たあとに、その財布を落としてしまったという状況を考えてみても同じです