これまで生命保険は入るだけ損という記事を何度か書いてきました。正確にいうと、保障部分の価値はあるけれど、貯蓄部分については損するよ、というものです。ところが、明治安田生命の「じぶんの積立」という生命保険は、裏技的にお得な保険なんですね。
いつ解約しても返戻金100%
この「じぶんの積立」は、生命保険でありながら次のような特徴があります。
- 死亡時の保障は払済金額の1.1倍
- いつ解約しても返戻金は100%
- 5年後の満期で、返戻金は103%
これはどういうことを意味するのでしょう。保障が1.1倍というのは、これまで10万円保険料を払ってきたとして、死んでも11万円しか支払われないということです。この時点で、保障という意味では生命保険の価値がほぼないことになります。
ポイントは、「いつ解約しても返戻金100%」です。つまり定期預金のようなものです。5年たつと103%になって解約できるので、年率換算すると0.6%の定期預金に入っているようなものです。ここだけでも悪くないですね。
保険料控除を使うためだけの保険
しかし最大の特徴は、これが生命保険控除の対象だということです。つまり、掛け金の分だけ税金が減らせるというわけです。正直、得しかありません。すごい保険です。
ではどのくらい税金が減るのかを計算してみます。生命保険控除は、所得税と住民税の両方があります。それぞれ所得控除の上限は次のようになります。
- 保険料年間2万円以下 全額控除
- 〜4万円 保険料/2+1万円
- 〜8万円 保険料/4+2万円
- 8万円超 一律4万円
じぶんの積み立ては1口月間5000円。つまり、1口の場合、年間で6万円となり、所得控除は3.5万円となります。2口の場合は4万円ですね。
住民税のほうは次のようになります。
- 保険料1万2000円以下 全額控除
- 〜3.2万円 保険料/2+6000円
- 〜5.6万円 保険料/4+1.4万円
- 5.6万円超 一律2.8万円
同じく、1口でも2口でも2.8万円の控除です。
所得控除額だけ税金が戻ってくるわけではない
注意しなくてはいけないのは、この控除は「税額控除」ではなく「所得控除」だということです。つまり、この金額ではなく控除額に税率をかけた分だけ税金が戻ってきます。
住民税のほうは一律10%なので、年間2800円の税金が戻ってきます。こちらはシンプルですね。所得税は累進課税なので、人によって税率が違います。
所得税率の計算はちょっとやっかいです。収入に対してサラリーマン全員に認められる基礎控除を引き、さらに社会保険料を引き、配偶者控除、扶養控除などを引いたものが、「課税所得」になります。この課税所得に対して累進課税がかかります。
そのため年収額に比べて課税所得はけっこう小さいものになります。しかもそれは家族の状況によってけっこう変わるのです。よくある所得税率表は、この「課税所得」に対して何パーセントと書いてあるので注意が必要です。
国税庁が年収ごとの課税所得のモデルケースを出しています。これによると、年収500万円の場合で、課税所得は82〜246万円。年収800万円だと303〜467万円、年収1000万円の場合は474〜638万円です。
年収600万円以上の課税所得を抜き出すと、次のようになります。
さらにこれに対する累進課税税率は次のようになります*1。
つまり、普通のサラリーマンならだいたい10〜20%の税率が適用になるわけです。生命保険控除が適用になるということは、この税率分だけ税金が安くなります。
掛け金に対する保険料控除による利回り
これによって、税金は1口の場合で年間6300円〜9800円、2口の場合で6800円から1万800円安くなるわけです。では、払った保険料に対して何パーセントになるのか。計算したのが下記です。
なんと年間利回りが10%を超えてきます。これは大きいですね! ただしこの率だけを見て保険に入ると失敗します。払った保険料は積み上がっていきますが、控除対象は払った年だけだからです。5年間は保険料は拘束されますから、5年間通算でどうなるのかを見る必要があります*2。
1口と2口、そして家族構成によって年間戻ってくる税金が変わります。それぞれについて、1年め、2年め……5年めまで、拘束資金に対する利回りを表にしたのが上記です。例えば2口で毎年6800円の税金が戻ってきたとして、それを5年続けると、5年めの利回りは1.1%まで低下することになります。
そして5年間通しての年平均利回りは、一番下に書いたパーセント、つまり2.18〜6.27%ということになります。
10%というとすごくお得なように見えますが、複数年資金が拘束されることで、効果がだんだん薄れていくことがわかります。それでも5年間の通算で平均利回り2%超というのは悪くはないですね。ノーリスクですから。
次回は、実際にじぶんの積立に申し込みをしてみたときの体験を元に、注意点をまとめてみます。