FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

高配当の落とし穴 配当はどこから生まれるか

高配当銘柄っていいですよね。ぼくも大好きです。米国銘柄ですが、ARCCなど配当利回り10%超の銘柄を保有しています。でも、高配当銘柄の配当がどこから出てくるかを確認しておくと、配当のメリット、デメリットが分かります。

企業の利益を分解してみる

当然ながら、配当金は企業の利益から支払われます。どんな構造なのか、簡単に図解してみましょう。

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利益から役員報酬や法人税を支払った残り、いわゆる純利益から配当は支払われます。この純利益が、いわゆる株主の利益なわけですが、これを配当として出すか、自社株買いに回すか、内部留保として事業の再成長に使うかは、株主総会決議が必要な重要な方針です。

配当に回すか内部留保するか

ここで分かるのは、配当を増やせば、その分内部留保が減るということです。内部留保はそれを使って事業の再成長に使われます。あたかも会社のカネのように見えますが、実際はこれが事業成長をもたらし、企業価値の増大、キャピタルゲインの原資となるわけです。

 

また利益を自社株買いに使えば、流通している株式数が減り、既存の株主あたりの価値は増大します。極端な話、理屈的には流通している株式の半分を自社株買いすれば、株価は倍になるわけです。

 

さらに、配当には大きな課題があります。それは、配当を受け取る際に税金がかかるという点です。国内企業なら20.315%、海外企業ならばさらに現地課税として10%が課税されます。

 

内部留保や自社株買いでキャピタルゲインが増加した場合でも、株式を売却して利益を受け取るときには同率の税金がかかります。ただし、実際の売却までは課税を先送りできます。税金部分を含み益の状態で再投資に回しているのと同じなので、このほうが投資効率が上昇するわけです。

配当を出すことのメリット

では配当の意味合いはどこにあるのでしょうか? 一つは、内部留保に回しても資金の使いみちがない場合です。企業によっては、事業投資によってさらに収益を増加できるチャンスがない場合もあります。

 

成熟した大企業で、安定して成長している企業の場合、追加で必要な事業投資資金は少なく、内部留保に回すよりも配当として株主に還元したほうが、総合的なリターンが大きくなる場合もあるわけです。

 

2つ目は、事業も財務基盤も安定していて、極めて低金利で融資が受けられる場合です。昨今の金融市場がこの状態ですね。株主のものである利益を事業投資に回すよりも、これだけの低金利であれば借りてしまったほうが結果的にパフォーマンスが良い。そんな判断をする場合もあるでしょう。

 

3つ目は、株主に対する説明責任を果たせることです。企業の会計に関わったことのある人なら知っている通り、企業業績というのはお化粧が可能です。利益はいろいろな形で操作できるものなのです。これは、粉飾決算とまでいかなくても、減価償却の認識を変更することなので合法的に行なえます。

 

株価は、あくまで将来の企業業績予想に基づいて決まり、それによってキャピタルゲインが定まります。その業績予想は、必ずしも確実ではなく、必ずしも信頼できるものではないということです。ところが配当は確実です。企業の決算を信頼できなくても、受け取れる配当は信頼できます。「カネを見せろ!」という話です。

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配当を出すために借金する企業

このように配当は企業の投資家への信頼の証なのですが、そのため業績が悪化してもそう簡単には配当を減らすことはできません。増配を繰り返すことをたいへん大事にしている企業も多くあり、何があっても配当だけは継続するという意気込みが感じられます。

 

ところが業績不調なタイミングで、配当を継続して出そうとするとどうなるでしょうか。例えば、XOM(エクソン・モービル)の1株あたり純利益(EPS)は直近の12ヶ月平均で3.36ドルです。一方で1株あたり配当は3.48ドルです。純利益を超える配当を出しているわけで、いわゆる配当性向が100%を超えてしまっています。

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※エクソン・モービル(XOM)のEPS推移。過去12カ月平均で3.36ドル

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※エクソン・モービル(XOM)の配当(Payout)。直近で3.48ドル

 

その期の利益から配当を払いきれないので、過去の内部留保を取り崩したり、資産を売却したり、新たに借入を行って配当を払っている状態なわけです。

 

これは、しばらく前に話題になった毎月分配型投信の構造と同じですね。配当を払い出すために、原資を取り崩している状況です。内部留保や資産は、大きな意味で株主の資産であり、それを減らして配当を出している構図です。

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配当を出すために、内部留保がゼロ状態で、借金をして配当を出している。いわば債務超過状態で配当を出している企業も、米国企業にはそこそこあります。

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日本企業だと、債務超過企業には銀行はお金を貸しませんが、米国だと黒字で安定したビジネスモデルを持ち、現金を稼ぐ力がある企業にはお金を貸します。その企業の信用で借りたお金を配当として出すことが許容されているわけです。

高配当の魅力と限界

キャピタルゲインで稼ぐには、その企業が将来も安定的に成長していくことを信頼できることが必要です。一方で、高配当というのは、現金を定期的に払ってくれるわけで、いってみれば経営を信頼できなくても現金は信頼できるというメリットがあります。

 

ただし、長期的に保有する株式であれば、その配当が稼いだ利益の中から払われているのか、タコ足配当的に払われているのかはチェックする必要があります。利益額を超えて配当を支払っているなら、キャピタルゲインを期待する株主からすれば、保有資産がどんどん減っているわけで、当然株価下落につながります。

 

増配企業と一口にいっても、それ以上に利益が伸びているのかどうかは確認した上で、投資する必要があると考えています。

 

→とはいっても、配当はキャピタルゲインよりも節税できるというメリットがあります。それについて、まとめました。

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