FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。投資歴20年以上。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家。ロジックとエビデンスを大事に、運と不確実性を愛しています。

GDPの増加率より株式リターンのほうが大きいわけ 営業レバレッジと財務レバレッジ

インデックス投資の理屈の一つに、「世界経済(GDP)が上昇するに従って企業業績も拡大するから株価は上昇する」というものがあります。だから世界経済の成長を信じるのなら、全企業の合計業績も上昇し、それは株価インデックスの上昇につながるというわけです。

 

ところが、世界経済(GDP)の上昇率は過去20年(2000〜2019年)の平均値で3.7%程度です。IMFの統計でも、直近の成長率は3.4%。一方で、世界株式に時価総額加重平均で投資するVTのリターンは、8%を超えます。なぜ経済成長よりも株式のリターンのほうが大きくなるのか。そのヒントが、ハワード・マークスの名著にありました。

 VTのリターンは8%超 しかも長期になるほど向上

全世界の株式に投資するVTは、最もお手軽で確実なインデックス投資です。設定が金融危機(リーマンショック)後の2009年ということもありますが、コロナショックを入れても平均リターンは8.28%。ローリングリターンを見ると、3年平均、5年平均、7年平均、10年平均ともに9%を超えています。

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この、経済成長(GDP成長)よりも株式のリターンが上回るのはなぜでしょうか。

GDPと企業利益の関係 

まず前提として、市場のムードなどによるPERの変化の影響を除外すれば、株価はEPS、つまり一株あたり利益に連動します。増資もあれば自社株買いもありますが、増資は株主資本の増加となり、自社株買いは株主資本を減少させて株価を上げますから、ニュートラルと考えましょう。

 

続いてGDPとは何でしょうか。GDPの定義にはいくつかありますが、1つの定義である分配面から見ています。これは、企業が生み出す付加価値の合計だとざっくり言えます。

 

付加価値は、売上から原価を引いたもので、原価は別のどこかの企業の売上になりますから、すべての企業の売上から重複分を引いたものだともいえるでしょう。そしてこの付加価値は、固定資本減耗を引いて、残りを雇用者、株主、国で分け合います。

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このとき、分け合う順序はこのようになります。まず最初に固定資本減耗が引かれます。機械の修理費などですね。続いて債務の利子を払います。ここまでは業績にあまり関係ありません。そして次に雇用者給与です。業績が良ければ多少増えるし、悪ければ多少減りますが、そこそこ安定しています。次に、税金が取られます。利益が増えれば増えただけ一定比率で増えていきます。赤字ならばゼロです。

 

そして最後に残った分を、株主が取ります。利益が多くなったとき、その恩恵を最も受けるのは株主ですし、利益が減ったときに最も取りっぱぐれるのも株主です。最もレバレッジが効くのが株主取り分で、最も安定しているのが債券利子になることになります。

営業レバレッジ

別の見方をします。「市場サイクルを極める」には、「営業レバレッジ(Operating leverage)」という表現が出てきます。

一般に営業レバレッジの効果は、総費用に占める固定費の比率が高い企業で高くなり、変動費の比率が高い企業で低くなる。

 図にするとこんな感じです。固定費が低い企業では、追加の売上があっても利益は50%しか増えません。ところが固定費が高い企業では、追加の売上があると利益は100%増加します*1

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もちろん、固定費が高い企業は売上が減少するとあっという間に利益がなくなります。いわゆる、ハイリスク・ハイリターンな構造だということです。巨大な設備を必要とする産業や、コストのほとんどを人件費が占めている事業は、固定費が高くなりがちです。

 

これは、売上が増加傾向にある場合、その果実の多くをもっていくのは株主だということも意味しています。固定費が高いということは、世界経済全体でみて、給与や債務の比率が大きいということになりますが、そうなるほど、経済成長の恩恵を受けるのは株主になるということです。

財務レバレッジ

もう一つの視点で見たのが財務レバレッジです。企業は営業するにあたって必要なお金を、資本または借入金で集めます。利益の増加はB/Sでいう資産の増加ともいえますが、このとき、その恩恵を最も受けるのも株主です。負債比率が高いほど、利益の影響が増幅されます。

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負債の比率が小さい企業の場合、資産増加に伴う純資産増加率は50%でしかありません。一方で、負債比率が高い企業では、同じ資産増加でも、純資産は倍増します。純資産とは、つまり株主の資産のことなので、やはりリターンが大きいわけです。負債、つまり債券に投資している人は、一定の利息は払ってもらえますが、企業の利益成長の果実は基本的に取れません。

GDPの増加の恩恵は、営業レバレッジと財務レバレッジによって増幅される

このように、GDPの増加 ≒ 企業付加価値の増加は、その多くが株主に還元されるということを見ました。そして、営業レバレッジの効果によって、人件費に代表される固定費よりも多くの増減を、株主は得ることになります。さらに財務レバレッジによって、債券投資家よりも大奥の増減を、株主は手にします。

 

これらの仕組みはすべて、優先順位とレバレッジなので、もし企業が業績を伸ばせない場合は、真っ先に悪影響を受けるのは株主になります。しかし、世界経済全体で見た場合、企業利益は増加しているわけです。すると、そこにレバレッジがかかり、株主の取り分は経済の成長率を超えて増えることになります。

 

これが、GDP上昇率よりも株価上昇率のほうが高い理由だと考えられます。

 

ちなみに、代わりに損をしているのは、GDP並みかそれ以下の昇給しかしていない従業員と、固定された利子しか得られない債券投資家ということになりますね。これは、トマ・ピケティのいう「r > g」(株主リターン > 経済成長率)の理由だともいえると思います。

21世紀の資本

21世紀の資本

 

 ちなみに、ピケティ自身は、r を株主だけでなく債券利回りも含めて言っており、下記の記事で紹介したように、給料上昇率≒g が借金の利息 ≒ r より大きければ、みんな無限に借金するから、自然と r のほうが大きくなる、というロジックを展開しています。 

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 ※GDPって何よ、とか三面等価の原則とか分配面とかはこちらにちょっと書きました。 

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*1:正確には変動費がありますが、一般に変動費は売上に比例してかかるので、構造は変わりません