FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

年利60%も 仮想通貨の流動性マイニングってなんだ?

2020年に大ブレイクしたのがDeFi、中でもDEX(分散型取引所)への流動性マイニングです。取引所へ仮想通貨を預け、流動性を供給することで、年率10%を超えるようなリターンを得ることができました。しかし、DeFiの人気にともない、それが稼働するプラットフォームであるEthereumのガス代は高騰。1回の取引で5000円近いコストがかかることも出てきました。これでは数百万円くらいの投資を行わないと、コスト負けしてしまいます。

 

そんな中、登場したのがBinanceのDEXと、そこへの流動性供給です。ちょうどBNBとETHがBinanceにあったので、このペアで流動性を供給してみることにしました。年率リターンは17.7%を超えます。

流動性プールを活用したUniswap

ブロックチェーンの仕組みをある程度理解している人でも、DeFiのDEXへの流動性供給というのはわかりにくいものの1つだと思います。簡単に説明してみます。

 

まずどこかの企業が運営している取引所(中央集権型取引所)に対して、プログラムだけで動作する管理者のいない取引所をDEX(分散型取引所)といいます。昔からいくつかのDEXがありましたが、大ブレイクしたのは、Uniswapの登場です。

 

Uniswapが登場したのは2018年11月。しかし2020年に入るころには、他のDEXを追い抜いて最も使われている分散型取引所になりました。第2位に付けているSushiswapはUniswapのコピーですから、ほぼ市場を席巻していることになります。

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ではUniswapの何がそんなにすごかったのでしょうか? 優れたUIUXなどの理由もありますが、最大の特徴は、株式取引などで一般的な「板」取引ではなく、流動性プールに基づいて交換を行っていることです。流動性プールを使ったDEXは、「Kyber」や「Bancor Protocol」などがありましたが、Uniswapの一人勝ちとなりました。

 

この流動性プールとは、簡単にいえば、予め預けられた通貨ペアの比率で交換レートが決まり、板などの売買マッチングを介さずに交換が行われる仕組みのことです。例えば、ETHとAAAという2つの仮想通貨の交換を考えてみましょう。

 

最初に流動性プロバイダーが、10ETH10と500AAAを、リザーブとして流動性プールに提供します。このプールの定数は両方を掛けた5000になります。ここで、誰かが1ETHをAAAに交換したい場合、この流動性プールを使って交換がなされます。

 

まず1ETHがプールに送られます。ETHが11になりますが、このときに全体の定数が5000を保つようにAAAの量が調整されます。つまり、AAAは454.5に減り、買い手には差額の45.5が送られるという具合です。交換レートは、1ETH=45.5AAAです。これが、DeFiのDEXで主流になっている、AMM(オートメイテッド・マーケット・メイカー)の仕組みです。

 

リザーブのETHとAAAの比率が変わったため、次に1ETHでAAAを買う場合は、37.9AAAにレートが変わります *1。しかしこれが市場レートから乖離した場合は、すぐに裁定取引によって反対売買が行われ、市場レートに戻るはず。こうした仕組みによって、板取引なしで、即時に大量の仮想通貨売買を可能にしています。

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流動性プロバイダーへの報酬

この取引が行われたとき、実際には取引手数料が支払われます。具体的には、例えばUniswapの手数料は0.3%ですが、1ETHをAAAに変えるときに、実際にリザーブに追加されるのは0.997ETHとして計算されます。そしてこの手数料は、ETHとAAAのリザーブを提供した流動性プロバイダーに報酬として配分されるのです。

 

この報酬がどれくらいかは、Uniswapのページで公開されています。流動性プールが最も大きいFEI-ETHのペアは25億ドル相当。そしてこのペアに流動性を供給する(ペアで仮想通貨を預ける)と、年率で3.76%の報酬が得られることが示されています。

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中には、ETH-USDTのように年率38%超のリターンもあれば、LUSD-ETHのように60%を超えるようなリターンとなるペアもあります。DEXを使って売買を行う人が多いほど手数料は増加し、流動性プールが小さいと手数料の比率も大きくなるので、取り分も増えるという形です。中には、年率400%を超えるような通貨ペアもあり、これはニーズに対して流動性プールが小さいということですね。

流動性提供のリスク

このようにDEXに流動性を供給し、提供したペアの取引が活発ならば、驚くほどのリターンが手に入ります。ただし、リスクがないわけではありません。代表的なリスクは、変動損失(インパーマネントロス、IL)と呼ばれるものです。

 

例えば、ETH-AAAのペアで、AAAを売ってETHを買いたいという人が殺到すると、プール内ではAAAが増加してETHが少なくなります。この時点で、流動性提供をやめてETHとAAAを引き出すと、預けた当初よりもAAAが多く、ETHが少なくなって返ってきます。

 

当初、1ETH-50AAAのレートで流動性を供給したのに、その後の価格変動で1ETH-25AAAになったらどうなるでしょう。定数50は変わらないので、プール内のそれぞれの量は、1.41ETHと35.36AAAになります。これを引き出すと、1ETH-25AAAのレートでETHに換算すると、2.8284ETEに相当します*2

 

もともと入れたのが1ETH+1ETH相当の50AAAですから、一見、ETH建ての額が増えていてうれしいように思います。しかし、もし流動性を供給せずにそのまま持っていたらどうなるでしょうか。1ETHはそのままに、50AAAは2ETHの価値になったはずです。つまり合わせて3ETH。

 

何もしなれけば3ETHだったところが、流動性を供給したために2.828ETHしか得られなかった、つまり5.7%ほど損失を被ったということになります。これがインパーマネントロスです。

 

インパーマネントロスは通貨ペアの価格変動具合によって変わります。変動によってどのくらいの機会損失が出るかというと、次のグラフのようになります。

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  • 1.25倍の価格変動 = 0.6%の損失

  • 1.50倍の価格変動 = 2.0%の損失
  • 1.75倍の価格変動 = 3.8%の損失
  • 2倍の価格変動 = 5.7%の損失
  • 3倍の価格変動 = 13.4%の損失
  • 4倍の価格変動 = 20.0%の損失
  • 5倍の価格変動 = 25.5%の損失

これは、通貨ペアのどちらが上がっても下がっても、同様に損失(機会損失)となることに注意が必要です。このインパーマネントロスと、流動性報酬のリターンを比較しながら、流動性スワップへの投資は行うことになります。現在のところ、インパーマネントロスよりも、流動性マイニングによる報酬のほうが大きいため、利益が得られているということになります。

DeFiであることのリスク

通常、貸株などでは預けた先の証券会社が倒産するリスクを考慮しますし、特殊な運用の場合、最大のリスクは預けた相手が持ち逃げしてしまったり、実際は運用せずに、新規の入金で配当を出してしまったりしている場合(ポンジ・スキーム)です。

 

しかし、DeFiであることの良さは、預けた仮想通貨は、Ethereum上にロックされており、DEXのコードを書いた人であっても取り出せないということです。プログラムにバグがない限り、預けたものはブロックチェーン上のプログラムが保管しており、倒産や詐欺でそれが失われることはありません。プログラムも公開されており、預けたものがどのように扱われているのかを誰でもチェックできます。

 

ただし、プログラムにバグがあった場合、そこを突かれてハッカーに攻撃され、流出されるリスクはあります。実際、2016年に起こったThe DAO事件は、プログラムのバグにより360万ETH、当時の価格で52億円相当額が盗まれるというものでした*3。規模もコミュニティもまだ小さかった当時に比べ、現在はチェック体制が整ってきているとは思いますが、それでも潜在的にこのリスクはあります*4

 

しかし、Uniswapは3年近く大きな問題なく稼働しており、信頼性があるといえます。仮想通貨関係では、この長期にわたりハッカーの攻撃に耐えてきたということが信頼性の1つの指標であり、またこの間ずっと、上記のような流動性報酬を提供してきたということも、信頼の1つになります。

仮想通貨の世界に眠る、年利数十パーセント 

年利数十%と聞くと、「詐欺か?」「ポンジ・スキームか?」などと思ってしまいますが、まだ成熟していないジャンルの投資には、こうしたものが眠っています。いってみれば、従来取引所が得ていた利益を、資金の供給者が得るための仕組みだと考えれば、20%程度のリターンが得られるのは、別におかしなことでも何でもないのです。

 

株式のようにプロが多数参入するマーケットでは、ものすごく儲かるようなゆがみはすぐに消化されてしまうのですが、仮想通貨のように新興で、かつプロが規制的に入りにくいところだと、こうした機会がまだまだ残っています。

 

仮想通貨というと、その値上がりが一般には話題になることが多いのですが、2017年のICO、2020年のDeFi、そして今年2021年はNFTが大ブレイク中。そして、これらの仕組みは、国内では公的に取引できるものがほとんどなく、結局のところ海外のサービスを使うことになります。

 

そして良くも悪くも、仮想通貨は国境という概念が薄く、多くの場合、普通の銀行振り込み同様に海外のサービスに資金を移動して利用できます。特にDeFiに関してはブロックチェーン上で動作するために、国という考え方自体がナンセンスだったりもします。仕組みが複雑で、かつだいたい英語。そして、トラブってもサポートセンターがないあたり、極めて上級者向けともいえますが、こうしたところに収益のタネは眠っているんだな、と思うこともしばしば。

 

さて、 流動性マイニングについての基本的な説明が済んだところで、次回は実際にこれを実行してみたお話です。

www.kuzyofire.com

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*1:5000/12=416.66、454.5-416.6=37.9。37.9AAAが買い手に送られる。1ETH=37.9AAA

*2:(1)プール内のETH量×プール内のAAA量 = 定数 (2)ETHのAAA建て価格 = プール内のAAA量 ÷ プール内のETH量。 その結果、(A)プール内のAAA量=sqrt(定数 × ETHのAAA建て価格)(B)プール内のETH量=sqrt(定数/ETHのAAA建て価格

*3:現在の価格だと8000億円相当ですね。。恐ろしい

*4:ちなみに、これはEthereumのブロックチェーンへの攻撃ではありません。Ethereum上で動くプログラム=スマートコントラクトのバグでした。