FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。投資歴20年以上。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

今後20年の世界経済観 AIとブロックチェーン(DAO)が作り変える

コロナ禍によって、リモートワークやDXの進展は「5年早まった」とよく聞きます。これが意味するのは、いずれ企業の業務プロセスは人手からデジタルに移行し、通勤や出張なども減ってオンラインでのやり取りが普通になっていく未来は定められていた――という世界観です。このままのペースなら、それが実現するのに5年はかかったが、コロナ禍によって、前倒しで導入に至ったということです。

この流れは不可逆か?

この「5年前倒し」を受けて、ハイテクIT株は一気に上昇したわけですが、その要因をもう少し細かくみると2つの要素があります。

  1. コロナ禍ロックダウンによって、一時的に増加した需要
  2. コロナ禍によって前倒しされた、恒久的な変化としての需要

(1)のほうは、ワクチンなどが開発されて生活が元に戻れば失われる需要です。日本でもロックダウン中は図書館が閉鎖され、子供向けの絵本などはAmazonやメルカリなどでいきなり価格が急騰しました。しかし、ロックダウン解除にともない再び価格は下落。まさに一時的に増加した需要だったことが分かります。

 

(2)は、もはや元には戻らないだろう……という需要です。仕事のみならずプライベートでも、Zoomを使ったミーティングは一般化しました。非接触による感染リスク低減だけでなく、移動時間がかからない、距離が関係なく打ち合わせできる、といったメリットを、人類は知ってしまいました。コロナが終息すれば、オンライン飲み会は姿を消すかもしれませんが、会議の一定数はオンラインが当たり前になる感触です。

 

またこれまで紙とハンコで処理されていた業務プロセスの多くが、コロナ禍で一気にデジタル化しました。乗り遅れていた企業も、これを放っておくべきではないと、随時デジタル化を進めている。政府もデジタル庁の設置など、これを後押ししており、この流れも不可逆です。非接触効果だけでなく、業務効率は当たり前に向上するため、元に戻すモチベーションは誰にもありません。

20年後の世界経済観を考える

直近の、コロナ禍で業績が伸びる企業といった分析や、コロナ終息後も競争力を維持する企業といった分析は、エコノミストやアナリストたちがいろいろと行っているはずです。ここでは、もっと想像力を膨らませて、コロナが加速させたデジタル化の行く末、20年後の世界経済がどうなっているかを想像してみたいと思います。

 

米中対立や自然エネルギーの活用状況、人口動態など、さまざまな要素はありますが、ここでは、最も人によって予想に幅があるだろう、テクノロジーについて。長期でキーとなるのは、AIとブロックチェーン、遺伝子改変にあると考えています。

 

まずAIの基本は、予測と認識です。すでにゲームや画像認識の領域では人を凌ぐ性能を達成しており、20年後ともなれば、AIに太刀打ちできる人間はほぼいなくなると考えていいでしょう。

AIにできること

複数のAIが競争しながら精度を上げていき、人間と同じように、ごく稀に天才的な力を持つAIが登場することが予想されます。そしてAIと人間の違いは、その力をコピーしてネットワークを通じて共有できることです。人間とような遺伝子経由とは違い、AIの力は一気に全体に広がります。

AIが雇用を奪うはオオカミ少年か? 書評『21 Lessons』

AIがそこまでの力を持つとどうなるでしょうか? 昔から高度に進化した、いわゆるシンギュラリティを迎えたAIは意識を持つ……なんてことが言われたりしますが、ぼくはそれには懐疑的です。いまは意識は知能の必要条件ではなく、進化の過程で生まれた不要な存在かもしれないなんて考えています。

 

そして、並行して生成と制御能力も高まるでしょう。自然文を生成するGPT-3に代表されるように、AIが新しい何かを生み出す力は飛躍的に高まっています。魂のようなものがなければ人に訴えかけるものは創造できないという考え方は、急速に古くなっていでしょう。

制御能力はロボットや自動車など、リアルなモノをAIが動かす上で重要です。現在のAIがはまだ、外界の状態によって細かな制御をすることが得意ではありません。自動車の組立ラインでは働けても、箱の中から卵と雛を壊さず掴み取るという操作は苦手です。ただし、こちらも根本的な課題があるわけではなく、時間の問題でしょう*1

AIが雇用を激変させる

このようにAIが進化すると、どんな影響があるでしょうか。まず知識労働者の多くがいらなくなります。現在のデスクワークでも、決まりきった仕事を順に処理していく仕事は急速にアルゴリズムに置き換えられています。残った知識労働者がやっている仕事のほとんども、認識して予測して生成したり制御するものです。

 

医者や弁護士のような専門職も、知識を元に問題を認識して、結果を予測し、必要な対応を取るという、いわゆる「記号操作」の仕事になります。外科医のような物理的な操作が必要な仕事も、AIが制御を身につければ、人間は太刀打ちできなくなります。

 

経営者はどうでしょうか? 自社や外部環境の情報を元に、目標を設定してリソースを配分し、進捗を管理するのが仕事です。これらはすでに最もAIが得意とするものですね。すでにボードメンバーにAIを入れている会社があるくらいで、今後どんどん経営者の役割はAIに置き換わっていきます。

 

ただし人間が不要になるかというとそうでもありません。経営者にしても医者にしても運転手にしても、能力がAIに劣ってもしばらくは存在が必要です。それは何か問題が起きたときの責任を取る必要があるからです。おそらくこんな世界になるでしょう。判断しなくてはいけない課題があったときに、まずAIが選択肢を提示します。その中で、最も優れた選択肢はこれです、という提示をするようになるでしょう。人間の役割は、その最も優れた選択肢を選ぶ仕事ということになります。

 

実質的に選択肢は1つしかないのですから、選んでいるといえないような気もしますが、最終的に人間がGOを出した形にすることで、もしそれが人命に影響したり、大損害につながった場合は、承認した人間が責任を取ることになるでしょう。こうした責任の所在としての人間の必要性は、しばらく続くと考えます。

 

もちろん、人間でなければならない仕事というものも残ります。ただし昨今のECの進歩などを見ていると、接客なども人間でなければダメなわけではなく、実は対人能力というのは人でなければ持ち得ないというわけではなさそうです。では何が残るかというと、2つ。1つは、それでも人間にサービスしてほしいという贅沢品として。もう1つは、ロボットやAIを使うよりも人間にやらせたほうが安く済むという仕事です。

ブロックチェーンが組織を破壊する

さて、経営者の仕事は究極的には責任を取るためにあるという未来を思考実験しました。ところがそれさえも不要になっていきます。

 

ブロックチェーンは今でこそ、仮想通貨のための技術くらいに思われていますが、その本領は自律分散型アプリケーション=DAppsにあります。これはどういうものかというと、ブロックチェーンをサーバ代わりに動くアプリケーションです。

 

実体となるサーバが物理的に存在しないので、止まることがありません。また、このアプリケーションのプログラムを、誰かが所有しているわけではないことも特徴です。管理者不在で動き続ける。これがDAppsです。

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Uberの、顧客とドライバーをマッチングさせる仕組みがDAppsで動いていることを想像してみてください。この世界では、顧客がDAppsに向けて依頼すると、ドライバーがそれを受けてサービスを提供します。代金も、DApps経由で仮想通貨で支払われます。DAppsがいったん顧客からお代を預かり、サービス完了後にドライバーに支払われる形になるでしょう。ドライバーの評価データベースだってDAppsの中にあります。

 

ここにはDAppsの開発者は存在しても、Uberにあたる存在はありません。開発者はDAppsを所有しているのではなく、DAppsの動作によって自動的に徴収される手数料の一部を、ガバナンストークンと呼ばれる仮想通貨の一種で受け取る形になるでしょう。このガバナンストークンは、株式のようなもので、持っていることでDAppsの方針決定に投票することができ、また配当のようなものをもらえるという形です。

 

このように、DAppsが進化した先には、会社組織というものが存在しない世界さえも想像できます。そこには、顧客と、働きたい個人と、開発を手伝いたい個人と、そして株主しか存在しません。社長などの経営陣や管理職の役割は、全面的にDAppsが担うわけです。このように、人による組織なしで運営される仕組みを、自律分散型組織=DAOといいます。

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ブロックチェーン革命[新版] 分散自律型社会の出現 (日経ビジネス人文庫)

夢物語のように聞こえるかもしれませんが、BitcoinはまさにDAOの1つです。Bitcoinという仕組みを所有する個人や組織は存在しておらず、にもかかわらず数多くの関係者のもとで動き続け、アップデートもされています。現在DeFiと呼ばれる仕組みの多くも、究極的にはDAOになっていくことでしょう。

AIとブロックチェーンの組み合わせの先に残るもの

単純デスクワークは現時点でもAIとアルゴリズムに代替されていっています。そして、専門職などの知的労働も、AIの進歩によって代替される未来が想像できます。いわゆる従業員が、人からAIに取って代わられるだけではありません。

 

組織の、社長や管理職もDAppsによるDAO(自律分散型組織)が普及すると、存在意義がなくなります。評価はアルゴリズムで行われ、方針決定は株主にあたるガバナンストークン保有者による投票によって行われます。会社組織に存在するのは、株主、外部パートナー、利用者/消費者だけになってしまうわけです。

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消費者は変わらず消費者ですが、ガバナンストークン保有者は株式会社でいう株主であり、要は投資家です。では、経済のプレーヤーは消費者と投資家だけなのでしょうか? いえ、もう一つ、重要なポジションがあります。起業家です。

 

現実のDAOでも、そのコードを書いている人は株主にあたるガバナンストークン(相当)を所有している人や、外部パートナーとして要は外注されている人が多いわけですが、もう一つ不可欠なのがそのプロジェクトを考案して、立ち上げて、拡大させる起業家です。

 

少なくとも、DAOはコードに書かれたこと以外は実行できないという硬直性を持っていて、自律的に新しい事業を始めたりはできません。やはり新しい事業を立ち上げる起業家は、重要であり続けるわけです。

 

というわけで、20年後の世界を考えたときに、技術が順調に進歩すれば、実務を行ったり、それを管理したりする人の多くは置き換えられてしまいます。一方で、そのサービスや商品を享受する消費者は残り続けますし、オーナーである株主(相当)も残ります。そして、何より重要な人間の役割として、新たなビジョンを生み出して、それを事業化する起業家の重要性がこれまで以上に増すでしょう。

 

そのとき、「働く」というのは「新しい事業を起こす」ことと同義になるのではないかと考えています。

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*1:まだマイナーですが強化学習という手法はこれらを解決しようと試みています