FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

日本には“小さな政府”を目指す政党がない リバタリアンの奪い合い

岸田総裁が首相になりましたが、彼は「新資本主義」を掲げています。これは小泉内閣以来、(庶民の)痛みを伴う構造改革によって経済成長路線を目指してきた政策の転換だと考えられます。方向性としては、弱者の所得底上げと金融増税。要するに、再分配政策です。

保守もリベラルも再分配ばかり

よく政治の教科書的な本には、保守とリベラルの特徴として次のように書かれています。

  • 保守:伝統重視、経済的自由(減税)
  • リベラル:革新重視、再分配重視(増税)

社会面に関するスタンスである、伝統重視か革新重視かはさておき、「政府は経済活動にできるだけ手を出さない」というのが保守で、「政府は金持ちから取って貧者に配るべきだ」というのがリベラルの、それぞれ経済的な方針だといわれています。

 

これは米国の保守政党である共和党と、リベラル政党である民主党で明快で、減税を進める共和党と、(税を取って)分配を進める民主党で対照的です。

 

ところが、日本の政治シーンにはこのような対立が見られません。自民党は保守と呼ばれてはいますが、打ち出す政策は経済的自由を重視する小泉〜安倍内閣路線もあれば、今回の岸田内閣のように再分配を重視する方向までさまざま。だから、経済政策においてはリベラル政党である立憲民主党との違いがあまり分からなくなっています。

自民党も実は左

税金を減らして小さな政府を目指す字面通りの経済方針を「右」、税金を取って再分配を進める大きな政府を目指すのを「左」と書くなら、自民党は内部に右から左まで幅広い要素を含んでいます。

 

一言に「保守」といっても、米国の左右対立のような根本的な政策の違いはなく、中程度の税金と中程度の社会保障を提供するというのが、日本のコンセンサスです。

 

日本では竹中平蔵氏が右の急先鋒のように捉えられますが、

経済政策における右を象徴すると思われている竹中氏でさえ、アメリカ基準ではせいぜい中道です。サンデル氏が米本国で戦っている経済右翼は、そもそも日本には存在しません。

日本に絶望している人のための政治入門 (文春新書)

というわけです。

 

これが、野党が経済政策で、自民党に対する決定的な対抗政策を打ち出せない理由になっています。

政治的態度の4象限 ノーランチャート

ここで面白いのは、日米の社会・経済政策に対する支持状況です。まずは、社会的側面、経済的側面から政治思想を分類したノーランチャートを見てみましょう。

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縦軸は、個人的自由を示しており、「伝統・秩序・保守」というのは例えば「夫婦別姓反対」の立場で、「個人的自由」というのはもっと人権重視の立場です。

 

横軸は、経済的自由を示しており、「社会主義」にいくほど社会保障を政府が行うべきだという、福祉国家、大きな政府を意味します。「経済的自由」のほうは、税金をできるだけ少なくして小さな政府を目指し、政府は経済活動に介入すべきではないという立場です。

 

米国でトランプ、ヒラリー・クリントンに投票した人をマッピングすると、特に経済的自由に対する考え方によって、民主党と共和党に二分されることが分かります。

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右下の象限はリバタリアンですが、米国でも第三極としてリバタリアン党があり、大統領選挙にも出馬。1〜2%ほどの票を獲得しています。第三極ではありますが、ほとんど支持する人がいないのが実は米国のリバタリアンの状況だということです。

 

ひるがえって、日本はどうかというと、実は4象限それぞれに広がって分布しています。「ポピュリスト」が17.7%、また米国にはほとんどいないリバタリアンが「27.2%」いることが分かります。

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日本人の価値観が4象限に散らばっている理由とは? 三浦瑠麗「分断と対立の時代の政治入門」|文藝春秋digital

リバタリアンの奪い合い

このチャートを見ると、日本人の価値観は、経済的自由の側面でも、社会的自由の側面でも、広く広がっていることが分かります。ところが、減税、小さな政府、小さな規制を志向するリバタリアン的な政策を打ち出す政党は日本にはありません。

 

保守、リベラル、ポピュリストの受け皿はあっても、リバタリアンが投票する先がないのです。

 

これはおそらく、リバタリアンが東京などの都市圏に集中していることに関係しているのでしょう。日本の国政は、人口比で議員を出す構造にはなっておらず、地域別です。そして、地方は社会的保守の側面が強いだけでなく、中央からの再分配がないと立ちゆかない地域がたくさんあります。自民党は地域有力者の代弁者でもあり、その点では都市部からお金を集めて地方に回すというのは避けられない政策です。地方部は高齢者も多く、その意味でも都市部の若者からお金を集めて、高齢者の年金に回すという政策もはずせないでしょう。

 

結局、人権問題などでリベラルな考え方を持ち、税金は少ないほうがいいと考えるリバタリアン的な人たち=都市部に住む若者の多くは、置いてけぼりになっているのではないでしょうか。

 

こうした状況を、山猫総研の三浦瑠麗氏は、「これからの選挙を左右する『リバタリアンの争奪戦』」と表現します。

米国では4%しか存在しないが、日本では27%も存在する「リバタリアン」をどちらが取るかの争いになってくるわけです。この人びとは、社会的にはリベラルで、経済成長を重視する人たちです。つまり、社会政策的には旧来の自民党になじまない考え方を持っているが、経済成長を重視しているために自民党に投票する動機も持っている人たちです。この中の相当数の人びとが、安全保障ではリアリズムを重視してきたために、自民党はその票を問題なく取り込めた。しかし、安全保障で与野党に差がなければ、必ずしもこの人たちは自民党に投票する必要がなくなります。

「これからの選挙を左右する『リバタリアンの争奪戦』」 | News - お知らせ - 山猫総合研究所 – 三浦瑠麗

果たして、リバタリアン的政党はこれから出てくるのかどうか。注目しています。

 

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