FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

投資信託のビジネスモデルはどうなっているのか?

いろんな要因があると思いますが、投資信託が活況です。2011年には公募株式投信全体の額は100兆円規模でしたが、この10年で3倍近くに増加し、直近10月の純資産総額は287兆円まで増加しました。では、この投資信託はどこで誰がどのくらい利益をあげているのでしょうか。ビジネスモデルを概観してみます。

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投資家が払うコスト

投信ビジネス全体において、利益はすべて投資家が払います。投資家が払ったものをどう分配するかというのが、このビジネスのキモです。では、投資家はどんなコストを払っているのか。大きく4つあります。

  1. 購入時手数料
  2. 信託財産留保額
  3. 信託報酬
  4. その他費用

それぞれは投信の目論見書に記載されています。下記は、大和アセットマネジメントの「iFreeレバレッジ S&P500」からの抜粋です。

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まず「購入時手数料」はいわゆる販売手数料です。税抜き2%とあるように、この投信を販売した会社(証券会社)の取り分です。100万円購入したら2万円+消費税を払うことになります。もっとも、最近はここが無料の「ノーロード」と呼ばれる投信が多くなってきました。

 

「信託財産留保額」は、解約時にファンドに残す金額です。例えばこれが0.3%なら、100万円の投信を売却すると、投資家に入金されるのは99万7000円。3000円は投信に残り、基準価格に反映されます。つまり、これは運用会社や販売会社の取り分ではなく、残った投資家に分配されるイメージです。ちなみに、ファンドが償還されたときは信託財産留保額はかかりません。最近はこちらもゼロという場合が多いですね。

 

そして「信託報酬」です。これは毎日基準価格を計算するときに引かれるもので、年率にして0.1%くらいから1%、3%くらいまで多々あります。これを関係する会社が分け合う構造です。こちらは後述します。

 

さらに「その他費用」というものがあります。これは、「監査報酬、有価証券売買時の売買委託手数料、先物取引・オプション取引等に要する費用、資産を外国で保管する場合の費用等」とされており、一般に隠れコストとも呼ばれます。目論見書の段階では、どのくらいコストがかかるのかは分からず、実際に運用して初めて、かかったコストが引かれるからです。こちらも後述します。

信託報酬を分け合う

さて毎日掛かる信託報酬ですが、こちらは関係する3つの会社で分け合います。iFreeレバレッジS&P500を例に見てみましょう。

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まず「委託会社」です。これは要は運用会社であり、ここでは大和アセットマネジメントがあたります。ここが0.9%の信託報酬のうち、0.435%と半分を取ります。運用会社の売り上げはここから成り立っています。

 

続いて「販売会社」。例えば投資家がSBI証券でこの投信を購入すれば、最初の購入時手数料に加えて、継続的に0.435%が入ってくる仕組みです。証券会社にとっては、残高が積み上がれば積み上がるだけ、この売り上げが増加します。

 

最後の「受託会社」は、実際の証券を預かる会社です。基本的に信託銀行になります。投資家は信託銀行に証券を預けている形なので、報告書などは信託銀行から届きますね。この管理コストとして、0.03%を受け取っているわけです。100万円あたりで300円と少額ですが、額が大きければこれは膨らみます。投信全体は287兆円まで拡大しており、この0.03%ならば862億円となり、決して小さくない額です。

証券会社の発想法

証券会社は、顧客が株式を売買する際に手数料を取りますが、以前はこれがメインの収益源でした。これをコミッションといい、このモデルをブローカレッジビジネスといいます。「顧客に回転売買を勧めた」と昔話題になったように、売り買いしてもらうほどに儲かったわけです。ところが、海外はもとより国内でもSBIが手数料無料化を推し進めており、ブローカレッジビジネスの行く末は厳しい状況です。

 

そのため、各社が目を向けているのが投信のように、「持っているだけで売り上げが立つ」モデルです。これはフィー型と呼ばれ、ストック型のビジネスモデルとなります。最近ではここを伸ばすことを主眼とする証券会社が増えてきました。

 

SBI証券でいうと、9月末時点の投信残高は4兆4396億円。その信託報酬から販売会社として受け取る取り分は、18億5800万円となっています。

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率にすると0.041%、先iFreeの0.435%と比較すると10分の1くらいになっていますが、これは低コスト投信の比率が高まっていることも影響しているでしょう。下記は人気の低コスト投信eMaxis Slim 米国株式(S&P500)ですが、販売会社の取り分は0.034%となっているからです。

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証券会社の事業モデル

このように、売買手数料を利益の源泉としていたモデルから、ストック型のモデルへ変遷途中なのが証券会社の現状です。そのために、各社は投信積み立てを積極的にアピールしています。ちなみに、各社の収益モデル別の比率は下記のようになっています。

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松井証券は売り上げの半分以上を、まだ売買手数料に頼っています。面白いのはカブコムで、金融収益が過半を占めています。この金融収益というのは、多くが信用取引にかかる金利や貸株料です。カブコムは一時、優待クロスでも人気の証券会社でしたが、利益の多くを信用取引に頼っているということです。この金利は、ポジションがある限り、その一定率が収入になるので、ストック型に近いともいえますね。

 

下記は、投信残高が2兆8860億円まで増加し、いまや月間700億円もの積立設定がされている楽天証券です。投資信託関連、つまり信託報酬からの販売会社取り分が急速に拡大しており、債券も入れると15.2%に達してきました。

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利益を還元しても投資家を取り込みたい証券会社:クレカ積み立て

このように投信はいったん売ればずっと利益をもたらしてくれますし、さらに積立設定してもらえばなお良しです。そのために、各社はさまざまな手段で投信を売ろうとしています。その中で、昨今トレンドとなっているのは次の2点です。

  • クレカ積み立て
  • 投信残高に応じたポイント還元

クレカ積み立ては、やはり楽天証券が有名です。楽天カードを使った積み立てで1%をポイント還元。これは大きいです。投信残高に対する信託報酬からの販売会社取り分がSBI同等の0.041%だとすると、還元した1%を回収するのに20年もかかる計算だからです。

 

楽天証券がこれを実行できるのは、やはり還元する楽天ポイントは再び楽天グループ内で使われるために、グループ全体で見た場合のマイナスは1%まで達しないということが1つ。そしてSPU効果によって、楽天証券および他楽天サービスの利用率が高まるという効果があるからでしょう。実質赤字でも、グループ全体として実を取る手法です。

 

ただこれで楽天に一人勝ちされてはたまりません。SBI証券も三井住友カードと組んでクレカ積み立てを開始しましたし、マネックス証券もこの冬に開る予定。グループシナジーがあまり見込めない中で、果たして楽天に対抗できる形にもっていけるかが注目です。唯一対抗できるとしたら、KDDIグループのauカブコム証券ですが、どうもあまり動きが良くないですね。

ポイント還元でも限界を攻める楽天証券とSBI証券

積み立て開始のインセンティブとなるのがクレカ積み立てなら、これを継続させるインセンティブが投信残高に対するポイント還元です。

 

楽天証券はハッピープログラムという形で、投信保有残高に対して毎月ポイントを還元しています。残高10万円あたり、毎月3〜10ポイント還元なので、年間にすると43〜120ポイント、率に直すと0.043%〜0.12%です。SBI証券のほうは0.01%〜0.1%を還元です。ちなみに、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)でも0.0374%を還元しています。

 

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の信託報酬からの販売会社取り分は0.034%なので、楽天もSBIも、端数を除けば実質的に取り分のほぼすべてか場合によっては持ち出しで還元していることになります。

 

つまり実質的に利益が出なくても、いまはとにかく投信を買ってもらうことを優先しているというわけです。

 

楽天は投信で利益が出なくても楽天経済圏に浸かってもらうことを優先している。SBIのほうはというと、グループの投信運営会社が投信を運用していて、これがSBIでのベストセラーになっています。「SBI・V・シリーズ」です。

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販売会社取り分をポイント還元しても、グループの運用会社には0.022%が入ります。設定から純資産残高は急増し、すでにシリーズ全体で6142億円まで増加しました。

これは実質的なキャンペーン

投資において、手数料は絶対的な悪だと言われてきました。確実にリターンを蝕むものであり、少しでも手数料が小さい商品を選ぶことが、長期的に成功する秘訣なわけです。ところが、株式売買手数料はどんどん無料に近づいています。

 

そして投信においては、先の買付時ポイント還元や残高に対するポイント還元などで、手数料はどんどんゼロに近づいてきています。販売会社である証券会社の視点でいえば、投信を売ってもほぼ利益ゼロという状況になってきています。

 

投資家の観点で見れば、これは実質的にはマイナス手数料に近く、買わなきゃ損という状況になってきていることが分かります。クレカ投信積み立てが人気なのも、よく分かります。ちなみにぼくは、丸井グループのtsumiki証券、楽天証券、SBI証券のそれぞれで5万円ずつのクレカ積立を実行中です。

 

www.kuzyofire.com

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