インフレはどうなるかまだ見えず、FRBは着々と利上げを進め、グロース株は崩壊し始めています。金融相場から業績相場に移行するかと思いきや、思わぬ強いインフレに足をすくわれたという、たいへん難しい市場環境になってきましたね。
さて、こんな先行き不透明な中では、どんなシナリオにも対応したポートフォリオが重要です。具体的にいえば、下記の記事でもまとめたように、4種類です。
- 景気拡大:先進国株式
- 停滞:米国債とハイイールド債
- インフレ高止まり:先進国REIT
- スタグフレーション:コモディティやゴールド
先進国株式はコロナショック後のメインアセットでしたし、コモディティやゴールドはすでに保有中。国債とジャンク債は今は持っていないもいのの、以前は保有していてそこそこ調べました。
となると、抜けているのはREITです。米REIT ETFの有名所を比較してみました。
メジャーREIT ETF IYR、RWR、USRT、VNQ
まずはドル建てで買える米REIT ETFから。IYR、RWR、USRT、VNQについて概要をまとめます。
IYR
IYRは、ブラックロックが運営するiシェアーズブランドのETFです。ほぼ100%米国のREITに投資しており、Dow Jones U.S. Real Estate Indexをベンチマークとしています。設定日は2000年6月で20年以上の実績があります。
経費率は0.41%と高め。直近分配金は1.69%です。楽天証券など国内ネット証券で購入できます。
資産構成はこんな感じで、住宅だけでなく店舗、病院、オフィス、専門(データセンターとかロジスティスクとか)など幅広く分散されています。
RWR
RWRはというとステート・ストリートが運営するSPDRブランドのETFです。こちらもほぼ100%米国のREITに投資し、ベンチマークはDow Jones U.S. Select REIT Indexとなっています。設定日は2001年4月とこちらも20年以上の実績があります。
経費率は0.25%。直近分配金は3.03%となっています。こちらも楽天証券など国内ネット証券で購入できます。
資産構成はこんな感じ。幅広く分散されていますが、ベンチマークが「Select REIT Index」というところが違い、少し異なっています。
USRT
USRTはブラックロックが運営するiシェアーズブランドのETFです。ほぼ100%米国のREITに投資しており、ではIYRと何が違うかというとFTSE Nareit / Equity REITs - INVをベンチマークとしています。設定日は2007年5月で15年ほどの実績となります。
経費率は0.08%とたいへん安いことが特徴。直近分配金は2.10%です。残念ながら楽天証券では取り扱いがないのですが、USRTに投資するファンドが1659として東証に上場しています(経費率は0.22%以内)。
資産構成はこんな感じ。ほぼほかのREIT ETFと変わらないですね。
VNQ
VNQはバンガードが運営するETFです。ほぼ100%米国のREITに投資しており、ベンチマークはMSCI US Investable Market Real Estate 25/50 Index。設定日は2004年9月で18年くらいの実績です。
経費率は大変低い0.12%。直近分配金は2.96%です。こちらも楽天証券などネット証券で取り扱いがありません。
資産構成はこんな感じで、これもほかのREIT ETFと大差ありません。
IYR、RWR、USRT、VNQを比較する
ではこの4つのETFを比較してみましょう。VNQは国内証券会社から投資できないのですが、バンガードのETFなので参考ということで。
まず経費率は大きな差が付きました。本当はVNQがほしいところですが、売っていないものは仕方ありません。AUM(運用残高)もVNQが圧倒的という状態です。とはいえ、USRTでも2500億円程度あるので、まぁ償還リスクはないと考えていいでしょう。
ベータはどれも似通っていて、分配金についてはキャピタルゲインの差にも関係するので、次の株価変動と併せて。
IYR、RWR、USRTのデータが揃う2008年からの実績で見ると、わずかながらUSRTが好成績。とはいえ、その差はわずかです。なお、上記の7.09〜7.43%というCAGRは配当再投資時のもの。これが再投資を行わないと、3.24%〜3.39%に下がります。
ちなみに配当は? というと、このように似通っている上に、年によってどのETFが多いか変わります。特段の有利不利はないという感じでしょうか。
投資戦略
というわけで、海外証券会社に口座があるならVNQがいいのですが、国内から投資するなら、ドルでRWRを買い付けるか、円で実質USRTの1659を買うかという感じです。
1659を買う場合、裏側の資産はドル建てですからドル転して購入するのと同じ。ドル保有の為替リスクを負うことになります。ただし、国内上場しているメリットは売買手数料が安いこと。楽天証券なら、買付手数料ゼロです。
1659のもう一つのメリットは税金です。海外ETFの配当(分配金)は、現地で10%課税された後、残りに対してさらに国内で20.315%課税される、二重課税の状態にあります。現地課税分は確定申告の外国税額控除によって取り戻せますが、手間がかかるのと他の所得の状態によっては全額は取り返せません。
東証上場の外国ETFについては、2020年の税制改正で二重課税が自動解消される制度が導入されました。一応、東証のWebでは1659が「投資信託等の二重課税調整制度の対象となる可能性の高いETF・REIT」として掲載されています。というか、「可能性が高い」ってなんだという感じですが。