FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

楽天カード、ポイント付与計算の改悪で還元率はどれだけ下がる?

楽天カードが11月請求分からまたしても改悪を行います。前回の改悪は、1%のポイント付与計算において消費税込から消費税抜きに変更するというものでした。今回は「合算額の1%」から「都度支払い額の1%」へ変更するというものです。

 

ネットでは「実質還元率が1%を切った」と話題ですが、ではいったい具体的には還元率はどう変わるのでしょうか?

合算額の1%から、都度支払い額の1%に

今回の変更点を図示したものが楽天カードのお知らせに掲載されています。これまでは月間の支払い額を合算し、それに対して100円につき1ポイント、つまり1%が還元されていました。ところが11月請求分からは、1回の支払いごとに「100円につき1ポイント」を還元するよう、計算式を変更します。

100円未満は切り捨てになってしまうため、支払い都度の計算だと切り捨て額が多くなり、それによって還元額が減るということになります。

 

ちなみに、合算でポイントを計算するカードと支払い都度で計算するカードはそれぞれあって、代表的な高還元クレカだと次のようになっています。

  • 三井住友カード 合算
  • リクルートカード 合算
  • PayPayカード 都度
  • dカード 都度
  • au PAYカード 都度
  • 楽天カード 合算→都度へ変更

還元率はどれだけ落ちるのか?

では具体的に還元率はどれだけ落ちるのでしょうか。ステップbyステップで考えていきましょう。今回の着目点は、端数の切り捨てです。合算計算から都度計算に変わることで、端数の切り捨てが増加し、それが還元率の悪化につながります。

 

まず月間の決済が1回の場合はどうでしょうか。この場合、合算しても都度でも同じなので還元率は変わりません。端数の切り捨ては1回で同じだからです。

 

続いて月間決済数が2回の場合はというと次のようになります。

  • 合算:端数切り捨て1回
  • 都度:端数切り捨て2回

さらに月間決済回数が3回になると、

  • 合算:端数切り捨て1回
  • 都度:端数切り捨て3回

と、都度の端数切り捨て回数が増加します。このように、合算→都度への改悪は、決済回数が多いほど影響が大きくなることがわかります。決済回数だけ端数の切り捨てが起きるわけです。そのため還元率への影響は、決済回数が何回あるかで変わることが分かります。

 

次に具体的な切り捨て額を計算してみましょう。100円につき1ポイントなので、切り捨ては最低0で最大99円分となります。100円なら切り捨てはありませんが、199円なら99円分が切り捨てになるということです。

具体的な切り捨て量:ベンフォードの法則

では具体的な切り捨て量を考えてみます。下2桁は00〜99までの値を取りますから、完全にランダムに現れるなら、決済一回あたりの切り捨ての平均値は49.5円になるはずです。ところが実は自然界の数字の現れ方はランダムではありません。

 

自然界に現れる数字の1桁目については、ベンフォードの法則というものがあって、数字の登場頻度は同じではありません。下記のように1が登場する頻度が約30%と最も高く、数字が大きくなるにつれて頻度が下がっていきます。

最初のd桁が特定の数xになる確率は、次の公式で計算できます:P(x) = log10((x+1)/x)

 

これによると、2桁目では下記のようにまだわずかに小さい数字の頻度が高いのですが、

  • 0:11.97%
  • 1:11.39%
  • 2:10.88%
  • 3:10.43%

3桁目になるとほぼどの数字も等頻度≒10%で登場することになります。

 

つまり、カード決済においてxyz円のyとzについては、ほぼランダムに登場するかわずかに小さい数字が出る頻度が高いと考えられます。そのため、現実的にはほぼ決済1回あたり50円をわずかに下回る平均値だと考えてよいでしょう。

 

となると、具体的な切り捨て量は平均して下記のようになります。

  • 決済1回:50円
  • 決済2回:100円
  • 決済3回:150円
  • 決済4回:200円

合算と決済1回の場合は切り捨て量が同じですから、都度決済への変更によって決済3回で100円分、決済5回で200円分が切り捨てられることになります。ポイントにすると1ポイント、2ポイントです。式にすると:損失=(n-1)*0.5pt です。

 

もう少し現実的な例だと、月間10回の決済で4.5ポイント、月間20回の決済で9ポイント、月間40回の決済で18ポイント、合算計算に比べて還元ポイントが減少することになります。

還元率の減少率を計算する

今回の改悪では、決済回数に応じてもらえるポイントが減少することまで分かりました。では、還元率としてはどのくらいの改悪になるのでしょうか。そのためには、決済額が必要になります。

 

月間支払い額が10万円の場合、1%ポイントがつくと1000ポイントです。ここで決済回数が20回なら期待値的に9ポイント減少するわけで991ポイントになります。還元率は0.09%ポイント減少して、0.991%となるわけです。

 

ただ月間支払額は実際にはいくらなのでしょうか? 日本クレジット協会が公表する統計によると、2020年のクレジットカードの決済単価は4984円でした。この数字に基づいて、決済回数を横軸、還元ポイントを縦軸に取ったのが下記のグラフです。さらにそのとき還元率がどうなるかも計算しました。

意外でしょうか? 切り捨て量は決済回数が多いほど増加するのですが、決済額全体も増加するため、実は還元率は少しずつ上昇します。還元に占める切り捨てされる量が相対的に小さいからです。そのため、決済回数1回=切り捨てが合算のときと同じ のときが、最も還元率は小さくなりました。

 

では還元率を、合算時と都度時で比較してみます。横軸は決済回数です。なるほど、この通り、合算時の還元率は金額が大きくなる≒決済回数が増加するとほぼ1%に収束していくのに対し、都度計算の場合は0.99%に収束していきます。数学的な証明はしていませんが、だいたいそんな感じ。

というわけで、結論です。今回楽天カードはポイント計算を「合算額の1%」から「都度支払い額の1%」へ変更しました。これによる還元率の低下は0.01%ポイント。これまでほぼ1%だったものが0.99%になるということです。別の言い方をすれば、得られるポイントが1%減少するということになります。

 

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