FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

投資の勉強はどこまで必要なのか?

先日、あるインフルエンサーが「NISA口座の落とし穴」というテーマで語っていました。いわく「NISAは損失繰越ができないから、利益を得たときしかメリットがない。なのでNISAで投資するなら、しっかり投資の勉強をすることが重要」だといいます。

 

ファクトとしてはその通りで、間違いありません。でもぼくが引っかかったのは「しっかり投資の勉強」のところでした。

投資の勉強ってなんだろう?

投資をするなら、投資の勉強をしたほうがいい。これはある意味その通りで、ほとんどの人がそうだというでしょう。でも、ぼくは変に投資の勉強をするよりも、しないほうがいいこともあるんじゃないか?とも思うのです。

 

そもそも、投資の勉強とは何でしょうか。下記のようなことが考えられます。

  1. 「リスクとリターンの関係」などアカデミックな投資理論
  2. 「上がる株を見つける方法」などファンダ/テクニカル分析手法
  3. 経済指標や企業動向など経済一般知識
  4. 株式取引の仕組みや税金の仕組みなど金融の仕組み
  5. これからは投資をしなくてはダメだ!というマインドセット

これらを十把一絡げに「投資の勉強」と呼んでしまってはいけません。それぞれを学ぶことの意味と効果が、かなり違うからです。

「リスクとリターンの関係」などアカデミックな投資理論

(1)のアカデミックな投資理論は王道の投資の勉強といえるでしょう。数式が出てくるような難しいものから、そのエッセンスを抽出したものまで、教材もさまざまです。学ぶには奥が深すぎるほど深いのですが、実は投資初心者に向けて結論をまとめると、意外にシンプルで実践的なものになります。

  • 全世界株式インデックスファンドを購入する
  • できるだけコストが安いものを選択する
  • いつ買うかのタイミングを図る必要はない。早期に購入する
  • 売却は少なくとも10年後、できれば20年後超に
  • そのため短期で必要になるお金は投資しない

今となっては当たり前だと思う人のほうが多そうですが、20年前はこれが投資の王道だと思う人はほとんどいませんでした。いい時代になったものです。

「上がる株を見つける方法」などファンダ/テクニカル分析手法

(2)のファンダメンタルズ/テクニカル分析は、もう一つの投資の王道です。遥か以前から投資といえば、こうした分析手法を駆使して、安く買って高く売るものだとされてきました。

 

ただしこの投資の勉強はそうそう簡単なものではありません。例えばファンダメンタルズ系の著名投資家井村氏は、その勉強法として下記を挙げています。

これであなたも「億り人」?カリスマ投資家が明かす "億"超えルーティーン【テスタ】 - YouTube

一方のテクニカル系の著名投資家テスタ氏は、書籍での勉強と実践を勧めています。

www.youtube.com

テクニカル系のトレードは「心理戦」だと話し、お勧めの書籍は『投資家心理を読み切る板読みデイトレード術』です。

このファンダ/テクニカル系の勉強の特徴は、ファンダメンタルズ系が正統派に近く書籍も多く出ており、またアナリストのレポートなどの情報も多い一方、テクニカル系は手法がトレーダーによってけっこう異なり定番的な書籍が少ないことでしょうか。

 

また利益の源泉は、次のいずれかになるため

  • 他の人が過小評価していて安くなっているものを見つけて、高くなったら売る
  • これからみんなが購入して高くなるものを見つけて、安いうちに買う

基本的にゼロサムゲームの考え方になります。なぜ収益が得られるかというと、安く手放した人や高く買ってくれた人がいるからということになります。この点、企業成長や経済成長に伴って、保有者全員が収益を得られるというインデックス系とはちょっと視点が違います。

経済指標や企業動向など経済一般知識

米国の雇用統計やCPIをチェックしたり、それに伴ってFOMCの政策金利がどうなるかを予想したり、さらにそこから債券や株価、為替がどう変化するかを学ぶというのが、この視点での投資の勉強でしょう。

 

「投資をするようになると経済に関心が持てるようになる」と言われるのは、こういうことをイメージしているのだと思います。

 

実際、経済統計から中央銀行の動向を予測し、そこから債券や為替、株価がどう変化するかを予想したり、あーでもないこーでもないと話すのは楽しいものです。データはいくらでもありますし、予測のロジックもいろいろです。さらにそれが何にどのように波及するのかも、ピュアな知的好奇心を満たしてくれる内容です。下記のような話です。

www.kuzyofire.com

 

これは面白いことは面白いのですが、果たして投資に役に立つのかというと、実は甚だ疑問です。「重要な経済統計が発表されるタイミングは、為替が荒れる」というような知識ならたしかに役に立つのですが、じゃあこうした経済を学ぶことで利益が出せるのかというと、全然そんなことはないような。

 

また「スーパーで●●が売れているのを見て、そのメーカーに投資する」みたいなお気持ち投資も、楽しくはあるものの、それで利益が出せるのかは怪しいとぼくは思っています。いや楽しいので、趣味としての投資としてはいいのですが、これが利益を出すための投資手法かというと、どうなのかな? とも思います。

株式取引の仕組みや税金の仕組みなど金融の仕組み

4つ目は、株式自体の仕組みなどです。例えば、日本だと株式は基本的に東京証券取引所で取引されるとか、その時、取引スタート時点と終了時点は「板寄せ」という仕組みでマッチングされるとか、通常取引時間(ザラバ)は「板」と呼ばれる仕組みで、指値された価格がならび、成行注文の人がそれをテイクして約定していくとか……。

 

または昨日、日経225の入れ替えがあって、メルカリ、レーザーテック、ニトリホールディングスを採用して日本板硝子、三井E&S、松井証券が除外されるなんてのも取引の仕組みの一つですね。

 

税金でいえば、源泉対応の特定口座だと売買で利益が出ると自動的に20.315%の税金が徴収されるとか、米国株だと配当に現地で10%課税されたあと、さらに日本で20.315%課税されるとか。

 

正直、こうした仕組みは知っていればある程度プラスのリターンを上げられるものだと思います。ただし、これでガンガン利益が出せるかというと、話はまた別。そして知らなくても、そこまでのネガティブな要素はないともいえます。

 

サラリーマンに例えると、ファンダ/テクニカル分析系が給料を上げるためのスキルを身につける話だとしたら、この株式投資の仕組みの知識は「ふるさと納税」とか「医療費控除」とか「住宅ローン控除」の知識のようなものでしょうか。知っているほうがいいし、それで確実なプラスは出せるけど、知らないと致命的かというとそうでもないイメージです。

これからは投資をしなくてはダメだ!というマインドセット

実は重要なのに、案外見過ごされがちなのがこのマインドセットかもしれません。

 

投資の勉強をしようと思ったからには、そのきっかけがあったはずです。それは「年金も退職金もあてにならない昨今、老後資金は投資で作るしかない」という恐怖かもしれません。または「投資で一攫千金すれば、大金持ちになってウハウハだ」という期待かもしれません。

 

いずれにしても投資を習慣付けて、継続的に投資し続けるのは難しいことです。利益が乗れば「利確!」と売ってしまいたくなるし、含み損が大きくなれば「損切り!」と売却したくなります。または含み損のまま「塩漬け!」と意識から外してしまうこともあります。

 

しかし(1)の投資理論が教えるところは、次の2つです。

  1. 頻繁なトレードは手数料によって利益が削られる
  2. 資金をどれだけの期間、リスクにさらしておけるかでリターンは決まる

つまり、いったんこの投資先だと決めたら、持ち続けることが大きなリターンにつながります*1

 

IFAや米国のRIAなどが行う投資アドバイスは、市場暴落の際に売却したくなる顧客を説得して投資を続けさせることに価値があるとされています。銘柄選定とかアセットアロケーションの提案だけでなく、このアドバイスだけで年平均リターン1%以上の価値があるというのです。

三菱UFJ国際投信 アドバイスの付加価値

投資の勉強は何からすべきなのか?

「投資の勉強」としてイメージされる5つを簡単に説明してみました。では、どの勉強が重要なのか、個人的な意見を述べると、必須なのは実は「投資のマインドセット」なのではないかと思っています。それが投資の継続につながるからです。

 

いまやITバブルはもちろん、リーマンショックを経験した投資家もわずかになりました。多くの国内投資家は、アベノミクス以降の日本株も米国株も上り調子の市場しか知りません。ここで、3年、5年、10年におよぶ停滞相場が来たらどうなるか。頭では絶好の買い場だと思っていても、資産が半分になり、さらに減っていく恐怖に耐えられる人は意外と少ないものです。このときにどんな知識があっても投資は継続できません。いや、知識に裏付けされた自信と信念こそが、投資にとって最も重要なのではないかと思うのです。

 

なので、理屈っぽくない人ならば「●●さんがこれからは投資だと言っていたから信じる」でもいいと思います。そこに5年10年株価が下がり続けても持ち続けられるだけの信頼があるのならば。

 

ではファンダ/テクニカル系の投資の勉強はどうでしょうか? 実は中途半端なこの勉強は、害のほうが多いのではないかと思っています。このジャンルは弱肉強食です。参加者の半分が勝って、半分が負けるというものでさえありません。試行回数が増えるほど、僅かな勝者が大勝ちし、多くは損失を被るというものです。

 

もしファンダ/テクニカル系においてスキルが上位10%に食い込める(偏差値でいえば63以上)という自信があるなら、これを勉強するのもありかもしれません。しかしそれだけのセンスを持ち、勉強に時間をかけられないなら、別の投資の勉強のほうをぼくは勧めます。

 

それはなにかというと、アカデミックな投資理論のほうです。冒頭に書いたように、投資理論に従うと投資手法は極めてシンプルになります。そこには難しいノウハウや知識も必要なく、理論上導かれる商品を淡々と買うだけになります。

 

にもかかわらずアカデミックな投資理論を勉強したほうがいいと思うのは、理論を学ぶことが投資を継続するマインドセットの強化につながるからです。理屈っぽい人ほど、理論を学んで、それを信じて投資を継続してみてはどうでしょうか。

 

*1:テクニカル系の投資手法の場合、超短期・短期・中期の投資法もあるので、長期投資が優位というわけでもありませんが、ぼくはテクニカル系をよく知らないので。