FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

住宅ローン組んで投資するのと、信用取引の本質的な違い


投資家界隈でよく言われるのが、「家を買うなら住宅ローンにして手元の現金は株式で運用するべし」という話です。住宅ローン金利が1%で、株式運用の期待利回りが6%なら差分の5%分得をするという、まぁそういうロジックです。

 

ただこれを言うなら、多くの人が否定する株式の借り入れ運用やレバレッジ運用も同じようなものではないでしょうか。いずれもお金を借りて、株式に投資するのですから。この2つは実のところ何が違うのか考えてみます。

家を買うなら住宅ローン

ローン金利よりも運用利回りのほうが高ければ、家やクルマなどを買うときにローンで買って現金を温存し、現金を運用すれば、差額を利益として得ることができます。

 

これは株式投資家の間では、半ば常識のようにいわれている話です。バリエーションとして、「ローンは繰り上げ返済してはいけない」というのもあります。

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この話は一見合理的に聞こえます。ただしこれを合理的だと考えるなら、同じように信用取引やレバレッジをかけた株式取引も合理的だという話になるでしょう。なぜでしょうか。

等価な4つのポジション

下記の4つのポジションを見てみましょう。

(1)は全財産(仮に1億円とします)をすべて株で運用している状態です。

(2)はこれをすべて売却して現金に替え、1億円でマンションを購入した状態です。

 

この2つは株を持っているかマンションを持っているかの違いだけで財産額は同じです。続いて(3)です。

 

(3)は株式はそのままに、1億円を借り入れてマンションを購入したポジションです。担保はマンションです。

 

最後に(4)はというと、株式を売却してマンションに替えたあと、1億円の借り入れを行って株式を購入したものです。担保は株式です。

 

(1)〜(4)まで純資産額は1億円で変わらず。収益構造はというと下記のようになります。

  1. 株式運用益
  2. なし
  3. 株式運用益−借入金利
  4. 株式運用益−借入金利

このように見ると、(3)と(4)が構造的には同じだということが分かります。いずれも1億円の株を運用しつつ、1億円のマンションに住んでいるというわけです。

住宅ローンと株式レバレッジの違い

借りた1億円で住宅を買うのは合理的だというのに、借りた1億円で株式を買うのは「危険だ」「やってはいけない」と言う人が多いのではないかと想像します。これはなぜでしょうか?

 

まず両方とも、本質的には借り入れを行ってそれを元手に投資をしているわけで、その点では住宅ローンを推奨するのに株のレバ取引を否定するのは論理的にはおかしいということになります。

 

では違いはなんでしょうか? 考えられるのは「担保」「金利」「マージンコール」「返済方式」といった点です。借金自体ではなく、この4つのどこかに「株のレバ取引は危険!」で「不動産ローンはOK」というポイントがありそうです。

担保

まずは担保。株式を担保に入れた場合に可能な借金額は、信用取引で8割(代用有価証券)、証券担保ローンで5〜6割といったところです。

 

一方の不動産は、8〜10割くらいが多いでしょうか。8割なら頭金2割を求められるということだし、10割はフルローンです。

 

こう見ると、不動産のほうが効率がいいことが分かります。不動産ローンが有利な点、その1です。

金利

続いて金利です。金利は借り手によって千差万別ですが、不動産特に住宅ローンの場合、変動型なら0.2〜0.375%と相当低くなっています。また住宅ではなく投資用不動産の場合、1〜3%台くらいが多いでしょうか。

 

信用取引はネット証券で2.8%、野村證券で0.5%です。証券担保ローンの場合、野村で1.5%、大和で2.8%という感じです。

 

野村の金利が極端に安い感じですが、それを除けばやはり不動産のほうが金利は抑えられています。特に住宅ローン金利の低さは特筆すべきものがありますね。

マージンコール

マージンコールとは、担保価値が下落した場合に追加の保証金を求められることを指します。日本語でいうと追証です。

 

株式の場合、信用取引でも証券担保ローンでもマージンコールが発生します。つまり、担保の価値が下落したら、返済する必要が出てくるのです。一方不動産の場合、住宅でも投資用不動産でもマージンコールは発生しません。どんなに市場価格が下がっても、追加の担保を設定したり返済したりする必要はないのが不動産です。

 

通常、信用取引で失敗する最大の理由はマージンコールです。これがないだけでいかに不動産担保のローンが有利かが分かります。

返済方式

最後に返済方式です。不動産の返済方式は均等返済が基本です。つまり予め定めた融資期間、毎月少しずつ返済を行います。これは毎月、常に一定の現金が必要になることを意味します。

 

一方、信用取引でも証券担保ローンでも通常は自由返済方式で、借り手が返済額やタイミングを自由に決めることができます。極端な話、利息だけを払い続けて元本は借り続けるということも可能です。

 

この返済方式は、唯一株式担保のローンが有利な点でしょう。

借金がいけないのではなく、担保と金利とマージンコールが問題

というわけで、住宅ローンを組んで株式投資するのも、株式を担保にお金を借りて投資するのも、基本的には同じ構造だということを見てきました。つまり「借金して投資」は必ずしもNGではないということです。

 

一方で、ではなぜ住宅ローンを組んで投資は許容されるかというと、次の3つのメリットがあるからです。

  1. 担保価値が高く評価され資金効率が高い
  2. 金利が低い場合が多く、運用利回り−借入金利の差が大きくなる
  3. マージンコールがなく市況悪化時でも借り続けられる

逆に言えば、担保価値が低い不動産はあまり利点にはなりませんし、高金利ローンを組むなら信用取引とあまり変わらないともいえます。いずれにしても、これらは条件の問題であって、「借金して投資」がNGなのではないという点が重要です。

 

ちなみに、不動産は均等返済を行うので、返済が進むと不動産評価額に対して借入額がどんどん減っていきます。つまり実質的に担保価値評価が下がっているのと同じです。(1)のメリットが次第に薄れていくということになります*1

 

なお、不動産には住宅ローン減税などの税優遇がある点も有利なところです。そしてマージンコールがないところがやはり最大の利点で、これが不動産における借入の最大の利点だといえるのではないでしょうか。

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*1:別の不動産ローンを組むときに共同担保として使うことで、担保価値を活かすという方法もあります。