FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

「そろそろ暴落来い」という投資初心者に向けた言葉に思うこと


「最近投資始めた人が調子に乗っているので、そろそろ暴落来てほしい」という発言がTwitterで話題になっていました。いやー、なんで初心者に向けてこういう言い方するかな……というのはありますが、今回のブログはちょっと別の話。

 

いま株価は絶好調で激上がり中ですが、これは最近投資を始めた人にとっては不幸なことかもしれない? という話です。

資産運用は平均リターンが重要

株式投資のリターンは毎年違うものですが、長期間平均すると6%程度になることが、過去のデータから分かっています。表面だけ見ると平均成長率はもっと高くて、1972年から現在までの平均で10.61%に達しています(インフレを調整すると6.42%です)。

 

最初に100万円を投資したら10年でどれだけ増えたか? と考えた場合、年ごとのリターンは高かったり低かったり、マイナスだったりしますが、計算は毎年10.61%ずつ増えたと行えばOKです。つまり274万円に増えたことになります。

 

この計算は最初に暴落が来ても、最後に暴落が来ても変わりません。複利運用は毎年のリターンを掛けていくので、順番が入れ替わっても結果は同じになるからです。つまり平均は順番に関係しない。そして平均が6%程度ということは、暴落がいつ来ようが平均に従って資産は増加することを意味します。

 

11年間の年間リターンのサンプルを用意しました。2013年からの10年は実績。そして2024年に46%の暴落が来たことを想定したものです。こちらの年平均リターンは6.5%になります。こちらが「正史」。また、リターンの並び順を逆にした「逆順」も用意しました。

この2つは並び順が違うだけなので、運用結果は変わりません。100万円を運用したときの残高推移をチャートにすると、途中の差は大きいものの、最後は同じになることが分かります。

ただし積み立て投資だと順番が重要

ところが、これが積立投資だと話が変わります。初期は投資金額が小さく、後期は金額が大きい。その年の増減額は投資額が大きいほど大きな影響を受けるので、初期に好景気が来るのか後期に好景気が来るのかで、結果が全く変わってしまいます。

 

毎年10万円ずつ積み立てた場合のチャートを見てみましょう。当初は運用額が小さいので、正史も逆順も大して差が出ません。ところが最後の最後、正史は2024年の暴落を受けて資産が減少。逆順に比べて2倍近い差が出てしまいました。

端的にいえば、積み立て=資産形成を行うタイミングにあっては、もし暴落が来るならその初期のほうがダメージが小さく、もし後半に暴落が来たら悲惨なことになるわけです。

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そろそろ暴落が来るかも?理論

では暴落は来るのか来ないのか。来るならいつなのか。実はこれ、地震と同じように考えるとちょっと面白い。というのは、いつ来るかは本当に分からないけれど、あとになればなるほど大きなものになるという考え方です。歪みが溜まっても、さっさと開放されてしまうのなら大した揺れにはなりません。大きな歪みが蓄積されると、それが元に戻るときは凄まじいことになるわけです。

 

例えば、先に米国の株式リターンは「1972年から現在までの平均で10.61%に達しています(インフレを調整すると6.42%です)」と書きました。ではリーマンショック後の2009年から2024年までの間の平均リターンはどうなっているかというと、なんと14.05%に達するのです。インフレ調整後でも11.2%です。

 

もしこれが超長期平均と同じ10.6%まで落ちるには、2024年のリターンは▲27%である必要があります。つまり、もし米国株のポテンシャルは10.6%のリターンであって、現在の株価が割高なのだとしたら、それを補正するには27%も今年の株価が下落する必要があるという計算です。

 

ただそれが2024年に起こるとは限らないし、複数年のマイナスで実現するのかもしれないし、そもそも米国経済は次の段階に入っていて、「過去のリターンと同じではなくもはや14%が正常だ」となるのかもしれません。さらに割高に振れていたあとは、通常正常に戻るのではなく、ポテンシャルを割り込んで割安まで落ち込みます。ならば27%下落ではなく、30%、40%の下落が起きるのかもしれません。

 

とまぁ、これが「そろそろ暴落が来るかも」理論です。

市場はランダムウォークか?

インデックス投資家の理論的な背景である効率的市場仮説は、株価がランダムウォークすることを前提としています。だからこそ、テクニカル分析もファンダメンタルズ分析も大した効果を上げることはないので、インデックスを買うのが正解だという話になるのです。

 

もし株価がランダムウォークしているなら、過去のリターンがどうであろうと、それによって将来のリターンが影響を受けることはありません。専門的にいえば「株価は自己相関していない」わけです。ところが、先の「直近のリターンが上振れしているから、そろそろ暴落がある」という理論は、これに反していますね。つまりどっちかが、または両方とも少しずつおかしなところがあるはずです。

 

個人的には、株価は長期(10年単位くらい)ではミーンリバーサル=平均回帰の力が働いているのではないかと思っています。つまり長期の自己相関はマイナスで存在するということです。

 

これまでランダムウォークに基づくモンテカルロ・シミュレーションを何度もやってきましたが、どうも実際の過去リターンと傾向が一致しないのです。で、長期で平均回帰すると考えたほうが、過去の値動きに近いんですね。

 

そして、これはそこまでおかしな話でもないと思っています。というのも、株価はEPSの何倍の値がついているかを示すPERという指標があり、これは市場のムードを表すため、高かったり低かったりが循環するからです。そして当然ですが、PERが低いときに買えばリターンが高くなり、高いときに買えばリターンが下がります

 

どのPER水準が妥当かは、なんとも言えませんが、なんとなく周期性があるのが分かります。ちなみに過去平均は16.06倍、過去中央値は15倍で、現在は27.99倍です。

というわけで、もしかしたらそろそろ暴落が来るかもしれない。そして積み立てによって資産形成をしている最中の人にとっては、早めに暴落が来たほうが実は有利だという話でした。

 

なお積み立ても取り崩しもしていない人にとっては、これらリターンの順番は影響なし。逆に取り崩しを始めている人にとっては、暴落はあとに来た方が有利なのはお分かりの通りとなります。

 

※しっかし、ぼくは昔から「日本経済と日本企業には期待しない」「米国株もそろそろ終わりかも」と書き続けてきていますが、現状はまったく逆ですね。為替もそうですが、ぼくの分析の逆に張ったほうが儲かりそうです。

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