FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

経済成長しなくても株価が上昇する理由 リスクプレミアムの謎

定期的に「なぜ株式投資のリターンは高いと言えるのか?」とか「株価指数が上がり続けるという根拠は?」という話が出てきます。そして、その答えとしてよく出てくるのが「世界経済は成長し続けるから」だというものです。

 

でも、論理的に考えると実は「世界経済が成長しなくても株価は上昇するし、他の投資先よりもリターンは大きくなる」ことが分かります。キーワードはリスクプレミアムです。

株価の算出公式

これを理解するためには、まず株価が理論的にどう決まるかをおさらいしましょう。一般的に、株価は将来予想される企業利益の割引現在価値だとされます。株価をP、一株あたりの利益をE、将来まで一定の利益成長率をg、投資家が株式投資に要求するリターン(割引率)をrとすると、次の式が成り立ちます。いわゆる等比数列の和です。

P=E/(r―g)

このとき、次の2つの企業への投資を考えてみます。株価はいくらになるでしょうか?

  1. 毎年利益が2%増加する成長企業への投資
  2. 毎年利益が2%減少する衰退企業への投資

今期の1株あたり利益(E)が100円だとしましょう。投資家はいずれの銘柄にも6%のリターン(r)を要求しています。計算すると次のようになります。

  1. 株価(P)=100/(6%-2%)=2500円
  2. 株価(P)=100/(6%+2%)=1250円

当然ですが、利益が伸びる会社のほうが株価が高く、利益が減少していく会社の株価はその半分になりました。

 

ではどちらに投資するほうが儲かるのか? 実は両方とも投資家が要求するリターン(割引率、r)は6%で同じなので、得られるリターンは同じになるのです。

 

これは2つの企業についての例ですが、これを成長し続ける経済と、衰退する経済に置き換えても式は同じです。別に経済が成長しなくても株式はリターンを上げ続けるし、経済が衰退していたってリターンが上がるのです。

 

え?成長企業に投資しても衰退企業に投資しても、得られるリターンは同じだって? そんなはずないでしょ? そう思う人もいるかもしれません。上記の理論株価の式を見て納得できない人には別の説明もしてみましょう。

毎年100円の配当を出す企業

ここに1株あたり100円の配当を毎年出し続ける企業があったとします。税金のことは本質と関係ないので無税として、利益の全額を配当として出すことにします。残念ながら、利益は成長しないので、いわゆる「成長しない経済」という企業です。この企業への投資はリターンを生むでしょうか?

 

投資家がこの企業に求めるリターンは6%。つまり、この企業の株は1666円で取引されます。100÷6%です。

 

逆にいうと、1666円で買った株から毎年100円の配当が入ってくるので、リターンは6%。翌年もその翌年も、配当額は変わらないので株価も変動なし。つまり投資家は毎年6%のリターンを得ることになります。配当額がいくらであろうと、成長しようがしまいが、それに応じた額で購入すれば、その投資からはリターンが得られるわけです。

 

全く成長しない企業でも、投資家が期待するリターン(r)に基づいて株価が決まるため、年率6%のリターンを得続けることができるわけです。

権威にもすがってみる

これでも納得できない人には権威にすがるしかありません。実はこの話、山崎元氏の『経済評論家の父から息子への手紙』の中に載っているものです。

成長率を反映させて株価が決まっている場合、割引率が同じなら、高成長で高株価な会社に投資するのと、低成長で低株価な会社に投資するのとでは、期待リターンに差はない

そこまで無理に当てはめると少し卑屈な感じがしなくもないが、例えばA社株式は経済成長している米国の株式、B社株式は人口減少でマイナス成長に陥るかもしれない日本の株式だと考えてみることができる。

低成長経済の日本株も、低成長が織り込まれた十分に低い株価で評価されていたら、米国株に遜色ない投資対象になり得るということだ。どちらかに投資することが有利なのではない。

では株式のリターンの源泉はどこにあるのか?

このように、式でみても例えでみても権威にすがっても、「世界経済が成長し続けるから」株式が利益を上げ続けるわけではないことが分かったかと思います。では経済成長しない世界において、なぜ株式投資に意味はあるのでしょうか? それは「投資家が得るリターン(r)」をもう少し分解すると理解が深まります。

 

投資家が株式投資に求めるリターンが期待リターン(r)でした。毎年の利益が100円で、そこに6%のリターンを求めるなら、購入価格は1666円でなければならない。と単にこれだけのことです。

 

ではなぜ投資家は株式に6%のリターンを求めるのでしょうか。なぜ4%や8%ではないでしょうか。その答えがリスクプレミアムです。

 

世の中には貸した金が、まず間違えなく利子付きで返ってくる投資対象があります。国債です。金利は、日本なら10年もので0.7%くらい、米国なら5%くらいですね。これはリスクゼロなので、無リスク金利といいます。

 

米国の場合で考えて、もし株式へ投資して5%のリターンしか期待できないのなら、誰も株式になんて投資しません。リターンが同じなら国債を買ったほうがいいからです。別の言い方をすると、100円の利子がもらえる国債が2000円(5%)で売られているときに、100円の利益を生む企業の株を2000円(5%)で買う人はいないということです。

 

利益が不確定な企業の株を買うからには、国債に上乗せされたリターンを求めます。もし追加リターンが5%なら、100円の利益を生む企業の株の値段は1000円(5%+5%)ということになりますね。投資家の期待リターンは10%というわけです。

 

このリスクプレミアムの存在こそが、他のどの投資よりも株式投資が儲かる理由です。そしてこの記事でずっと書いているとおり、経済成長しようが経済衰退しようが、株式投資のリターンに直接の影響はありません。株式のリスクプレミアム、つまりリスクを引き受ける対価が、株式投資のリターンだというわけです。

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