FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

Libraがドルに代わる日

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Bitcoinが生まれて10年。この得体の知れなかった仮想通貨という代物は、一つのアセットとして投資家の間に定着してきました。そして、仮想通貨のセカンドステージがいま、始まろうとしています。Facebookが進めるLibraです。

 

先日、英イングランド銀行総裁が「Libraが準備通貨としてのドルに取って代わるべき」という発言をしました。

 

His most striking point was that the dollar’s position as the world’s reserve currency must end, and that some form of global digital currency -- similar to Facebook Inc’s proposed Libra -- would be a better option.

彼の強調した点は、ドルが世界の準備通貨としてのポジションは終わるべきだということだ。Facebookが提案するLibraのようなグローバルなデジタル通貨が、よりよい選択肢となる。

Bloomberg:Carney Urges Libra-Like Reserve Currency to End Dollar Dominance

jp.cointelegraph.com

www.financialpointer.com

 

準備通貨とは?

 準備通貨とは、基本的には急激な為替変動を緩和するために当局が介入するための資金です。

自国通貨の為替レートの急変動を防ぎ貿易等の国際取引を円滑にするために、外貨準備を行なう。(Wikipedia)

 日本でいえば、急激な円高が進行した際に、為替介入を行い、ドルを買って円を売るという操作を行います。実際には、一国単独の介入にどれだけ効果があるのかは疑問視されていますが、こうした介入のアナウンス効果も期待できるとされています。

 

ちなみに、固定相場制を取っている国では、貿易による黒字、赤字を調整するためにも使います。ただし変動相場の場合は、基本的には関係ないとされています。

世界各国の準備通貨はドルが過半 

各国の外貨準備高の半分以上はドルです。続いてユーロが20%程度、英ポンドと日本円が4%程度です。Wikipediaによると、外貨準備高のトップは中国で3兆1000億ドル程度、2位は日本で1兆2000億ドル程度、3位がユーロ圏で8000億ドル程度となっています。

 

中国の場合、元のレート維持のためにひたすらドルを買い取ったことで準備高が積み上がりました。輸出が伸びて貿易収支が黒字になると、中国内の企業にドルが貯まります。企業は給料などを元で払わなければならないので、ドルを売って元を買います。すると、需給上、元が高騰します。これを抑えるために、政府が差額分のドルを買ってきたというわけです。

 

日本が円高を阻止するために、ドルを為替介入で買い取るのと同じ理屈です。中国と日本はともに貿易黒字国であり、通貨高を避けるために、外貨準備高が増えてしまうのは仕方ないともいえます。

 

ただし、最近では中国の外貨準備高は急激に減少しています。経済成長が鈍化してきていることもあり、逆に元安を阻止するための為替介入が始まったためです。ドル建てGDPでの世界1位を目指すため、といった話や、元が安くなると資本が海外に流出するから、といった説があります。1ドル=7元というのが防衛ラインと言われており、先日トランプ大統領が宣言した対中関税第4弾の際には、この防衛ラインを超えた元安を中国政府が許容したのではないか、という話も飛び出しました。

 

こんな中、逆に貿易収支が赤字の国は、放っておくと通貨安になってしまいます。そして、世界最大の貿易赤字国はアメリカです。貿易黒字の1位中国が4190億ドル(2017年)の黒字、2位ドイツが2810ドルの黒字なのに対し、米国は一国で8620億ドルの赤字です。

 

それでも激しいドル安にならないのは、ドルが貿易の決済に使われる基軸通貨であり、各国が準備通貨としてドルを溜め込むからだと言われています。このことが、アメリカに大きなメリットをもたらすとともに、世界経済が米ドルに振り回されることにもつながっています。

特定の国の通貨ではなく、通貨バスケットを基軸&準備通貨に

では特定の国の通貨ではなく、複数の通貨を組み合わせた通貨バスケットを基軸通貨や準備通貨に使ったらどうか? というのが、冒頭の「Libraを準備通貨に」という話です。

 

Libraは、価格変動を抑えるために、裏側に法定通貨を裏付けとして持つ、いわゆるステーブルコインです。ただし、特定の通貨だけに連動させるのではなく、通貨バスケットを用意してそれに連動させます。いわゆる合成通貨への連動ということです。

 

基軸通貨がLibraになるというのは、貿易などの決済にドルではなくLibraを使うということです。技術上の特性から、Libraは国際間決済をスムーズに低コストで行えるように作られています。現在の、複雑な国際間送金と為替決済の仕組みよりも、Libraを使った決済のほうが、技術的にはよりよい未来なのは間違いありません。

 

さらに各国が準備通貨としてLibraを持てば、米ドルを持つのに比べて特定の国に依存する形から脱却できます。

 

実際、Libraが普及を目指す過程では、小国にLibraを準備通貨として採用するように働きかけるかもしれません。Libraは通貨バスケットとの連動の裏付けとして各国の通貨だけでなく国債なども持ちますが、この国債を引き受ける代わりに準備通貨として使うよう、働きかけるといったシナリオです。

 

米国の代わりに、Facebookが覇権を握るだけではないか? という懸念もありますが、Libra協会はそのために複数の企業が合議で決定を行う仕組みを採用し、さらに数年後にはパブリックブロックチェーンでの稼働を目指すとも宣言しています。

 

少なくとも、世界経済の大きな転換期になる可能性のある取り組みがLibraですね。

www.kuzyofire.com

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