FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

仮想通貨のレイヤー2で、価値発行と機能は分離する

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仮想通貨界の著名人、大石さんが、下記のようにTweetしていました。アルトコインを例に、今後、通貨の「価値の発行」と「さまざまな機能」は分離する、というのです。

 

レイヤー2とは?

TCP/IPが物理層からアプリケーション層の6層構造であるように、ブロックチェーンを使った仮想通貨の構造も、複数の層になろうとしています。最下部の基盤となるのが、Bitcoinのようなブロックチェーンです。誰がいくら持っているのか、送金のたびにこのブロックチェーンに記録しています。

 

ところがBitcoinには、確定のために10分かかるという時間制限や、サイズの制約から一回に行える送金処理数(トランザクション)に制限がありました。これを解決するために開発されているのが、その上の層、レイヤー2です。

 

BitcoinではLightningNetwork、EthereumではRidenやPlazumaという名前のものです。このネットワークでトランザクションを処理し、結果を仮想のブロックチェーンに書き込むことで、トランザクション性能を向上させようという取り組みです。ブロックチェーンの外で処理を行うため、「オフチェーン」とか「サイドチェーン」などと呼ばれたりします。

機能の分離

これまでのブロックチェーン開発では、基本的に単純な送金機能しかないBitcoinのブロックチェーンに、機能を付加する方向でアルトコインが作られてきました。ブロックチェーン上でプログラムを実行するスマートコントラクト機能をもたせたEthreumや、送金を暗号化するZcash、ブロックサイズの拡大でトランザクション性能を向上させたBitcoinCashなどがそうです。

 

ところが、レイヤー2が発展すれば、さまざまな機能はこちらに持たせられるようになります。これが、機能の分離です。

ベース部分の価値はどこに?

ではレイヤー2にさまざまな機能が加えられたら、ベースレイヤーの価値はどこにあるのでしょうか? それは「価値の発行」になります。そのコインにどれだけの機能があっても、価値がなければ意味を持てません。Bitcoinが価値の発行を担い、レイヤー2がさまざまな機能を付加する。そんな世界のイメージです。

 

だから大石さんは、Bitcoin以外のアルトコインは価値を失う、とTweetしているわけです。

 

となると、ベースレイヤーはどのコインに価値の発行能力があるかが最大のポイントです。最大手は、仮想通貨時価総額の50%以上のドミナンスを持つBitcoinでしょう。ブロックチェーン技術において、みんなが使っている、ドミナンスは絶対的な優位性です。ハッシュレートも上昇し、51%攻撃も不可能です。セキュリティに直結することは、Bitcoinが未だにハッキングされたことがないことからもわかります。

 

もう一つは、徴税権に裏打ちされた法定通貨、Fiatです。特に、円やドルの強さは誰もが認めるところです。そのため、これらFiatに価値の裏付けをもたせる仮想通貨、いわゆるステーブルコインがあります。単一のFiatに連動(Peg)したものとしては、US Tetherがあり、複数のFiatに連動するものではLibraが挙げられます。

 

これらステーブルコインは、ブロックチェーン技術上ではベースレイヤーですが、価値の発行能力をFiatに負っているという意味では、セカンドレイヤーの一つだともいえるでしょう。

みんなが価値を認めるから価値がある

価値の発行能力というのは面白いものです。Fiatの場合は、国家という「暴力装置」を前提に、徴税権とリンクしていることが価値の源泉です。Bitcoinの場合は、単に「みんなが信頼して使っている」から価値を持つという、循環論法になります。

 

「皆が受け取ってくれると思うから価値がある、という循環的な幻想で価値が維持されている」と、貨幣の価値の源泉について経済学者の岩井克人氏は書いています。

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よく、株式などの証券との対比で、「Bitcoinは何ら収益を生み出さないから資産ではない」という発言を聞きます。でもそれは、円やドルのようなFiatでも同じですね。また、金(ゴールド)も同様です。特定の収益組織の分配権利である証券は、レイヤー2のさらに上のレイヤーで実装できるもので、実際、SecurityTokenとして作られています。そういう意味では、Bitcoinが収益を生み出すかどうかというのは、レイヤーの異なるものを比較しているわけで、ナンセンスです。

Bitcoinの価値の源泉

問題は、徴税権に連携していないBitcoinが価値を保ち続けられるのかということです。その価値の源泉は、信頼にあります。それはみんなが信じているということだけでなく、「価値が毀損しない」という意味でもあります。

 

1つは、ハッキングなどで奪われたり、勝手に誰かが生み出したりしないという技術的な信頼です。ここは、絶えず改良を繰り返す開発者コミュニティの努力と、これまで10年間ハッキングされていないという、歴史に裏打ちされています。金についても、なんとか無から生み出せないかと錬金術が繰り返されましたが、現在ではそれは(通常の歩法では)不可能だということがはっきりしました。それが信頼につながっているわけです。

 

2つめは、発行量の制約です。Bitcoinでは、アルゴリズムによって発行量の上限が定められています。すでに、85%が採掘済み。逆にいうと、ここから15%しか増えないことが決まっています。金と同様に、埋蔵量が決まっているわけです。これが価値が毀損しないことにつながっています。

 

一方で、法定通貨のFiatは、国家が自分の都合で発行量を増やします。実際、世界各国は金融緩和目的で通貨の発行量を何倍にも増やしており、その価値は根源的には下がっています。現実の価値の下がり方は、インフレ率で表しますが、Fiatには発行量の増大に伴いどんどん価値が毀損していく仕組みが内包されている事がわかります。

 

Bitcoinでも、アルゴリズムを変更すれば新規発行が可能になるという指摘もあります。ただし、そうした変更はBitcoinの根幹の価値を否定するものであり、必ず発行上限が定められたオリジナルBitcoinを支持する人がいるでしょう。つまり、Bitcoinのアルゴリズムを変更しようとしても、それはハードフォークとなり、オリジナルのBitcoinの価値は保たれるというわけです。

Bitcoinが喚起した通貨の意味

Bitcoin登場以前は、通貨の価値というのは分かっているような分かっていないようなものでした。1971年にブレトンウッズ体制が崩れ金本位制が崩壊するまでは、Fiatも価値の源泉を金においていたわけです。

 

金に変わる価値の源泉として、Bitcoinが登場したと考えると、これがどのくらいインパクトのあることだったかがわかります。

 

そしてBitcoinは、その評価に関わらず、止めることはできません。これは、マネーというものの本質的な民主化のプロセスでもあります。インターネットが登場する前、各国の通信は国の強い規制下に置かれていました。インターネットが普及し始めると、各国はそれをなんとかして規制しようと努力を重ねましたが、単一の管理者がいないネットワークというのは本質的に規制不可能です。現在は、中国を除いてインターネットに対して規制をしようという国はありません。それが本質的に不可能なことを理解しているからです。

 

同様に、金融やマネーは各国の強い規制のもとにあります。ところが、すでにBitcoinを規制しようという試みを各国は放棄しつつあります。管理者のいないネットワークは規制不可能だからです。これは、誕生から10年経って、Bitcoinを規制しようという動きはないのに、管理者が存在するLibraについてはなんとか規制しようと議論が続いていることからも、逆説的に分かります。

 

インターネットが世界を民主化し、個人の手に通信を取り戻したように、Bitcoinが金融とマネーを個人の手に取り戻す。そんなプロセスのど真ん中に、我々はいるわけです。

 

 

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