FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

FIREなどしないで「使命」を全うすべきなのか?

FIREという言葉が人口に膾炙するにつれて、その反対派も増えてきました。曰く、「一番大事なことはお金ではなく自由だという考え方ですが、これが間違っています。一番大切なことは使命を全うすることです。」

 

なるほど。筆者のこの考えに対していろんな意見が出ていますが、そもそものロジックの怪しさから、FIREについて改めて考えてみたいと思います。

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仕事とFIRE

まずは揚げ足を取ってみると、先の記事の著者は、「FIREのマインドセットだと仕事は悪いものという考え方になりがちだが、これだと仕事ができない人間になる」といいます。

 

はてさて。仕事が嫌で早期退職しようとしている人に、それだと仕事ができない人間になるよ、というのはどんな矛盾でしょう。

 

さらに、「人には使命があり、それはほとんどの場合仕事です。」と書きます。これも多くの場合、異論があるでしょう。まず、「使命なんて存在しない」という考え方。そして「使命=仕事ではない」という人。さらに、FIREしても「使命となるような仕事をする」というパターンもあります。

 

人生にとって、仕事が大きなウェイトを持っているのは事実です。そして使命というかどうかは別として、やりがいなり貢献している時間なりを得たいと望んでいる人もたくさんいるでしょう。しかし今の仕事が天職だ!と思っている人は、そもそもFIREになんて意識が向かないものです。

 

一方で、今の仕事がくだらない、ブル・シット・ジョブだ、役に立っていない。多くは、そうした場合にFIREを目指すことになります。くだらない仕事だけど、続けざるを得ないのは、生活のために給料が必要だから。ならば、経済的自立を果たせば、そんな仕事を続ける必要なんてなくなる。そういうわけです。

 

筆者は、よく調べもせず、かつ多くの人がどんな仕事をしているのかの想像力も持たず、自分の実体験だけで人生論を述べているに過ぎません。

使命と仕事

さて、人生にとって使命、言い換えれば意義が重要だということは意外なことではありません。FIREを志す人でも、「人生なんて無意味だ」とまで悟りきった人は珍しく、多くは「仕事以外のところで人生に意義を見いだしたい」と考えているのではないでしょうか。

 

では、どのくらいの人が自分の今の仕事に意義を感じているのでしょうか。米国で2018年に行われた調査「職場における意義と目的」によると、「10人中9人が、より意義深い仕事ができるなら、生涯賃金の一部と交換しても構わないと思っている」のだそうです。しかも、「常に意義を感じられる仕事ならば、平均で将来の生涯賃金の23%と交換してもよい」という回答だったといいます。

 

逆にいえば、10人中9人は現在の仕事にそこまでの意義を見いだしていないということです。

 

さらに2017年に16〜29歳の若者に対して内閣府が行った意識調査でも、興味深い結果が出ています。2つまでの複数回答ですが、仕事をする目的として、実に84%が「収入を得るため」と回答しました。

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この中では「仕事を通じて達成感や生きがいを得るため」とした人はわずか15.8%にとどまりました。

 

そして、仕事を選択する際に重要視する観点としては、「とても重要」「まぁ重要」の合計が高い順に、

  1. 安定していて長く続けられること 88.8%
  2. 収入が多いこと         88.7%
  3. 自分のやりたいことができること 88.5%

となっており、収入が得られて自由がある仕事を望んでいることが分かります。逆に「人の役に立つこと」は71.8%、「社会的評価の高い仕事であること」は57.2%と相対的に低く、いわゆる「使命」的なものよりも、実益を重視する傾向が強いことが分かります。

やりがい搾取

さて、これらを踏まえると、人生にとって意義=使命は重要だけど、それを現状の仕事から得られる人は極めて少ない、ということになります。

 

現在の仕事に満足していて、そこに意義、使命を見いだしている人からすると、FIREなんて、「なにおかしなことを言ってるんだ?」というふうにしかみえないのでしょう。ところが、実はほとんどの人にとって仕事は生活のためのお金を得るために仕方なくやっているものであって、別の方法でお金が得られるなら辞めてしまいたい、というものなのです。

 

この2つの層には、極めて根本の部分で断絶があります。特に、仕事に満足している人には、そうでない人のことがおぼろげにしか分からないからです。しかし、例えば会社組織の上層部にいる人たちの多くは、仕事に満足している人も多く、「仕事とは人生の意義である」と信じている人もかなりいます。

 

そういった人にとって、仕事とは意義を与えてくれるものである、お金のために仕事をするのではなく、意義のために仕事をするべきだ。だから、キミもお金ではなく意義のために働くべきだ——という思考の流れになるのは容易に想像がつきます。これは一部の人にとってはたいへん魅力的な概念であり、意義や周りへの責任感からたいしてお金がもらえなくても頑張ってしまうということにつながります。

 

想像力のない人のこうした発想によって、やりがい搾取は生まれるんだなぁ。

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