FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

Teslaの自動運転は何がすごいのか 「シャドーモード」で学習

今や自動車メーカーで世界最大の時価総額を持つ米Tesla。EVの雄としても有名ですが、その技術力が存分に発揮されているのは自動運転の領域でしょう。最大の特徴は「シャドーモード」です。

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自動運転の作り方

自動運転の仕組み自体はシンプルで、人間の目の代わりになるセンサー(カメラ、ミリ波レーダー、LiDAR)によって得た情報を元に、コンピュータがどう運転するのが良いかを判断し、それによってハンドルとアクセルとブレーキを操作します。

 

より良いセンサーを搭載するのは重要なことですが、やはり最も難しく、最も差が付くのがコンピュータによる判断です。ここが自動運転のキモであり、人工知能(AI)がそれを行います。

 

この自動運転を可能にするAIは、基本的には機械学習によって精度を増していきます。ディープラーニングとかそういうものです。この機械学習というのは、「ある入力」があったときに、「どんな出力」をするのかを判断するもので、例えば「カメラが前方に子どもを捉えたら」「ブレーキをかける」とか、「カメラが白線が右に曲がっているのを見つけたら」「ハンドルを右に切る」という具合です。

 

これを、「子どもを見つけたら」「ブレーキをかける」というように、状況ごとに動作を決めて、その大量のルールによって人工知能を実現しようとしたのが従来のアプローチでした。ところが、2000年代後半から発達したディープラーニングが、これを大きく変えます。

 

ディープラーニングとは、人間の脳を模した仕組みで、人工ニューロンであるパーセプトロンを多層に組み合わせて構成されました。ここに、元となるデータを入力すると、何からの結果が出てきます。例えば、写真を見せたら「猫」とか「猫ではない」とかです。これが合っていたら正解だというフィードバックを、誤っていたら間違いだというフィードバックを与えます。すると、システムはこれを元にネットワークを調整していき、大量の学習の後には人を超える認識精度を持つという仕組みです。

 

この機械学習の仕組みには、2つの課題があります。1つは、学習のために大量の演算能力が必要だということ。ただし、これは半導体技術の進歩とともに、日々改善されています。2つ目は、学習のためには大量のデータが必要だということです。

 

猫を学習させるだけならば、ネットにある大量の猫画像を与えれば済みます。しかし、自動運転を実現するには、実際の自動車が遭遇するたくさんの状況のデータが必要になります。これはどうやって解決したら良いのでしょうか。

実車でデータを収集するTesla

自動運転開発企業では、たくさんの公道試験が行われています。これは、いざという時のためにサポートするドライバーを乗せた自動運転車が実際の公道を走り、走りながらデータを収集するというものです。当然、自動運転の技術向上には欠かせないことで、各社は公道試験走行キロ数を競うように伸ばしています。

 

ところが、Teslaは実は公道試験走行にあまり積極的ではありません。これはなぜか。実は、実車を使ってTeslaはデータを集めているのです。

 

Tesla車がカメラなどのセンサーから得た情報を、随時通信を使ってサーバに送信しているのはよく知られています。これにより、事故があった際も、Teslaのサーバ側で走行データを確認でき、事故の原因などを調べることができるわけです。

 

ところがデータの使い道はこれだけではありません。実は、人間が手動で運転しているときも、裏側ではTesla車のコンピュータが自動運転を行っているのです。ただし自動運転の判断をしているだけで、その結果はハンドルやアクセル、ブレーキには反映されません。

 

Teslaはこの仕組みを「シャドーモード」と呼んでいます。そして、自動運転の判断と、そのときの人間のドライバーの操作を随時比較して、AIの判断が正しかったのか、誤っていたのかを学習しています。つまり、Tesla車のオーナーは、AIの教師となって随時運転を教えているわけです。

 

これは数少ない試験車で公道試験走行をするのに比べ、圧倒的な利点です。Tesla車が売れるほど、世界各地のさまざまなシチュエーションのデータが貯まり、そしてそのシチュエーションでどのように運転したらいいのかの教師データも集まるからです。

  • With Software 9.0, Navigate on Autopilot will initially be released in Shadow Mode – a dormant logging-only mode which lets us validate the performance of the feature in the background based on millions of miles of real-world driving. Once validation is complete, we will introduce Navigate on Autopilot as a beta feature to customers in the U.S. Navigate on Autopilot will be introduced in other markets in the future pending validation and regulatory approval.
  • ソフトウェア9.0では、まずシャドーモードでオートパイロット・ナビゲーションを提供します。シャドーモードとは、数百万マイルに及ぶ実走行に基づいて、バックグラウンドで機能の性能を検証するための休止状態のログオン専用モードです。検証が完了したら、米国のお客様にベータ版としてオートパイロット・ナビゲーションを導入します。オートパイロット・ナビゲーションは、検証と規制当局の承認を経て、将来的に他の市場にも導入される予定です。

データを制したものがAIを制す

以前から、データを制したものがAIを制すといわれていました。AIの精度を向上させるには、このように大量のデータが必要だからです。Googleは、Googleフォトで写真データを集め、Google Voice(米国)で音声データを収集しました。ユーザーは学習用のデータを提供する代わりに、サービスを無料で使えるというわけです。

 

Facebookは、ユーザーの投稿したコンテンツに対して、どんな人がどう反応(イイネ!)するかをひたすら学習しています。これは、ストーリーに何を流すのがよいかというサービスの改善はもちろんですが、最大の狙いは誰にどんな広告を見せたら最も反応するかを機械学習で理解するためです。これによって、Facebook広告はGoogleの広告などに比べても、インプレッション当たりの効果が著しく高く、これが同社の高収益を支えています。

 

自動車においては、大量の走行データと、そのシチュエーションでの人間の運転がどうだったのかのデータを、最も豊富に保有しているのはTeslaです。自動運転はそうそう簡単には実現できないものですが、最終的に、そこに最も近い企業はTeslaでしょう。

 

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