iPhone 15が発表になりました。USB-Type-Cにコネクタが変わったことくらいしか大きなアップデートがなく、そのくせ「すっごく高い!」と言われているわけですが、Appleがどんどん値上げしているわけではありません。実は歴代iPhoneの中で、初代を除くとiPhone 15は最安値だとも言えるのです。さらに世界の中で見ても、日本の価格は米国に次いで2番目に安くなっています。
2007年以来、最も低価格なiPhone 15
日本ではiPhone=高いというイメージですが、そのように見られているのは日本独特かもしれません。perfectrecに、歴代iPhoneの価格をプロットしたチャートが載っています。
このチャートはSIMロックなし、スタンダードモデル、最小メモリの歴代iPhoneの価格を載せたものですが、米国のインフレ率で調整している点がポイントです。米国では毎年数パーセントのインフレが続いてきたので、2007年の初代iPhoneの価格499ドルは、インフレ調整後には732ドルになる計算です。
これを見ると、初代iPhoneを除きますが、最新のiPhone 15は歴代で最も実質的な価格が安いことが分かります。
ちなみに表面価格での推移は下記のようになります。iPhone4Sのタイミング、iPhone 8のタイミング、iPhone 12のタイミングで値上げはされていますが、それはインフレ率よりも小さい値上げ幅だったことが分かります。
日本で高く感じる理由
ではなぜ日本人にとってiPhoneは高く感じるのか。それは2つの理由があります。1つはこの期間、日本ではインフレがほとんど起きていなかったこと。そのためインフレに合わせて海外製品の価格が上昇しているのに、日本の購買力は上昇しなかったのです。
2つ目は為替レートです。同じものはどの国でも同じ価格(価値)で買えるはずだという購買力平価に基づけば、インフレ国とデフレ国の価値の違いは為替が吸収するはずです。つまり1ドル50円くらいの円高になってもおかしくありません。ところがこの期間、ドル円は逆に円安に振れました。そのため、さらに輸入品の日本円での価格は上昇したのです。
下記は米国価格と米国インフレ調整後価格に、日本での価格もプロットしたものです。ただし初期のiPhoneがやけに安いのは、この当時、SIMフリー版が国内で発売されていなかったため、キャリアの補助金入りの価格になっているためです。その点はアップル・トゥ・アップルの比較にはなっていません。つまり、第3の理由としては、総務省の端末販売政策により、キャリア補助金が削減された結果、消費者にとってのiPhone価格が上昇したともいえます。
こう見ると、iPhone4の頃は4万円台で買えていたiPhoneが、今やスタンダードモデルでも12万4800円なのですから、そりゃあ高くなったと感じるわけです。
でも世界中で見ると安い
インフレ/為替レート/総務省と、iPhoneが高くなった理由を3つ挙げましたが、実はこれらの効果をフルに反映すると、もっとiPhoneは高くなっていてもおかしくありません。Appleは、日本での価格が上がりすぎないように、かなり日本でのドル建て価格を抑えているのです。
下記はnukeniによるiPhone 15の世界38カ国の価格表です。これを見ると、日本は多くの場合、米国に次いで2番目の安さに設定されていることが分かります。これは、各国の現地通貨での価格を、発表時の9月14日16時のレートで換算したものです。
高い高いと言われているiPhoneですが、例えばブラジルでは日本の1.5倍、トルコでは2倍で売られているわけです。そりゃ、日本のiPhoneを買いに、わざわざ海外から人が来るわけです。なんというか「安い国、日本」の象徴がiPhoneだともいえそうです。