先日、久しぶりにクラファンに手を出しました。今やクラファン大手となってきたFundsと、正確にはクラファンではなく私募のSiiiboです。でも、よくよく考えたら不動産とかのローンの金利よりもリターンが小さいんですよね。これは意味があるんでしょうか……。
クラファンでちょっと投資
maneoでデフォルトを受けて痛い目にあって、ならば大手だ!とSBIソーシャルレンディングに手を出したらこちらも不正流用を受けるという、酷い星のめぐり合わせにあるクラウドファンディング。それでも懲りずに、今回はFundsとSiiiboに手を出しました。
Fundsはトラディッショナルなクラファンで、上場企業中心に低利回りの案件を提供しています。リターンが2%前後ととっても低い代わりに、信用力が高くてまずデフォルトしないだろうという案件です。初期には、地銀が募集を掛けていてとんでもなく固い案件でした。だって預金と似たようなものですから。
ではなんで上場企業がわざわざクラファンで資金調達をするのかというと、投資家に対するアピールです。調達した資金も特に使うわけではなく、要するに広告費として金利を支払うわけです。この手法は「ファンマーケティング」として、金融商品の中でもかなりメジャーになってきました。
投資家としては、広告を見る対価として2%ほどのそこそこの金利を受け取れる、ある意味Win-Winのサービスです。
ついでに定期的にキャンペーンをやっていて、いまなら100万円投資すれば1万円分のアマギフがもらえます。つまりリターンが1%上昇するわけで、ざっくり3%ちょっとのリターンが期待できる案件ということになります。というわけで、2.2%の案件に少し申し込んでみました。償還は2025年の春です。
私募をネットで提供するSiiibo
もう一つがSiiiboです。こちらはクラファンではなく、私募債をネットで提供しようというサービスになります。普通の社債がほぼ大企業に限られているのに対し、私募は少額で金利や期間が柔軟な商品を設計できます。この点だけみると、クラファンに近いですね。そして税制的には社債と同じ源泉分離課税となっていて、雑所得のクラファンよりも有利です。
ただし、私募は勧誘先が50人未満という制限があり、法的な縛りがいろいろあることと、人数制限が邪魔をして、1件あたりの募集金額が高めという欠点もあります。
Fundsに比べると比較的高い利回りが多く、2〜7%程度。期間は2〜4年、単価は50〜300万円といった感じ。発行体は非上場ベンチャーも多く、正直、7%の利回りでもリスクに見合わないんじゃないか? と思うことも。
そんな中でも、Siiibo証券自体がお試しで発行する「いつでも換金債」というものが、2.5%で出ていたので、お試しで買ってみました。金利は低いものの、なんだかんだいってもSiiibo証券は金融庁監督下の金融機関なので、倒産するリスクは低いだろうという思惑です。
なおSiiiboは紹介プログラムがあって、下記から登録して債券を購入すると、相互に現金1万円がプレゼントされます。
よく考えると、けっこう高金利のローンを抱えている
というわけで、2〜3%程度の持ち切り債券案件をちょっと購入したわけですが、購入したあとで、ふと思ったことがあります。それは結構金利の高いローンをぼくは抱えているということです。
太陽光のローンは信販系で2.1%固定。そしてアパートのほうは長期プライムレート連動の変動金利です。で、この不動産ローンのほうが毎年のように金利が上昇しています。そりゃそうです。いま日本の長期金利は、ぐんぐん上昇しているのです。
2022年まではほぼ0%にへばりついていた10年もの国債金利ですが、22年から上昇を始め、23年に入ってからは上昇ペースも上がりました。直近は0.88%まで上がり、日銀がYCCのコントロール上限として新たに定めた1%も目前です。
そして長期プライムレートも当然上昇しており、不動産ローンはそこに上乗せ金利が乗って決まってきます。要するに、当初の想定よりも1%近く、ぼくのローン金利は上昇しているのです。
となると、2〜3%程度の投資案件に手を出すくらいなら、ローンの繰り上げ返済をしたほうがいいんじゃないか? ということ。でもこれがなかなか悩ましい。
シンプルに考えると、例えば3%のローンを持っている状態で、2%の投資をするのは非合理的です。投資するお金で繰り上げ返済すれば1%分、得するからです。
ところが、借金は長く借りられるということ自体が価値でもあります。いわゆる「期限の利益」というやつです。特に不動産ローンは長期の借り入れ契約かつ多額になるので、その期間、借りられ続けるということ自体が価値なのです。例えばローン金利が3%に上がったとしても、その間現金を期待リターン6%などの投資に回すこともできます。
現金を何に使うのがいいか?
つまり現金の使い道として、
- 現金のまま持っておく
- 2-3%程度の投資案件に回す
- 2-3%程度のローンを繰り上げ返済する
- 3%以上の期待リターンの投資を行う
という選択肢があることになります。それぞれのメリット・デメリットを考えてみましょう。
(1)の現金は自由度が最大の特徴です。インフレ下では価値を生むどころか実質的に価値が低下していくわけですが、大きな買い物をしたいとか、投資チャンスが来たときに使うとか、そういうときに機動的に利用できます。現金がなければ借り入れをせざるを得ず、そこには借り入れコストがかかります。特に不況期などでは、キャッシュイズキングなわけです。
(2)は2つの意味合いがあります。必要以上の現金があったときは、それをローリスクの投資に回すことで、インフレをカバーできるくらいのリターンを得られます。代わりに流動性=自由度が失われてしまいますが、それがカバーできればベターです。例えば早期償還権があるとか、ローンの担保に利用できるなどの特徴があれば、いざというときの現金需要にも応えることができます。
(3)は(2)と似ていますが、(2)と比較して、流動性=自由度が完全に失われてしまうというデメリットがあります。その現金は負債と打ち消し合って完全になくなってしまうのです。(2)は少なくとも運用期間が終わったら現金で戻ってきますが、(3)だと永久に戻ってこない。やはり自由度は(2)のほうが高い気がします。一方で、(2)と(4)には思惑通りに行かないリスクがありますが、(3)はノーリスクです。
(4)は期待値が高いならありですね。例えば(3)のローンだと、10年とか20年とかそういう長期の借り入れなわけですが、10年とか20年とかを平均して上回るリターンが得られるなら、そういう投資先にお金を回すほうが吉です。
実際にはどうするか?
これらを踏まえて改めて考えてみましょう。3%のローンがあったときに、3%の債券投資をするか繰り上げ返済をするかでいえば、自由度が高い債券投資のほうがメリットが大きいと考えます。ローンを返済してしまえば再び借りることはできませんが、債券投資なら満期がくればまた選択が可能だからです。
では2%の債券投資ならどうでしょう。1%分の損失を被るわけで、その資金の自由度を確保しておくコストとして1%が適切かどうか? で考える感じかと思います。
こう考えると、繰り上げ償還権のあるSiiiboの商品は、2.5%であっても投資する意味があると改めて感じました(リスクは別として)。さらに、0.51%しか利息がつかないもののノーリスクで繰り上げ償還も可能で、さらにローンの担保にも使える個人向け国債がかなりいい投資先だということも分かります。
一方で、Fundsのほうは2025年の春まで約1年半資金が拘束されます。金利はキャンペーン合計で3%超となり、ローン金利を上回るので、早期返済するよりもリターンは少しだけど上。なので、これはこれでありかな?
今後の判断としては、余っている現金について、繰り上げ償還可能ならば3%未満でもあり。繰り上げ償還不可で担保にもできないなら少なくとも3%の利回りはほしいという感じです。
分離課税よりも総合課税のほうが得かも
なお20.315%の源泉分離課税の私募・公募債券に対して、雑所得のクラファンは損だと思いがちですが、総合課税所得税の税率は、課税所得194万9000円までは5%、住民税10%と合計すると15%です。
ぼくの場合、給与は7万円なので社会保険料控除後の額は年間で69万2220円。給与所得控除が55万円あるので、ベースとなる課税所得は14万2220円しかありません。そのほかちょくちょく個人事業主として副業もしていますが、そちらは青色申告控除が65万円あります。さらに基礎控除が48万円。つまり、つまり約98万円までは副業で稼いでも課税所得はゼロ。
税率が5%から10%に上がるのは、課税所得194.9万円からなので、約292万円までは何で稼いでも税率は15%ってことになります。経費を差し引いた、副業+各種雑所得が292万円までは15%。こう考えると、人によってはかなり雑所得も有利です。
ちなみにクラファンなどのキャンペーンで得られる所得は、雑所得ではなく一時所得にカウントされると思われます。個人向け国債のキャンペーンでさえ一時所得なので。
一時所得は総合課税ですが、50万円の特別控除があり、さらに越えた分も2分の1にできるので、税制上は大変有利。先のFundsの話でいえば、2.2%は雑所得ですが、キャンペーン1%分は一時所得として、多くの場合は無税とできるのではないでしょうか。