FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

【実践 節税テクニック】TMFで損出しをやってみる

年末で近づくと考えなくてはいけないのは節税。そして誰でも簡単にできて効果が大きいのが損出しです。もう5年も前に、この損出しをクロスで行う方法を解説しました。ただそこからかなり外部環境も変わったので、改めて実践編として、実際に損出しをやってみたいと思います。

損出しによる節税のおさらい

株式の税金は、確定した利益や配当に対してかかります。一方でもし確定した損失があったら、利益や配当と相殺できます。そのため、年内に損失を確定させることで、利益や配当の課税額を減らし、節税しようというのが手法の概略です*1

 

もちろん、損出しは損切りとは違います。保有し続けたい株がたまたま含み損になっているから損出しを行うわけで、損出しをしたら同じ銘柄を買い戻すのが王道です。ここまでのところは、以前の記事でも書きました。

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損出し手法のパターン

損出しを行い、同値で買い戻す手法にはいくつかパターンがあります。基本的には、板寄せが行われる寄付や引けのタイミングに成行注文を出せば、売り/買いが同じ値段で約定します。

 

ただ注意が必要なのは、特定口座内で同一銘柄を売買すると「総平均法に準ずる方法」で計算されることです。そして常に「買い」が先で「売りが」あったとみなされます。意図としては、まず売って損失が確定し、続いて買うのでこちらは含み損益なしにしたい。でも、そうはならないのです。

特定口座内で同一銘柄を同じ日に売買(日計り)すると、取得単価はどのように計算されますか? | みずほ証券 よくあるご質問(FAQ)

 

例えば、額面100円現在値50円の株を売ると50円の損が確定し、50円で買い戻せばいいと思いがち。でも実際は、買いが先に計算されて取得単価が200株150円、つまり100株75円に変更になります。そこで50円で売るので、確定する損失は25円だけ。買い戻した100株は額面75円現在値50円となり、25円の含み損が残ってしまうのです。

 

これを避けるにはいくつか方法があります。

  1. 含み損銘柄を売り、同銘柄を信用買い→現引き
  2. 含み損銘柄を売り、B証券で同銘柄を買い
  3. 含み損銘柄を売り、一般口座で同銘柄を買い

(1)は簡単ですが信用金利がかかります。(2)は証券会社が変わってしまうので管理が面倒。(3)は最終的に税金計算が行われないため、自分で計算して確定申告が必要になってしまいます。

 

以前は売買手数料を考えると、信用金利を払っても(1)が良い選択だと考えていましたが、いまは手数料がほぼ無料化されているので、(2)を選択して、その後B証券で売却しA証券で買い直すというのがいいかと。またB証券からA証券に移管してもいいですね。

外国株の場合、手数料に注意

さて実際に損出しをやる前に、手数料についても確認しておきましょう。日本株は楽天・SBIによって実質無料化されましたが、米国株についてはNISA口座以外は有料です。その手数料は以下の通り(手数料0円もあり得ますが約定額が小さいので省略)。

  • 現物
    • 〜4444.45ドル 0.495%
    • 444.45ドル〜 22ドル
  • 信用
    • 〜5000ドル 0.33%
    • 5000ドル〜 16.5ドル
    • 買方金利 4.5%(1日あたり0.01232%、100万円で124円)
    • 貸株料 2%(1日あたり0.0055% 100万円で55円)

損出しを行うことで節税(正確には税払いの先送り)できる額は、含み損の20.315%です。つまり含み損があまりに小さいと、得られる利益よりも手数料のほうが大きい、いわゆる手数料負けします。

 

まず現物の場合だと、下記の場合に手数料負けします。

  • 〜4444.45ドル 含み損が2.43%よりも小さい
  • 4444.45ドル〜 含み損が108.3ドル以下

信用を使う場合、下記の場合に手数料負けします。金利や貸株料はかかりますがこの用途であれば誤差です。

  • 〜5000ドル 含み損が1.62%よりも小さい
  • 5000ドル〜 含み損が81.22ドル以下

ただし、米国株の場合はどうしても手数料がかかるので、単に税の先送りをするのでは割に合わない場合があることは覚えておきたいところ。含み損を顕在化させて今年の利益を消し込めたとしても、そのまま持っておけば来年の利益を消し込むこともできるのですから。

 

個人的には、先送りした税額を1年運用できると考えて、コストが節税額の5%以下なら十分に行う価値があると考えています。つまり、含み損の20.315%の5%なので、コストが含み損の約1%以下ならばやる価値があるという感じです。

TMFで損出ししてみる

というわけで、実践編です。まず僕のポートフォリオを眺めてみたところ、最も多くの含み損を抱えていたのは超長期債3倍レバレッジのTMFでした。損益率でいっても、▲41.9%。絶対損失額でいえばそこまでの額ではありませんが、最も含み損額が大きいのもTMFです。というわけでTMFを対象にすることにしました。



手法として最も低コストなのは信用です。米国信用を使い、TMFの売建と買建をクロスで作り、保有している現物を現渡しして売建を解消、買建を現引きして現物に戻せば損出しも完了♪ というプランだったのですが、なんとTMFは信用取引の対象外でした。まぁレバレッジETFを信用取引したらレバ何倍? みたいになるので気持ちはわかります。

次善の策としては現物売買になります。

  • 楽天証券で売却 コスト22ドル
  • SBI証券で購入 コスト22ドル
  • SBI証券から楽天証券に移管(コストゼロ。やってもやらなくても)

44ドルはかかりますが、これで損出しが完了するという具合です。

よくよく考えたら損失が積み重なっている

ただ、ここで改めて今年の特定口座損益計算書と昨年の確定申告書を確認です。というのも、そもそも利益が出ていなければ損出しをしても節税になりませんし、昨年からの損失繰越額が利益を上回っていても、損出しの意味がないからです。

 

まぁ2023年分として出した損失は3年後の2026年分まで利益を相殺できるので、意味がないわけではないのですが、44ドルもコストをかけて行う意味があるのかということです。

  • 株式繰越損失 ▲1,813,603
  • 先物繰越損失 ▲1,677,968
  • 2023年 楽天証券確定損益 +909,193
  • 2023年 日興証券確定損益 ▲1,247,552

ということで、あらあら今年も繰越損失が積み上がってしまいます。記憶によれば3年前からずっと損失が続いてきたので、今年さらに損出しをしても意味がないどころか、3年前の損失分について益出しをやるべきですね。

 

これだけ毎年確定損失を積み上げているなんて、九条はよっぽど投資が下手なんだろうな……と思うと思いますが、その通り。今後は配当は総合課税で税率を減らして、すると配当と相殺しない譲渡損失がさらに積み上がると思うので、ますます損失だらけになるはずです。もしかして節税なんて、今のぼくには不要?業績はずっと赤字なのに、キャッシュフローはずっと黒字が続いているぼくの法人と同じような感じで、面白いものです。

 

というわけで、いろいろと試算はしたものの、TMFの損出しはキャンセル。もし「今年は株の利益がたんまり出ちゃって税金ヤバイよ!」という人がいたら、ぜひTMFの損出しをすることをオススメします。え!?TMF持っていないって? 持っていれば含み損たっぷりだったのに残念ですね。今度、よい買い時をアドバイスしたいと思います。

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*1:正確には、損失を確定しないで持っておいて、あとで損失として利益を相殺することもできるので、節税というよりも税の先送りだともいえます。ただし利益が安定していない場合は、利益が出たときに合わせて損出しをすれば、毎年の利益額を平準化できます。