FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

FIRE志望者が増えると労働する人が減って困るのか?


久々にFIREの話題を。先日「FIREする人が増えると、労働する人が減って社会としては困る」という投稿を見ました。まぁそういうイメージ持つよね、と思いつつ、イメージで語ってはよくないと思い、ちょっと調べてみました。

働いている人の割合はどのくらいか

まず人口のうち、どのくらいの人が働いているのか見てみます。下記は総務省の労働力調査(2022年)。総数でいえば、日本人のうち就業しているのは約7割で、その比率は年々増加傾向にあることが分かります。

 

男性の就業率は高く、女性は低いのですが、近年とみに就業率が増加しているのが女性です。

上記のデータは「完全失業者」を含まない就業者の比率を示したものです。これを年齢別に見てみましょう。2022年のデータをグラフにすると次のようになります。

全体でみると、就業率は60.9%ですが、男女で差があって、男性69.4%、女性53%なのは先に見た通り。うち、労働力人口と呼ばれる15−64歳の中での就業率を見ると、男性が84.2%、女性72.4%、合計で78.4%となります。


このうち、25歳から54歳の比率はだいたい一定していて、次のようになっています。

  • 男性 93.2〜91.3% ほぼ9割が就業
  • 女性 78.4〜81.4% 約8割が就業

この就業率は実は60歳を超えてもいきなりは下がらず、わずかな減少にとどまります。これが一気に下がるのが65歳からで、65−69歳を見ると、男性61%、女性41.3%、合計50.8%と約半分がリタイアする形です。これは65歳から標準的には年金がもらえるようになるというのも影響しているでしょう。

 

これらのデータから分かるのは、15−65歳の労働力人口の中でも、働いているのは4人のうち3人だということ。25-54というコアでみても、働いているのは男性8割、女性8割ということです。

FIRE可能な資産を持つ人の比率

ではFIRE可能な資産を持つ人はどのくらいいるのでしょうか。下記は有名な野村総研の富裕層調査です。これは不動産を含めない純金融資産であり、かつ個人ではなく世帯となっていますが、ここからいろいろ推計できます。

まず純金融資産1億円以上の富裕層以上は、148.5万世帯。これは全体の2.7%にあたります。

 

ただこうした富裕層のほとんどがシニアに偏っているのが日本の特徴です。10年以上前の古いデータですが、キャップジェミニのレポートによると、日本の富裕層の42%が66歳以上で、46歳未満は20%に過ぎません。

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FIRE候補者は0.5%

つまりFIREの条件を、

  • 資産1億円以上 全世帯のうち2.7%
  • 46歳未満 全世帯のうち20%

だとすると、全人口のうち0.54%しか該当しないということになります。200人に1人のレベルです。これが潜在的なFIRE候補者です。

 

FIREするかどうかの意図はともなく、資産規模と年齢の条件から見ると、FIREしたくてもできる人はこのくらいだということです。つまり、これらの人が全員FIREに踏み切ったとしても、就業率は0.5%しか変化しないことになります。

 

実際のところ、「若くして億を超える資産を作った人」というのは、起業家やビジネスで成功している人がほとんどで、FIREしようと思ったら可能だけど、踏み切る人はごくごく少数です。昨今のFIREブームで、この比率が多少増えた可能性はありますが、まぁ全体でいえば誤差といっていいでしょう。

 

またFIREブーム、そして資産運用ブームによって、支出を切り詰めて資産を蓄える人が増えた可能性もあります。ただ総務省の調査によると、平均貯蓄高は2018年から徐々に増えてはいるものの、1752万円→1901万円と8%程度のアップにとどまっています。FIREで投資ブームがあったといっても、若年層の資産が一気に増えたという証拠はありません。

FIREはライフスタイル

こうしたデータからは何がいえるでしょうか。FIREがブームになったとしても、実際にFIREできるだけの資産を、FIREといえる年齢で形成できる人はごくごくわずか、全人口の0.5%程度に過ぎないということです。

 

さらにそうした潜在的FIRE候補者のうち、実際にFIREするのは50人に1人(0.01%)といったところではないでしょうか(主観)。日本のFIRE人口が1万2000人という計算になりますが、どうでしょう?

 

もしこの比率が2倍になったとしても、0.02%。冒頭で調べて労働者比率に対する影響は誤差以外の何者でもありません。FIREがどうかということよりも、そのほかの影響のほうがはるかに大きいわけです。

 

こうしたことから言えるのは、FIREは日本の労働力に影響を与えるような何かではなく、ライフスタイルだということです。国民は日本という国のために存在しているわけではなく、国民の安全と幸福のために日本という国は存在しています。仮にも自由主義の国である日本において、国民が好きなライフスタイルを選択できるよう日本国はサポートするべきであって、日本国の制度存続のために国民のライフスタイルが影響を受けるのは本末転倒です。

 

そうでなくても、日本は欧米に比べてFIREに代表される早期リタイアに否定的な国民性です。昨今のFIREブームによって、個人のライフスタイルの自由が尊重される社会になるなら、それは日本の自由度がアップしたということで、喜ばしいことではないかと思っています。

 

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