つれずれとなんでセミリタイアに惹かれたんだろう? と考えています。人生100年時代にずっとサラリーマンをやっていて大丈夫だろうか? とか、仕事の内容がどんどん雑務になっていき、本当にやりたかったことができていないんじゃないかとか。いろいろな理由はありますが、セミリタイアした先輩方のエッセイなどを読むに、こういう生き方っていいな、と感じたのが最大のきっかけだとも思います。
その先輩方の一人が、作家の森博嗣です。代表作はデビュー作のミステリ『すべてがFになる』と映画化された『スカイ・クロラ』あたりでしょうか?
この森博嗣は、「作家になったのは金を稼ぐため」「蒸気機関車を自宅で好きなだけ走らせるのが夢」「お金が溜まったので国立大学の助教授の職を捨てて隠遁生活」「1日1時間くらい執筆もしている」という、見事にセミリタイアを実現させている方なのです。
大ヒット作家であり、本人も、
小説家としてデビューした最初の年に、一千万円ほどの印税が口座に振り込まれた。これは大学からもらっている給料よりもずっと多い。しかも、その後、その金額は年々倍増していく。五年後には年収が一億円を突破した。『夢の叶え方を知っていますか?』
と書いているように、恐ろしいほどのお金持ちでもあります。
それでも、収入が増えたからといって豪遊するわけでもなく、社会的な地位にも頓着なく、自作の蒸気機関車を走らせる土地を買って、そこで朝から晩まで工作漬の毎日を過ごしているそうです。
四十代であっさりと実現してしまった。小説のバイトがあまりにも(予想外に)うまくいったためで、これは幸運だったといわざるをえない。
仕事は自己実現の手段ではない、人間は働くために生きているわけではない、と森博嗣は書いています。そして自分でもそれを実行しています。
あらゆる面において、働かない方が人間的だといえる。ただ、一点だけ、お金が稼げないという問題があるだけである。
したがって、もし一生食うに困らない金が既にあるならば、働く必要などない。もちろん、働いても良い。それは趣味と同じだ。働くことが楽しいと思う人は働けば良い。それだけの話である。こんなことは当たり前だろう。
ぼくの場合は、この森博嗣の考え方に、けっこう全面的に賛成なわけです。お金がある程度あるならば、趣味としての仕事をしていけばいい。お金のために働くのはやめよう。そもそも仕事以外にやりたいことはたくさんある。そんなふうに思います。
日本でここまで「仕事なんて金を稼ぐためのものだよね」と言い切る方はあまりいないのではないでしょうか?