先日の「億り人じゃあ、たぶん足りない」を、いつも愛読している高等遊民さんが取り上げてくれました。高等遊民さんが書いていることは全くもってそのとおりで、ちょっと「億り人」という煽り言葉と一般化した表現を使ってしまった、、という感じです。
一方で、「セミリタイア」「アーリーリタイア」と言っても、かなり人によって意味合いは違うということを実感しました。
- アーリーリタイアの4つのタイプ
- スリム&セミリタイア:最も実現しやすいタイプ
- スリム&完全リタイア:生活次第で実現
- ファット&セミリタイア:求める生活費次第
- ファット&完全リタイア:安全志向に振れざるを得ない
- 必要な資産規模は(当たり前ですが)生活スタイル次第
アーリーリタイアの4つのタイプ
リタイアすることを米国では"F.I.R.E (Financial Independence and Retirement Early)"と呼びます。中でも、節約を重視し家計を最小限に抑えることでリタイアを実現する方法をスリム(Slim)タイプ、逆に資産を増やし投資収益を大きくすることでリタイアを実現する方法をファット(Fat)タイプと呼びます。
さらに、完全に引退し、収入を得るような仕事を基本的にしない「完全リタイア」と、フルタイムの仕事はしない「セミリタイア」に分けられるでしょう。図にすると下記のようになります。
どのリタイア(セミリタイア)を選ぶかで、実は考え方はかなり異なるものになります。
スリム&セミリタイア:最も実現しやすいタイプ
まずスリム&セミリタイアタイプは、この中では最も実現しやすいタイプだと思います。生きていくのに必要な金額は本当に人それぞれなので、生活費を絞った上で必要に応じて仕事をすればいいからです。
資産があまりなくても、仕事を報酬重視に切り替えたりすれば問題なかったりします。
スリム&完全リタイア:生活次第で実現
完全リタイアだと少しハードルが上がります。資産を取り崩しながら生きていくとして、残年数を40年程度と考えると、想定運用利回りが4%で生活費の20倍の資産が、5%で17倍、6%でも15倍の資産が必要になります(下記のグラフ参照)。
資産が1億円だとすると、想定運用利回り4%で年間生活費は500万円、5%で588万円、6%で666万円となります。
生活スタイル次第で、このくらいの資産でも完全リタイアは可能です。想定生活費をどのくらいに置きたいかが(当然ですが)最大のポイントとなります。
ファット&セミリタイア:求める生活費次第
求める生活費と、フルタイムではない仕事でどのくらい収入を得るかでここは変わってきます。ファットタイプを志向する人は、生活レベルを現在より落とさずに行きたいと思っている方向性です。
不動産投資家界隈では、投資(不動産事業)の目標として、月収100万円ほしいという方が多くいらっしゃいます。これでリタイアできるかどうかはそれこそ人によりますが、IRR4%と考えると、これを実現するには資産が3億円ほど必要になります。IRR6%なら、2億円です。
「億り人じゃあ、たぶん足りない」の背景は、このイメージです。リスクをとった投資を継続するとともに、収入の半分くらいはセミワークで稼ぎたいという感じです。
ファット&完全リタイア:安全志向に振れざるを得ない
逆に、資産からの収益だけで生活し、しかもお金に困らない(ここも個人差が大きいです)生き方をしようとすると、必要な資産規模は膨大になります。こちらも仮に月収100万円を目指すなら、米国債利回り3%として、4億円。
資産を取り崩していくとしても、2億円でも24年しかもちません。3億円あれば47年もつ計算になります。1億5000万円の資産で年間800万円の収入なら、取り崩しつつで28年持ちます。
必要な資産規模は(当たり前ですが)生活スタイル次第
絶対的な金額は重要ではなくて、どのくらい生活費に使いたいかで話は全く変わってきます。ということで、資産を取り崩して生活するとして、「必要年収の何倍の資産を持っているか」(生活費マルチプル)を横軸におき、「資産がゼロになるまでの年数」を縦軸として、運用利回りごとにグラフ化してみました。
生活費マルチプルの逆数が利回りを超えると、資産を全く取り崩すことなく生活できるので永遠に生きられる計算になります。もちろん、リターンは安定しては得られないので、実際はリスクがあります(正確にはこちらのモンテカルロ法を使ったシミュレータで試算してみてください)。