FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

年金のお得な受け取り方

 『人生100年時代の年金戦略』の書評3本目です。1本目は年金の概略とともに、そのリターンをIRRで計算してみました。2本目は年金は破綻するのか? を財源の状況とともに見てみました。今回は、その年金をお得にもらう方法についてです。 

人生100年時代の年金戦略

人生100年時代の年金戦略

 

 

繰り上げ受給すべきか、繰り下げ受給すべきか、それが問題

まずは年金の受け取り方の最大の選択項目である、何歳からもらうか? です。老齢年金の受給は通常65歳からですが、受給年齢を変更することができます。

 

1ヶ月繰り上げで受給するたびに、月間のもらえる額が▲0.4%となります。逆に、1ヶ月繰り下げると月間+0.7%となります。上下の変更幅は60歳から70歳です。さて、どう考えたらいいのでしょう?

繰り下げ期間中は年金をもらえません。これを増額された後、何年で取り戻せるでしょうか。答えは、何歳まで繰り下げようが、「受給開始後から 11 年 11 カ月」です。

なるほど、これはシンプルです。受給開始後、11年11ヶ月生きているつもりなら、基本的に繰り下げるほうがお得というわけです。最大限遅らせて70歳からもらっても、80歳11ヶ月を超えたらお得になるというわけです。

年金を運用することを考えると? 

いや単純計算では確かにそうなのですが、年金のような10年20年単位のものを考えるときには、割引率を入れた現在価値で考えなくてはいけません。つまり、早くもらってそれを運用したら、逆にお得になるのではないか? ということです。

 

それを計算したのが下記の記事です。見ての通り、69歳受給にすると、97歳まで生きないとお得になりません(割引率5%で計算)。そして86〜90歳で死ぬのなら63歳受給がベターという計算になります。

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割引率5%はちょっとアグレッシブな計算ですが、年金受給期間の間まったく運用しないということは考えにいですね。割引率3%くらいはリーゾナブルなので、「11年11ヶ月」を真に受けてはいけないと思います。 

 

ただ、運用しないのなら繰り下げのほうがお得になるロジックはあります。特に、死亡率を加味して計算すると、確かに微妙に繰り下げのほうがお得になる場合があります。これは意識しておいていいと思います。

まずは繰り下げの仕組みが決まったのは2000年とかなり昔であること。その際に基準となったのは1995年時点の死亡率です。

繰り下げでもらうと国はその分長く運用できるので財政的にプラスであり、それも繰り下げの増額率に反映されている 

 

年金にかかる税金を安くする 

 面倒なことに、年金には税金がかかります。年金は雑所得として計算され、所得税や社会保険料がかかるのです。さらに、健康保険や介護保険料は、多くの自治体で住民税とリンクしています。つまり、年金に税金がかかり、税金がかかると健康保険や介護保険料もアップするというすごい制度なのです。

 

地区によってこの数字が変わるという複雑っぷりなのですが、著者がいろいろ調べてまとめてくれています。

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 なるほど、手取り比率で見ると、130万円から150万円が最も手取り比率が高くなるようです。なぜこれが重要かというと、繰り上げ受給や繰り下げ受給によって税率が変化してしまうからです。本当は、これも加味してどちらがお得か計算しなくてはいけません。かなりやっかいです。

住民税非課税を目指すには?

 

先に書いたように、健康保険や介護保険料は、多くの自治体で住民税とリンクしています。逆にいうと、住民税が非課税だと大きなメリットになります。

 

たとえば、医療費自己負担は通常2割だが、住民税非課税世帯は1割ですし、高額医療費は、70歳以上で全員が住民税非課税世帯なら月2万4600円だが、課税世帯は5万7600円になります。うまく年金額を調整することで、住民税非課税になれるならそれにこしたことはありませんね。

 

住民税非課税は地区によって違うんだそうです。大都市対象の1級地の場合、合計所得額が、本人+扶養親族人数 × 35万円+21万円まで非課税という計算だそうです。夫婦2人だと91万円です。合計所得額は、年金収入から公的年金等控除120万円を引いた額です。

 

つまり211万円以下なら住民税非課税となります。また、地方に多い3級地だと193万円以下なら住民税非課税です。

 

繰り上げ受給をうまく使って、193万〜211万円に年金額を抑えれば、住民税非課税となってさまざまな税や社会保険負担を減らせるわけです。

 

ただし著者は「お薦めしない」としています。 

それでも「お薦めはしません」と最初に書いたのは、一生減額が続く繰り上げは、「公的年金は長生きに備える保険」という本来の趣旨に逆行するからです。


60歳以降も働くべきかどうか

年金にはややこしい仕組みがあって、60歳以降も働く場合、「年金保険金を支払うことで受給額が増えるメリット」と、「在職老齢年金という仕組みで受給額が減額になるデメリット」があります。

 

まず増えるほうですが、

64歳まで働く場合、200万円以上働くと年収が100万円増えるごとに3万円程度の上積みですが、働かないのと働くのとでは9万円も違います。実は、これは基礎年金部分が実質的に満額になる効果も加わっているのです。

なんだかほんとうにややこしいのですが、「基礎年金部分が実質的に満額になる」というのは、満額=40年という意味です。大学生の時代に年金支払を免除されていた場合、60歳時点で38年分の年金払になります。マックスは40年ですから、免除年数分追加で働くことで満額にすることができます。 

 

逆にいうと、マックスの40年に達してしまった人は、国民年金分も含む厚生年金を払っているのに、厚生年金分しかプラスになりません。「増加ピッチが落ちる」というより単なる払い損ですね。

この「増加ピッチが落ちる」ことについて「 60 代の厚生年金加入は損だ」という人もいます。厚生年金保険料として収入の 18.3%(自己負担分は9.15%)を払い続けることは変わらないのに、基礎年金部分が 40 年で満額になったあとは厚生年金部分しか増えていかないからです。

では、在職老齢年金というデメリットの方はどうでしょうか。まずは64歳までについては、経過措置の特別支給老齢厚生年金が減額になる場合があるようです。これは、1961年(男性)、1966年(女性)以降に生まれた人にはそもそも支給されないので、この記事では無視します。

 

そして65歳以上については、次のようになっています。

厚生年金月額と賃金月額の合計が46万円を超えると、超えた額の半分が厚生年金月額から差し引かれる

月46万円というのは確かに高額ですね。65歳以降としては。

iDeCoのお得な受け取り方 年金空白の5年間を活用する

本書では、最後にiDecoやNISAの解説も入っています。かなり簡易なものですが、受け取り方はなかなか面白いものでした。

 

まず、iDeCOの受け取りには税金がかかります。またかよ、という感じですが、そういうものです。ただし、30年間iDeCoで積み立てると、40万円×20年 + 70万円×10年で1500万円の退職金控除枠が使えます。つまり、1500万円までは無税ということですね。

 

20年積み立ての場合は、40万円×20年で800万円だというのは注意が必要ですが。基本的には、この退職金控除で受け取ってしまうのがポイントです。ただし退職金控除枠は会社の退職金の非課税枠と共有です。なので、会社の退職金がある場合、この枠がなくなってしまう場合がありますね。

 

もう一つ、iDeCoの受け取りには年金も可能です。年金として受け取ると、雑所得となり、60歳代前半は年間70万円、後半は120万円の公的年金等控除が使えます。ただしこちらも公的年金の非課税枠と共有です。

 

そんなわけで、著者のお薦めは、「公的年金の空白時代を活用する」です。

60歳代前半の年金の「空白の5年間」を使った手法です。すべてを一時金で受け取るのではなく、60歳の定年後、公的年金の支給が始まる64歳までの期間を活用するのです。この間の公的年金等控除の額は年70万円。これ以下なら税金はかかりません。

 5年間で最大350万円が非課税となるわけです。そして350万円以上については、一時金として受け取り、退職金控除枠を使うことになります。ただ、この年金+一時金という受け取り方法を選べないiDeCo運用会社があります。

 

SBI、ダイワ、さわかみ、損保ジャパン日本興亜では、併用ができず、どちらか一方だそうです。これは驚きました。要注意ですね。

 

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