iPhone 12が発表されました。リアルタイムで発表を見た身としては、「今回はminiを買うぞ!」と買う気満々なのですが、はて、冷静に考えてみると、なんで最新のスマホを買うのでしょうか?
- iPhone 12の特徴をシニカルに見る
- 5G――どこで使えるの?
- ガラスが頑丈――セラミックシールド
- A14 Bionic
- Retina XDRディスプレイはきれいだが
- 違いはわかるのか?のカメラ
- MagSafeは面白いものの
- なぜiPhone12を買うのか?
- 補足:なぜiPhone?
iPhone 12の特徴をシニカルに見る
今回のiPhone 12、特徴のそれぞれをちょっとシニカルに見てみましょう。
5G――どこで使えるの?
iPhone 12の最大のウリは5G対応です。でもですね、実は4G LTEの速度で遅くて困っているということは全然ないのですよ。2時間の動画を数秒でダウンロードしたいですか? ぼくはストリーミングで見られれば、ダウンロードに10分掛かっても全く問題ありません。レイテンシが短いほうがいいですか? いまのネットワーク構成だと無線部分のレイテンシが小さくなっても、バックボーンネットワークのほうがボトルネックです。
そもそも5Gってどこで使えるんでしたっけ? 下記はついに公開されたドコモの5Gエリアマップです。オレンジじゃないですよ、赤いところがエリアです。
6ヶ月後の2021年5月になるとどうでしょうか?色は増えました。でもですね、3Gのスタートの頃を思い出せば分かりますが、マップ上は対応エリアでも、全然つながらないというのが普通なのです。
5Gの特徴は、新しい周波数帯の電波を使うことです。それによって広帯域を利用可能にし、だから高速になります。ただし、新しい周波数帯は高周波なんですね。iPhone12が国内で対応しているsub6は3.6〜6GHz帯、米国で対応するミリ波は30〜300GHz帯です。
周波数は高くなるほど障害物の影響を受けます。つまりこれまで以上にビルの陰や屋内に電波が届きにくくなり、アンテナをそこら中に乱立させないと、通信ができなくなるということです。ミリ波におよんでは雨が降っただけで速度低下とか、アンテナが見通せないと厳しいなどと言われていたりします。そういう状況ですから、5Gエリア内であっても、見通しの良い屋外でなければ圏内にならない可能性がありますし、スピードもしかりです。
そもそも、5Gを使うには大手3キャリアの契約が必要です。IIJなどは5G対応の用意を進めているといいますが、基本的に格安SIMは未対応です。どちらにせよ、使えないということですね。
ガラスが頑丈――セラミックシールド
毎度のことながらAppleはネーミングセンスがいいです。高解像度ディスプレイに「Retina(網膜)」と付けたり、顔認証に「Face ID」と付けたり。今回、ガラスコーティングに「セラミックシールド」という名前を付け、耐落下性能が4倍向上とうたっています。
これはちょっと惹かれますね。スマホの画面を割ったことのない人はいないというくらい、ガラスの頑丈さはみんな気になる点でしょうから。ただ、ガラス修理はさほど高価ではありません。AppleCare+に入っている場合、3700円。保険に入っておらず保証対象外の場合でも、1万4500円(iPhone SEの場合)です。
月額700円の保険でも、手元の3台について10万円まで保障されます。2年で買い換えるとしても、保険コストは1万6800円。安い端末(例えばiPhone SEとか)を買って、保険に入るという手だってあるわけです。
A14 Bionic
iPhone 12のウリの1つがApple独自の最新SoC、A14 Bionicです。下記のとおり、先代のA13からCPUとGPUが50%速く、機械学習用のコアであるニューラルエンジンは70%高速だとしています。
確かに、CPUの速さは重要です。でも、先代のA13 Bionicを搭載したiPhone SE2は、わずか4万4800円です。ここで有名ベンチマークソフトAntutuを使ったパフォーマンス比較を見てみましょう。A12Xを搭載したiPadが速いのはまあ当然として、iPhone SE2も健闘しています。
なお、流出したと見られるiPhone 12とiPhone 12 ProのAntutuベンチマークスコアは、iPhone 12が564,899、iPhone 12 Proが572,133だということです。この数字をもとに、Antutuスコア100点あたりの値段がいくらになるかを見ると、見事に低価格モデルほど単価が安い計算になりました。
単に速いCPUがほしいのなら、SE2でいいじゃん?という話です。しかも、SE2よりも古い世代のiPhoneを使っていても、特に遅くて困るということはないと思います。半導体は現在の電子製品のコアであり競争力の源であり、進化の要ですが、その処理能力の伸びほど、UXは改善しないともいえます。
Retina XDRディスプレイはきれいだが
本体サイズが小さくなっているにも関わらず、画面サイズが大きくなっているのはiPhone 12の特徴です。Retina XDRディスプレイと書かれたOLED(有機EL)はたしかにきれいです。ただ、iPhone X/XS/11 Proは当初からOLEDだし、ハイエンドAndroid端末の多くもOLED。iPhone 11が液晶パネルだったというだけでもあります。
そしてSoCなどと異なり、OLEDはAppleが作っているわけではなく、iPhone 12のディスプレイのサプライヤーはSamsung DisplayとLG Displayの模様です。iPhone 11との比較では確かに綺麗になっているが、競合の例えばAndroidと比べて画期的というほどではないようにも思います。
違いはわかるのか?のカメラ
iPhone 12の中でも、アピールポイントとして多くのスペースを使っているのがカメラです。確かにスマホの機能の中で、最も重要なものとしてカメラを挙げるユーザーは多く、各社はよりきれいに映るカメラに力を注いできました。夜景処理などではGoogleがAI処理によって抜群の性能を見せたPixelシリーズなどが一歩抜き出ていましたが、さて今回のiPhone 12でどうなるか。
しかしまぁ、スマホのカメラはもはや成熟の域に達したと考えてもいいと思うわけです。iPhone 12 Pro MAXのLiDARは、暗いところでも距離を測ることができ、高速なピント合わせやボケ処理に活用できると思いますが、Pro MAXはさすがに普及機ではありません。
MagSafeは面白いものの
背面にマグネットでさまざまなアクセサリーを装着できるMagSafeは面白いものの、画期的というよりは、ギミックの域を出ません。これがあるからほしいと思うほどではないということです。
なぜiPhone12を買うのか?
こんなふうにシニカルに見てみると、はてさて併売される旧モデルでもいいじゃないか? と思えてきます。一世代まえのSoCを搭載したSE2はたいへん安価ですし、Face IDがほしいならディスプレイは液晶になりますがiPhone XRという選択肢もあります。
- iPhone 12 Pro MAX 11万7800円〜
- iPhone 12 Pro 10万6800円〜
- iPhone 12 8万5800円〜
- iPhone 12 mini 7万4800円〜
- iPhone XR 5万4800円〜
- iPhone SE2 4万4800円〜
実はiPhone 12シリーズの日常使いにおける最も大きな特徴は、狭額縁化による本体サイズの縮小と軽量化だと考えています。
iPhone 12は、11に比べてディスプレイサイズを拡大しながら小さく、軽くなっていることが分かります。miniは、SE2よりも小さく軽いのには驚きです。
そんなわけで、最も新型iPhoneらしいのは、今回はmini。これだけ小さくなりながら、画面サイズはiPhone 8 Plusより0.1インチ小さいだけなのです。そして5インチサイズのAndroidと比較しても、133グラムという軽さは特筆できます。それでいて、基本スペックはiPhone 12と同じ。小型のiPhoneを待ち望んでいた人たちにとっての福音です。
5G対応やカメラ、CPUスペックの強化などは、果たして効果を実感できるか怪しいところがありますが、サイズ、重さといったフォームファクターは、すぐに違いを実感できるものです。6インチオーバーに慣れた身からすると5.4は小さすぎるような気もしますが(Pixel4も5.7インチです)、どんどん大型化するスマホ業界にあって、小型軽量回帰にトライしたminiは、エポックメイキングな製品だと考えています。
補足:なぜiPhone?
格安SIMに慣れた人からすると、なぜ安価で高性能なAndroid端末がたくさんあるのに、わざわざ高価なiPhoneを選ぶのか? という疑問もあると思います。iPhone 3Gのころから、iPhoneとAndroidを併用してきた身から、その違いを簡単にまとめてみます。
ちなみにこれまで使用してきた端末は下記の通りです。
- iPhone 3G (2008
- iPhone 4 (2010
- Galaxy SII (2011
- iPhone 5 (2012
- Nexus 5 (2013
- iPhone 5s (2013
- Nexus 6 (2014
- Xperia Z2 (2014
- iPhone6 (2014
- Xperia Z5 compact(2015
- iPhone6s (2015
- honor8 (2016
- iPhone 7 (2016
- Galaxy NOTE8 (2017
- iPhone XS (2018
- Pixel4 (2019
- 楽天mini(2020
iPhoneの最大のメリットは、機械としての出来の良さとサポートです。例えば、Androidの多くが顔認証機能を備えますが、安定して動作しないことがたびたびあります。瞬間的なカメラ性能は良くても、発熱して起動できなくなったり保存に失敗したりといったことが起きます。iPhoneも初期のころは、突然電話が使えなくなったりといった問題がありましたが、少なくとも5あたりからは本当に安定してきました。
ハードウェア単体のスペックや機能では、Android端末は素晴らしいものがあります。特にファーウェイのhonor8は、この価格でこれだけのスペックを出してくるのか!と驚いたことを覚えています。一方で、iPhoneのスペックは地味ながら、完成度が高く、信頼性が高いというのが見立てです。
もう一つはサポートです。過去の端末の半分くらいは、何らか落下による画面割れや、不具合による動作不良などを経験しました。その時、適切な価格で修理できるかどうかが1つです。NOTE8の画面割れなど修理費用が7万円超といわれ、は? となったのを覚えています。一方で、iPhoneは国内シェアの高さも相まってリーゾナブル。各所に修理ショップもあります。
いざ何かがあったときの対応もiPhoneは素晴らしいです。AppleStoreというリアルな場があり、予約して持ち込めば即日対応してくれるのがまず最高です。これが出来ているAndroid端末はないでしょう。また、Appleのコールセンターは待たせることなくつながる(コロナ禍の今はちょっと不明です)し、代替品の提供のスピードが素晴らしいです。電話した翌日には代替品が届き、破損品を代わりに手渡せばこれで交換完了です。ちなみに、現在NFCに不具合を起こしたPixel4の交換中ですが、サポートへの連絡から10日たって、やっと代替品の手配が終わりました。数日で代替品が届き、故障品は別途返送するという流れです。ぼくは遭遇したことがありませんが、海外に行ったときに故障や不具合に対応してくれるのもiPhoneだけです。主要都市にはApple Storeがあり、そこで対応してくれます。知人が米国で故障したiPhoneを、現地で対応してもらっていて感心したのを覚えています。
もちろんサブ端末としてiPhoneとAndroidを両方持っているので、いざとなったらSIMを差し替えれば済む話ではあります。それでも、壊れた端末は何らか対処せざるを得ません。Xperia Z2など、香港から輸入したのですが、国内では修理を何処でも断られ、ソニーという国内メーカーはすごいなぁと関心したものです。Googleのサポートもだいぶよくなりましたが、Nexus6のときにまともに対応してもらえなかったのも良い思い出です。
こう思うと、よく壊しているなぁとも思いますが、おかげでサポートの重要性を実感しています。ちなみに、Apple以外でサポートが素晴らしいと関心したのはDysonです。あとは、20年ほど前の東芝ですが、さて今はどうか。直近10年でいえば、国産製品のサポート体制はまったくもってひどいものです。
そんなわけで、端末を使い捨てにするのならともかく、修理対応を考えるのなら、iPhoneは実は最も優れた選択肢です。中国製のAndroidの雲行きが怪しい昨今、最も安価なiPhoneを使い倒すというのも一つの見識じゃないかなと思っています。