FIer: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIerを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

紙幣の起源と信用創造 借金がお金を作り出す

お金の起源って考えたことがあるでしょうか? よくある説明は、最初は物々交換だったけど、それだと食料などは腐ってしまうし、欲しいもの同士の交換が難しいし、貯蔵もできないので、代わりに金などがトークンとして使われた、というものです。

 

では、そうしたトークンが紙幣に代わったのはどうしてでしょうか? 

あるとき誰かが思いついた?

これまたよくある説明は「あるとき誰かが思いついた」というものです。このお金の起源についての話は、『インベスターZ』の第1巻に描かれています*1

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 ところが、最近の学説だと、紙幣は金(ゴールド)の預かり証として始まったというのが通説になっています。Wikipediaでも、今やそのような説明ですね。これはどういうことでしょう。

インベスターZ(1)

インベスターZ(1)

  • 作者:三田紀房
  • 発売日: 2013/09/20
  • メディア: Kindle版
 

ゴールドスミス

当時、流通するマネーは金(ゴールド)だったそうです。しかし、多額の金を取り扱うことのリスクを嫌った保有者は、それをイギリス・ロンドン最大の金細工商であるゴールドスミスに預けました。そしてゴールドスミスは、預かり証を発行しました。

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脱・新自由主義宣言第一話「ゴールドスミスノート」|BUNKER TOKYO-しんぶん赤派

この預かり証を持って行けば、いつでも金を引き出せます。そのうち、この預かり証自体が支払いに使われるようになりました。これが、紙幣の始まりだというのです。

 

しかし話はこれで終わりません。預かり証が人から人に回っている間は、ゴールドスミスの金庫にある金(ゴールド)は引き出されることはありません。そこで、ゴールドスミスは、余っている金(ゴールド)自体を貸し出す事業を始めました。

 

つまり、最初は金と預かり証が対応した数量あったのに、金を別に貸し出してしまったために、金の額よりも発行した預かり証の額のほうが多くなったわけです。さらに、ゴールドスミスの信用が高まるにつれて、金を預かっていないのに、貸付として預かり証を発行するようになりました。これが、銀行の始まりであり、紙幣の始まりだといわれています。

借金と紙幣

ここで一つ面白いことに気づきます。金=マネーだったときには、マネーの量は金の量を超えることはありませんでした。ところが、金がないのに預り証を発行したときには、預り証の総額は金の額を超えます。預り証=紙幣と考えれば、これは紙幣の量が勝手に増加したというわけです。

 

銀行にあたるゴールドスミスが、実際には預かっていない預り証を発行した。これは、だれかが借金をしたことで、世の中に出回るお金が増加したということを意味します。

 

これが信用によってマネーが創造される、つまり信用創造です。英語だと、money creationと呼びます。信用が創造されるのではなく、信用によってマネーが創造されるということがわかります。

信用創造とは?

勝手にマネーを創造できたとはいえ、その裏側には金があるという構造は、1945年のブレトン・ウッズ協定で確認され、1オンス35USドルのレートが固定されて、長らく続きました。しかし、1971年にニクション・ショックが起こり、固定レートでの金とドルの交換が停止されます。これをもって、金を裏付けたとした世界のマネーの構造は終わり、金本位制は終わったとされています。

 

ゴールドスミスの例でいえば、裏側に本物の金はないのに、預り証だけが発行される状況です。この預り証を発行するのは各国の政府であり、政府の信用が、マネーを創造する世界に突入したわけです。

 

さて、政府を除くとこの「信用創造」を行えるのは「銀行だけ」とよく言われます。これはどういうことでしょうか。

 

銀行は、次のようなビジネスだとよくいわれます。

  1. 預金を預かって
  2. それを貸し出し
  3. 利益を得る

ところが、実は(1)の預金は必ずしも必須ではありません。銀行の貸し出しは、現金を貸し出すわけではなく、口座内の残高をプラスするだけだからです*2。バランスシートには、資産に「貸し出し」が計上され、負債に「預金」という形で貸し出したお金が計上されます。つまり、何もないところから「預金」が生み出されるわけです。

 

銀行は「預金したお金は返してもらえるはず」という信用に基づいて、新たなマネーである預金を作り出しているわけです。これが銀行が行う信用創造です*3

 

従来の金融の教科書では、先に預金があってそれを元に貸し出し(信用創造)が行われるといわれていました。ところが最近では、まず貸し出し(信用創造)があって、それによって預金が作り出される。そんなふうにいわれています。

すべてのマネーは借金である

銀行は手持ちの預金がなくても貸し出しを行える。そして貸し出しを行うことで、実質的にマネーを作り出せる(信用創造)ことが分かりました。

 

このことから1つ面白いことが分かります。すべてのマネーは、誰かの借金だということです。銀行においては、作り出されたマネーと同額の借金がバランスシートに計上されることで、これは分かります。でも、その上の、日銀や政府ではどうでしょうか?

 

日銀は自由に紙幣を刷ってマネーを作り出せるように思われていますが、バランスシートを見ると、作り出したマネーに対応する額が負債として計上されていることが分かります。

 

政府にお金を貸す。すると、政府は国債という債券を発行します。国債は民間銀行を経由して、日銀が買い取ります。日銀は自らの信用のもとにマネーを発行し、それがバランスシート上では民間銀行の「当座預金」となるわけです。

 

日銀のバランスシートを見ると、買い付けた国債が資産として計上され、それに(ほぼ)対応する負債として、「当座預金」と「銀行発行券=紙幣」が計上されているのがわかります。

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加納裕三 (Yuzo Kano) on Twitter: "毎年恒例(ただし2回目)、日本銀行のバランスシート視覚化‼️

政府はもちろん、国債という負債を抱えますね。つまり、マネーとは、国の借金の量と民間の借金の量を合わせたものだともいえるわけです。

GDPと国債発行

マネーとはさまざまなところで行われた借金の合計です。つまり、マネーが増えるということは借金が増えるということで、借金を減らすならマネーも減るということになります。

 

ではなぜマネーが増えることが重要なのでしょうか。経済の大きさを表す指標がGDPであることはよく知られています。経済対策とはこのGDPをどうやって安定的に増加させるかと同義だったりもします。

 

GDPとは何かといえば、物やサービスの生産や取引で付けられた付加価値の合計です。そして当然、取引の際にはマネーが使われます。そのため、GDPが増大するにはマネーの量も増大しなくてはいけません。式で表すと、次のようになります。

 

マネー x 流通速度 = 物価水準 x 実質GDP (貨幣数量方程式、アーヴィング・フィッシャーの交換方程式)

 

つまり、貨幣量に貨幣流通速度を掛けたものは、物価水準に生産量(実質GDP)をかけてものと等しいというわけです。このうち、「流通速度」は過去からほとんど変化が見られないため、物価水準(インフレ率)が固定されているならマネーの量がGDPを決めるということになります。

 

この式は異論もあり、また因果とは限らないので、マネーを増やせばGDPが上がるとは限らないという指摘もあります。しかし、実際にマネーの量とGDPは歩調を合わせており、この2つに関係があるのは間違いがないようです。

 

ここで、マネーの量とは借金の額だということを思い出すと、なるほど、誰かが借金をしなければ、GDPも増えないということが分かります。下記の会計検査院の資料によると、確かにGDPが増加するのと歩調を合わせて債務残高=国債発行額累計も増加していることが分かります。

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このような関係にあることから、国債残高が大きいこと自体は別におかしくもないし必要なこと。ただし、GDPに対する比率は重要だということが分かります。

 

よく、「公債残高(=国債発行総額)が990兆にものぼり、借金が積み上がっている」なんていいますが、GDPと歩調を合わせる限り、国の借金が増えるのは当然であり、これをゼロにすることは非現実的なだけでなく、あってはならないものだということが分かります。

 

問題はGDPに対して借金だけが増え続けていることにあって、だからこそ「GDP対比で266%は問題」だといわれるわけです。ぼくは必ずしもMMT論者ではありませんが、「国家の借金は悪」ではなく、「GDP以上に増えた借金は危険」だと捉えないと、経済全体を誤って捉えることになるのではないかと思っています。

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*1:ちなみに、「インベスターZ」の1巻は、現在Kindle Unlimitedで読めるんですね。

*2:いざ預金者が現金を引き出そうとしたら、必ずしもそのお金は銀行にないわけですが、これが起こることが取り付け騒ぎです。

*3:銀行以外には、預金は認められていません。無から貸し出すお金を作ることはできず、消費者金融などのノンバンクは、銀行からお金を借りて、それを又貸しすることで事業をおこなっていいます。ただし、昨今増えている資金移動業者は、移動のために「資金を預かる」ことが可能です。これと貸金業を組み合わせると、銀行でなくても信用創造が可能になってしまいます。そのため、昨今の資金決済法では、資金移動業者が信用創造できなよう、いろいろな制約を追加したりしています。