FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

今はどれだけお金ジャブジャブなのか マネーストックと株価

バイデン大統領に決まり、懸念されたように株価が下落することもなく、各資産は上昇傾向にあります。その背景にはいろいろとあるでしょうが、やはり気になるのは通貨の価値下落です。

 

コロナ禍で各国が大規模な金融緩和を行った結果、各所にお金がバラまかれました。そのお金はどこにいったかというと、一部はもちろん生活のために使われましたが、けっこうな金額が投資にまわったと言われています。これが、資産高を生み出しました。つまり、いったいどのくらいのお金が市場に供給されたかは、重要な点です。

マネタリーベースは異次元緩和で増加したものの

まずお金ジャブジャブの見方から。日銀が長期国債を買い入れることで直接世の中に供給するお金であるマネタリーベースがあります。これは黒田日銀総裁になってから異次元緩和で急増しました。それに歩みを合わせて日経平均も上場したのはご存知の通りです。

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ところが、日銀を含む金融部門全体が供給する通貨の総量であるマネーストック(マネーサプライ)は、マネタリーベースの伸びほどには増加しませんでした。マネーストックに「信用乗数」を掛けたのがマネーストックなので、日銀はお金を供給したものの、「信用乗数が低下して伸びなかった」と言われています。つまり、

「日銀は銀行に対し資金供給を増やしたものの、信用乗数の低下で銀行から企業への融資はそれほど増えなかった」ということになります。なお、信用乗数の低下は、日銀の供給資金が日銀当座預金に滞留したためと考えられます。

マネタリーベースとマネーストックの関係を再考する 

 これがコロナ前までの状況でした。

マネーストックはコロナで急上昇

ところが、コロナ禍で状況は一変します。マネタリーベースも伸びたものの、マネーストック(M3)もピョンと上昇しました。対前年伸び率で7-9%の急伸です。

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マネタリーベースは、紙幣+日銀当座預金の残高です。紙幣は増発すれば増えますし、各銀行が日銀に持っている当座預金の残高は、国債を買えば増加します。ところが、そのお金は世の中には出回りません。

 

そこから、銀行が企業などに貸出を行うことで、銀行預金の残高が増え、それがM3(マネーストック)となるわけです。

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  • M1 913兆円 ※ざっくり、現金と当座・普通預金
  • M2 1123兆円 ※ざっくり、銀行だけの(現金と当座・普通預金に定期預金)
  • M3 1465兆円 ※ざっくり、現金と当座・普通預金に定期預金

このうち、M3の内訳を見ると、次のようになっています。

  • 現金通貨 107兆 対前年 +5.7%
  • 預金通貨 806兆 対前年 +15.5%  ※当座、普通預金
  • 準通貨  523兆 対前年  ▲2.1%    ※定期預金
  • CD    28兆 対前年  ▲4.1%

今回のコロナで、現金はもちろん増加しましたが、大きく伸びたのが預金通貨。つまり、普通預金だということです。この理由は大きく2つ。

 

1つは、資金繰りを目的とした銀行貸出の増加です。これによって、企業の預金残高が増加しました。もう一つが予算規模13兆円といわれる特別定額給付金です。これが直接普通預金に入り、そのままM3を増加させました。

 

これまでのマネタリーベースの増加は、直接は市中に出回るお金であるマネーストックの増加につながりませんでした。とろろが、コロナを機に、マネーストックは一気に増大。そして、コロナが続く以上、金融当局はこれを引き締めることはしばらくは難しいと見られています。

 

金融市場では、政策当局が引き締めに動けず、「コロナバブル」とも言うべき状況が到来する可能性がある。

すでに資産価格は実体経済対比で大幅に上昇しているが、だからといって失業率が十分に低下する前に金融引き締めに転じたり、緊縮的な財政政策に舵を切ることは現実の世界では考えいくい。

日米の政策当局は資産バブルのリスクを認識しつつも、それに目をつぶり、景気刺激的な政策スタンスを維持するだろう。

コロナ株高の裏にあるお金ジャブジャブの正体

実はもっとすごい米国 

もちろん、こうした状況は日本だけではありません。米国では、さらに大きくマネーストックが増加しています。下記のグラフを見ると、米国のマネーストック(マネーサプライ)はM1が前年同月比で+33.5%、M2が23.1%と大きく伸びていることが分かります。日本は、そうはいっても10%弱でしたので、その緩和の強さが分かります。

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ピクテは、「結果として増えた通貨供給量の増加が、株式などのリスク資産価格の押し上げに寄与した可能性が考えられる」としていて、まさに金融緩和で増えたお金でみんなが株を買ったということが分かります。

 

ちなみに、日本のマネーストックも伸び続けていますが、一般に、マネーストックとGDPは比例関係にあると言われています。経済が成長すれば、それだけマネーが必要になるわけで、GDPの伸びと歩調を合わせてマネーが供給されるのは当たり前であり、大前提なわけです。

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通貨需要とマネーサプライ

ところがいま起こっていることは、マネーは大量に供給されたがGDPはコロナ禍でまだマイナス成長が予想されるという状況です。ここに、経済の根幹で大きな歪みが生じているのは間違いないでしょう。

 

そして、日本では1990年あたりから名目GDPがほぼ横ばいを続けてきました。一方でマネーストックは増加を続けています。一般には、経済の実情を超えたマネーの供給は資産バブルを招くと言われているのですが、そこまで資産価格も上昇していないというのがこれまででした。

 

コロナ禍でさらにマネーストックが上昇することで、経済(GDP)との乖離はさらに大きくなります。果たしてその先で起こるのは株価の暴騰なのか、はたまたインフレなのか。経済の状況は面白いものです。

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