FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

知的生産者にとっての包丁

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むかし後輩を指導するときに、「僕らにとってPCは、料理人にとっての包丁と同じだよ」とよく言ったものです。お仕着せの包丁で卓越した料理ができないのと同じように、知的生産者にとって自分に合った良いPCを使うことはたいへん重要です。

まだまだ残るスペック不足

いまでも職場で支給されるPCには、スペックが不十分なものが少なくありません。よくあるのが、「メモリが4GBしかない」というもの。少しでもPCを知っている人なら、4GBのメモリがいかに生産性を阻害するかは知っています。動画処理ならいざ知らず、文章作成やスプレッドシートにおいて、最もネックとなるのはメモリです。メモリ4GBというのは、スワップが頻繁に発生して、はっきりいって作業にならないラインになります。

 

なら、メモリなんて安いのだからと自分で増設すればいいかというと、意外とそうもいきません。セキュリティの関係で、増設が禁止されている場合もあるからです。自分で買ったPCを持ち込んで仕事をするのも、多くの企業で禁止されているでしょう。「セキュリティの問題」です。

経営陣の理解不足

なぜこういうことが起きるかといえば、経営陣がPCの重要性を理解していないことに尽きます。PCは投資だと考えておらず、コストだとしか理解していないのです。だから、「最もメジャーなWindowsPCで、一番安いヤツ」みたいな選択をしがちです。

 

下記は、DELLの法人向けノートPCで、一番頭に出てくる機種。価格は実に4万4800円。CPUのCeleronはまだいいとして、出ました、メモリ4GBです。

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こうしたモデルが選ばれる背景もなんとなく分かります。企業が最も気にするのは生産性ではなく、セキュリティとサポートだからです。下記のように、オンサイトの修理サービスが安く付けられるかが決め手の一つとなるわけです。

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そして、予算管理上、人件費は所与のものとして神聖視されて扱われ、PCのコストは削減可能な費用として扱われます。「業績が厳しいので、今年のPCにはカネはかけられない。リプレイスは1年先送りにしよう」。こんな会話が経営会議で行われるわけです。

 

確かに、全員が使うものなのでPCのコストインパクトは小さくありません。これまで5万円のPCを4年間使っていたら、200人の会社だと、年間コストは250万円。ところが、10万円のPCを2年で買い換えるようにすると、1000万円に跳ね上がります。経営陣がここを削りたくなる気持ちも分かります。

 

ただ、年間コストとして5万円使えば、年収を5万円上げるよりもよっぽど生産性があがり、さらには優秀な人を採用できる可能性も上がるということは、多くの経営陣の頭にはありません。もちろん、これをちゃんと理解して、高性能なPCを貸与することで優秀な人材を獲得しようという会社もあって、こういう会社はさすがです。

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フリーランスの工夫

そんなわけで、自分で機種を選定するフリーランスのほうが、企業の中の人よりもよいPCを使っているなんてことは日常茶飯事です。知的生産に携わるフリーランスは、PCが料理人にとっての包丁だということを良く理解しており、そこへの投資を怠らないからです。

 

今でこそPCの信頼性は上がり、データもクラウドに簡単にバックアップできるので、保守を気にする人は減りましたが、25年ほどまえ、ちょうどPentium IIIの頃は、「PCが壊れて仕事になりません」というのは、納期遅れの定番のエクスキューズでした。

 

そのため、出来るフリーランスは、故障リスクを最低限にするために様々な工夫を凝らしていたものです。ぼくが知っているあるプロが選んだのは東芝のDynabook。これは薄型軽量というのもありましたが、都内のサポートセンターに持ち込めばその場で修理してくれるのが特徴でした。企業向けPCでオンサイト保守を付けていない限り、PCが壊れたら修理センターに発送して見積もり、その後修理、返送というのが普通で、1週間以上は戻ってこないものだったのです。

 

さらにこの人は、全く同じ機種をもう1台、サブマシンとして購入するのを常としていました。もしメインマシンが壊れたら、HDDを取り出してサブマシンに入れ込めば、すぐに同じ環境で仕事を継続できるからです。海外出張のときに、全く同じPCを2台持っている理由を聞いたらそういうことで、これだけ個人でリスクに対処していたということです。

Macの魅力

そんな中、IT系スタートアップではAppleのMacbookを標準支給PCとするところが増えてきました。このメリットは何でしょうか?

  • 最低スペックのMacbook Airでも十分ななパフォーマンス
  • 価格は11万5280円
  • AppleCare+で3年の補償
  • 持ち込み修理も可能

そして大きいのは、職場内PC環境が統一できることです。企業内での情シスのサポートコストを大きく押し上げるのは、PCの環境が異なることによるトラブル。新しい機器やソフトウェアを導入するときも、WindowsとMacが混在するだけでサポートコストは跳ね上がります。だから、全部Windowsの同一メーカー機種、とか全部Macとかになりがちなわけです。

 

クラウド環境が一般化してきたことも大きいところです。歴史の長い企業では、自社用の業務ソフトを使っている場合が多く、これはWindows専用なんてことが普通です。さらにWebインタフェースのサービス化されていても、「IE専用」なんてものがゴロゴロしていて、こうなるとWindowsPCしか選択肢がなくなります。

 

スタートアップではこうした過去の負の遺産がないため、業務ソフトをすべてクラウドベースのSaaSにでき、だからこそMacbookを支給できるのだともいえます。

個人にとっての選択肢

ぼく自身を振り返ると、勤めてきた企業はいずれもPCが知的生産にとって大切だということを経営陣が理解しており、コストはかけられないまでも、自分でメモリを増やしたり、私有PCを持ち込んで仕事をすることを許容してきました。

 

もちろん当時は今ほどセキュリティが厳しくなく、中小企業的な雰囲気があったというのも理由でしょう。しかし、その後も支給PCは2年ごとにリプレース、メモリは自由に足せるという理解のある制度となっていました。

 

それでも支給PCのスペックが必ずしも足りているものではなく、ぼくはずっと自腹でPCを買ってそれを使って仕事をしてきました。投資額は小さなものではありません。それでも、快適にスピーディに作業できることに投資したことが、今につながっていると感じています。

 

現在でこそ、PCの信頼性は高くなり、故障に備える必要も薄れてきました。パフォーマンスも上がり、動画編集やゲームでも無い限り、最高スペックのものはいりません。それでも、何かあったらPCが停まると何もできなくなる——。そのため、自宅にはPCが5台あり、データはクラウドで同期し、仕事をする場所に応じて自由にPCを切り替えられるようにしています。

 

さらに、インターネット回線に不具合が起きても大丈夫なように、光回線、ドコモ回線、楽天モバイル回線の3つを用意。よほどのことが無い限り、通信環境も確保しています。

 

知的生産者は、人によってパフォーマンスの違いが甚だ差があることが知られています。例えば、プログラマでいえば、いまいちの人と優秀な人では10倍もの差があるといわれます。これはスキルの違いももちろんあるのですが、ベストの仕事ができる環境を整えられるかどうかも重要です。

 

優秀な演奏家は優れた楽器を求め、優秀な料理人は素晴らしい包丁を使います。あなたにとっての包丁は何でしょうか。

 

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