FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

死ぬまで資産が増え続けるのは日本だけ ライフサイクル仮説とは?

株クラで話題の一冊『DIE WITH ZERO』では、死ぬまでに資産を使い切ろう!と主張するわけですが、実際には多くの日本人が死ぬときまで多額の資産を抱えたままです。じゃあ、海外の各国はどうなの? というと、実は違いました。そんなデータから、今回は「ライフサイクル仮説」について考えてみます。

死ぬ直前まで資産が増え続ける日本人

まずはこのデータを見てみましょう。日本人は50歳よりも60歳、60歳よりも70歳以上と年をとるにつれて資産額が増えていきます。70歳以上で実に平均5960万円。中央値はもっと低いという話もありますが、ここで注目したいのは、退職したあとも資産が増え続けていることです。

一方でイギリスを見ると、退職する年齢である55〜65歳をピークに、そこからは資産額が減り続けます。

 

これってイギリスが変なんじゃないの? いえ、ドイツやスウェーデン、フランス、アメリカの例を見ても、多少の年齢のズレはあるにせよどの国でも死ぬ前のどこかで資産額のピークがきて、死ぬ直前には資産が減少しています。

なぜ日本人だけ資産が死ぬまで増え続けるのか?

これらのグラフは下記の『教養としての社会保障』からとったものです。著者は元厚生労働省の官僚で、日本の社会保障の現状と課題、そして未来への提言を述べています。

教養としての社会保障
 
 

著者は、「なぜ日本人だけが資産が死ぬまで増え続けるのか?」について次のように分析しています。

世界で唯一、日本人だけが死ぬまで貯蓄を増やし続けています。もちろん高齢者の貯蓄には遺産動機もありますし、中には資産運用で稼いでいる人もいるでしょうが、貯蓄をする理由を聞くと、「将来病気になったり介護が必要になったときのため」「年金だけでは暮らせない」といった社会保障への不安を挙げる回答が多い。大半は、爪に火を点すように生活を切り詰めて年金を貯めているとしか考えられません。

そうなのです。「老後2000万円問題」とか「年金は破綻する」説とか「人生100年時代」とか、いずれも老後不安を煽る内容ばかり。そうすると、客観的には十分な資産があるのに、それでも倹約を重ねて重ねて、引退後もさらに貯蓄を増やしてしまうのです。

 

これは高齢者本人にとっても幸せなことではないですし、経済にとっても悪影響があります。人口の3分の1を占める高齢者が十分な消費をしなければ内需が伸びるはずもありません。つまり、勤労世帯の給料も上がるはずがないのです。

 

そうしたことから、厚生労働省官僚だった著者は、日本の社会保障を守るためにも高齢者には支出を増やしてもらうべきで、そのためには年金制度を改革して将来不安を取り除かなくてはいけないというわけです。

ライフサイクル仮説

さて、日本の現状はバグっていますが、世界各国では引退時の資産が最大で、そこから徐々に資産が減っていきます。なぜこうなるかの理由としては「ライフサイクル仮説」というものがあります。

 

ライフサイクル仮説とは、生涯の所得生涯の消費が釣り合うように、人は消費行動を決定するという考え方です。つまり、一生涯で3億円を稼ぐのなら、一生涯で3億円を消費するということです。

これは当たり前と思うかもしれません。しかし、そうであるなら22歳〜65歳までの43年間にほぼ一生涯分の所得を稼いで、それを0〜85歳(平均寿命)の期間で消費することになります。当然、65歳まで貯蓄が積み上がり、その後はそれを取崩して老後を過ごす形です。

 

このライフサイクル仮説をもとにすると、退職時の貯蓄は死ぬまでの消費分だけあればいいことになります。その前提で計算すると、必要な貯蓄額が出てくるわけですが、日本では、

退職後の最適資産水準よりも、実際の資産額は1.4〜1.6倍になっている。

教養としての社会保障

 

というのです。年金保険は「保険」の名前の通り「長生き保険」です。決して積み立てた貯金を取り崩すようなものではありません。なので、想定以上に長生きしてしまっても、年金があれば大丈夫というのが本来あるべき姿です。年金が理念通りに働くなら、定年後、貯蓄が増えるなんてことはなくて、死に向かってどんどん減っていくはず。そうなっていないのが、日本の社会保障の病理だということです。

 

 

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