みんなの銀行がよろしくないキャンペーンを始めました。「ほかの金融機関から、みんなの銀行への振込で毎月最大100円プレゼント!」です。1回の被振込ごとに10円、月間最大で100円がもらえます。が、しかし、これは銀行の振込制度を歪める施策であり、そろそろ業界全体で考え直したほうがいいんじゃないかと思います。
ほかの銀行から振込を受けると1回10円プレゼント
みんなの銀行のキャンペーンをざっくり解説すると、次のようになります。
- 7月3日から
- 1000円以上の被振込1回につき10円プレゼント
- 月間上限100円
同じようなプログラムはいくつかあって、楽天銀行とかSBI新生銀行とか、それぞれのBaaSである第一生命楽天銀行とかT NEOBANKとかです。
なぜ被振込に対してキャンペーンを行うのか
ではなぜ楽天、新生銀行、今回のみんなの銀行などが、振込入金に対してキャンペーンを行うのでしょうか? そこには2つの理由が考えられます。
1つは入金によって預かり残高が増えるという理由です。銀行の体力、規模は預かり残高が目安となっており、みんなが振込を行って残高が増えれば狙い通り。そのため、みんなの銀行は「1000円以上」と下限を定めているのだと思われます。もちろん1万円以上とか、給与振込とかにすればさらに入金額が増えますが、その分できる人が限られる。バランスを取った結果が1000円だったのではないかと想像します。
2つ目は振込入金によって利益が生まれる点です。あまり知られていませんが、振込を行う仕向銀行と、振込を受ける被仕向銀行の間では、仕向銀行が被仕向銀行に料金を支払います。
振り込まれる銀行側のシステム費や人件費などの「被仕向対応コスト」が50円。ここには全銀システムの提供元であるNTTデータに支払う全銀システム経費も含まれ、この経費は6円程度と報じられている。この50円に振り込まれる銀行側の利益として12円が加わって合計で62円となる
つまり、今回の例でいえば、みんなの銀行は振込があるたびに62円を得られるわけです。別途6円の全銀システム経費は払わなければなりませんが、システム費は固定費ですから残り56円はほぼ利益。そこから10円をユーザーに還元しているということになります。
他方、仕向銀行はこの62円を支払っています。普通はここに仕向け銀行の利益を乗せた上で、ユーザーに「振込手数料」として請求するのですが、最近は顧客への特典として「振込手数料無料回数」を設けている銀行が増えているのはご存知の通り。手数料を無料にするということは、仕向銀行は都度62円を自社で負担していることになります。
「他行からの入金でプレンゼント」はそろそろ止めたほうがいい
ぼくはポイ活は否定しませんし、それどころかかなりのヘビーなポイ活利用者です。ただし、自分の別銀行から振込を行いポイントを得、再びお金を戻して循環させるとか、被振込によるポイントを狙った自動振込システムの設計などはちょっとやり過ぎだと思っています。
これは倫理的にどうとか、目的外がどうとかそういう話ではなく、仕向銀行にとって「振込手数料無料」を止める大きなインセンティブになるからです。要するに、ポイント狙いで1円とか1000円とかを無意味に振り込む人が増えると、振込手数料無料が割に合わなくなり、サービスを止めるところが出てくるだろうからです。
振込手数料無料は非常にありがたいサービスで、これにより少額送金も現実的に可能になっているし、資金移動が手軽になりました。でも、それを悪用し、ユーザーを巻き込んで利益化するような仕組みはあまり筋がいいとは思えないのです。Oliveが無料自動振込のサービスに制限をかけましたが、そういうことが起きてしまうからです*1。
そんなわけで、このタイミングで「他行からの入金でプレゼント」をスタートするみんなの銀行にはがっかりです。僅かな金額でも拾えるものは拾っていくスタンスですが、わずか100円で他銀行の振込手数料無料が使いにくくなるのは困る。銀行にも節度を持ったキャンペーンを期待したいと思っています。
*1:Oliveについては、ポイ活勢のアクティブさを考えずにこういうサービスを出したというダメさがあります。これこそ送金設定先の銀行に制限をかけて、「楽天銀行、SBI新生銀行を除く」とかやるべきでした