よく「年収1000万がサラリーマンの一つのマイルストーン」とかいいますよね。多いとまでは言わないけど、1000万円いけばまぁ勝ち組だとか。でも「東京じゃあ1000万じゃ並の暮らしもできない」なんて声も聞きます。では、社会通念的に”給与が高い”といわれるのはいくらからなのでしょうか?
- 国は給与が高いか低いかの基準を決めている
- 児童手当の所得制限は1200万円
- 住宅ローン控除の所得制限は2000−3000万円
- 儲かっている社長の給料は2000万円
- 大きく2つに分けるなら、800万円以下と800万円超
- 株の税率20%を超えるのは、年収1400〜1700万円
- 年収1000万円だとちょっと足りない?
国は給与が高いか低いかの基準を決めている
実は国は、その人の給与が低いのか高いのかの基準を決めています。というのも、この国のさまざまな制度には「所得制限」というのがかかっていて、これを上回る所得≒給与の人には補助金なんていらないでしょう=十分もらっているよね、という判断がされているからです。
書籍『Excelでできる 不動産投資「資産管理」のすべて』を上梓した玉川陽介氏は著書の中で次のように記しています。
税率だけを見れば600万円円程度が低税率ですが、各種給付金の支給条件等から考えると年間800万円以下では少なく1200万円以上ならば生活に十分、3000万円を超えると極めて高給という社会通念上の閾値設定があるといえます。
つまり、次のようなくくりです。
- 〜800万円:給与としては少ない (補助金などが必要)
- 〜1200万円:給与としては生活に十分
- 3000万円〜:極めて高給
児童手当の所得制限は1200万円
1200万円もらっていれば、生活に困らないだろうと国が考えていることは、子ども手当の所得制限が根拠です。1200万円を超えている人には、子どもがいるからといって補助金は不要だろうということです。
第133回 児童手当の見直し ―2022年10月から年収1200万円以上は廃止へ― | 日本生命保険相互会社
住宅ローン控除の所得制限は2000−3000万円
また住宅ローン控除の所得制限は、従来は3000万円でしたが2022年の改正で2000万円以下に引き下げられました。これも、国が2000万〜3000万円の人には住宅を買う際の補助金は不要だろう、逆にいうと2000〜3000万円以下の人には補助金を出すべきだ、と考えていることを示しています。
住宅ローン控除の所得制限について|日本クレアス税理士法人 医療事業部
2000万円というのは確定申告が必須となる年収でもあり、これも一つのしきい値だと思われます。
儲かっている社長の給料は2000万円
「十分に高給」とみなすのは2000万〜3000万円レベルでしたが、これは別の観点からも裏付けられます。会社社長の場合は自分の給料を自分で決めますが、儲かっている会社の場合、最適な給与水準は2000万円なのです。
オーナー企業 社長の年収は、最大でも2000万円が多い。上限ではないが、上限ぽい数字、それが年収2000万円のラインだ。
年収1800万から2000万円付近が、1人社長が法人・個人合わせてトータル税額で損をしない「役員報酬金額の上限ライン」だ。
個人の所得は累進課税だし社会保険料も累進的にアップします。オーナー社長の場合、給与額と会社に残すのは同じことを意味しますが、その比率によって税率は変わります。その最適解が2000万円だということです。
国の視点からいうと、「年収2000万円を超えると会社にかける税金よりも税率上げますよ」という意味になって、やっぱり2000万円は一つの「十分に高給」という社会的通念があるといえそうです。
大きく2つに分けるなら、800万円以下と800万円超
さらに「令和2年分 民間給与実態統計調査 第21表 給与階級別の給与所得者数、給与総額および税額」では、給与額800万円をしきい値として2群に分けていることから、国は800万円を給与水準の一つの基準として考えているのではないかということも見て取れます。
この表はけっこう面白くて、
- 800万円以下の人は全体の約90%。収めている税金は全体の35%
- 800万円超の人は、全体の約10%。収めている税金は全体の65%
となっています。そして細かく見ると、1000〜1500万円の層が全体の約19%の税を支払っていて、おそらくここが給与所得税のボリュームゾーンなんだろうなと考えられます。
株の税率20%を超えるのは、年収1400〜1700万円
よく「株の税率は所得税に比べて低い」なんて言われますが、これを言っているのは「給与としては生活に十分」な1200万円超の給与をもらっている人だと思ったほうがいいでしょう。というのも、所得税と住民税を合わせた実効税率が20%を超えるのは年収1400〜1700万円が境だからです*1。
https://www.fsa.go.jp/singi/zeiseichousa/siryou/20100804/05.pdf
株式の税率を基準に考えても、国が考えている「十分な給与」とは1400万円前後だといえるでしょう。
年収1000万円だとちょっと足りない?
そんなわけで、給与をもらっている人の中で5.4%しかいない”年収1000万円超”の人ではありますが、これじゃあ豊かな生活をするにはちょっと足りないなぁと感じるのは、肌感覚どおりなのでしょう。
国は年収1200万円くらいまでは、いろいろ補助金を出さないといけないと考えているようなのですから。
そして投資家においては、少なくとも年収1400万円を高い低いの目安にするのがいいかもしれません。だって1400万円以下は、株式の税率よりも低い税率なんですから。
*1:金額に幅があるのは扶養控除の違い