FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

NISAのリターン押し上げ効果はどのくらい? 計算してみた 新NISAをハックする(3)

新NISAの最大で唯一のメリットは非課税であることです。でも非課税であることは、どのくらいリターンを改善してくれるのでしょうか? 計算してみました。

NISAは利益を改善するのは確かだが

NISAは利益に対する税金をなしにします。利益が100あったら、課税口座なら80に減ってしまうところ、NISAなら100丸々得られる。つまり20.315%の利益改善効果があり、別の言い方をすれば、取崩時の利益が1.25倍(正確には1.2549倍)になるわけです。

 

ここまでは計算するまでもありません。非課税であることを別の言い方で述べただけになります。確かに利益は改善します。ではこれをリターン改善効果で考えると、どうなるでしょうか?

5%の投資と10%の投資をNISAで運用する

思考実験として、5%のリターンが得られる投資先と10%のリターンが得られる投資先を比較しましょう。元本が100のとき、5%商品は1年で5%増えますが税金で20.315%取られてしまいリターンは約4%。一方NISAなら無税なので5%です。10%商品は1年で10%増えますが税金を引かれるとリターンは約8%、一方NISAなら10%です。

課税口座に比べてNISAのリターンは125%=1.25倍になりますが、何パーセントポイントリターンが改善したかというと、元の運用リターンが大きいほど改善幅は大きくなります。まぁ当たり前です。リターンが1.25倍になるのでリターンにレバレッジが効き、もともと高リターンな商品ほどよりリターンが改善するわけです。

複数年運用するとNISAのリターン改善効果は減少する

ちょっと面白いのはここからです。ではこの運用を1年だけでなく5年、10年と長期間続けてみましょう。資産は最初に定めたリターンで複利で増加することとします。ただし課税口座でも無分配投資信託のように内部で再投資がなされ、課税されるのは最後に売却した時点として計算します。

 

当然ですが、運用している最中には課税口座とNISA口座で差はありません。どちらも税払いは発生せず、売却したタイミングで初めて税金が関係してくるからです。最後の最後で20.315%を利益から取られるか(課税口座)、取られないか(NISA)、それだけの違いです。

 

では運用後、税引き後の利益から逆算して平均運用リターンがどうだったのかを計算してみましょう。下記は、10%複利リターンが出る商品を、課税口座とNISA口座で運用した場合の年平均リターンの違いです。

面白くありませんか? 課税口座とNISA口座は、初年度こそリターンに2.03%ポイントの違いがあり、1.25倍のリターン差がありました。ところが運用を重ねていくと次第にリターンの差が小さくなり、30年目には差は0.78%ポイントまで縮小、倍率も1.08倍まで小さくなるのです。

 

つまり30年運用するなら、NISAで運用しても特定口座よりリターンは平均0.78%向上するだけなのです。

 

まぁもちろんこれは複利運用のマジックではあります。投資で大事なのはリターンではなく、得られる絶対額だという考え方もあるでしょう。そういう意味では、運用年数が長くなるほど利益額も大きくなり、そして得られる利益はNISA口座は常に1.25倍です。絶対額でいえば、NISA口座のほうが大きな利益額を得られることは間違いないのです。

 

ただ運用リターンは毎年複利で効いてきますが、節税となるのは最後の1回だけ。つまりNISAであることの複利効果はありません。これがNISAで長期間運用すると、年平均リターンへの改善効果が減少する理由です。

リターンの大小で違いはあるか?

年平均リターンで見た場合、NISAを使うことのリターン改善効果は長期運用するほど小さくなることが分かりました。では運用商品の期待リターンが変わった場合はどうなるでしょうか?

 

横軸に運用年数、縦軸に年平均リターンが何%ポイント改善するかを取ったチャートです。この通り、期待リターンが高い商品ほど、リターン改善効果も大きいことが分かります。まぁそれは当たり前ですね。NISAはリターンを1.25倍するものなので。ところが、年数が経つとリターン改善効果は、高リターン商品ほど急速に小さくなります。

別の観点でも見てみましょう。1年だけで見た場合、NISAはリターンを約1.25倍にします。つまり課税口座のリターンとNISAのリターンの倍率は1.25倍だということです。ところが年数が経つにつれて、この倍率も低下していきます。

 

もちろん平均利回りが高いほど倍率の低下も著しく、12%リターンの商品などは、当初1.255倍で始まりますが30年後にはわずか1.073倍まで減ってしまうのです。

このことから何が言えるのか

さていろいろと計算してみましたが、分かったことは次のようになります。

  • NISAは利益額を1.25倍にする
  • 期待リターンが大きい商品ほどNISAによる平均リターン押し上げ効果は大きい
  • 年平均リターンへの影響は、当初は大きいが運用年数とともに低下する
  • 低下具合は期待リターンが大きいほど顕著

これを元に、NISAの活用をどう考えたらいいでしょうか。まずせっかくNISAを使うなら期待利益額が大きい商品に投資すべきです。これは分かりやすいですね。だって利益額を1.25倍にするのだから、期待利益額が小さいと増え方も小さくなるからです。

 

2つ目は、NISAの非課税効果は大きいが、年平均リターンへの影響は長期投資になるとさほど大きくない。低リターンの商品をNISAで運用するよりも、高リターン商品を課税口座で運用するほうが高い利益を得られるということです。

 

例えば、債券主体の商品(期待幾何平均リターン3%)をNISAで運用しても、リターン上乗せ効果は10年で0.55%、20年で0.49%、30年で0.44%ポイントでしかありません。それよりも株式主体の商品(期待幾何平均リターン5%)を課税口座で運用したほうが、最終的な利益は高いということです。

 

最後に、だいたい株式に相当する、期待リターン(幾何平均)6%の商品について、NISAで運用すると課税口座に比べて年平均リターンがどのくらい上昇するかを示したチャートです。長期運用すると、だいたい0.5〜0.8%ポイントくらいはリターンが改善する効果がある感じですね。

 

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