FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

自由な髪型を企業が求めないわけ

ヘアケア製品のブランド、パンテーンが展開している広告が話題です。壁面広告につい見とれてしまい、「自由な髪型で内定式に出席したら、内定取り消しになりますか?」というメッセージに考え込んでしまいました。

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企業は、より優秀な若者を新卒採用するために、昔より条件をゆるくしてきています。 「個性のある学生求む」「カジュアルな服装でお越しください」等々。でもこれは、2つの意味があります。

 

1つは、本当にものすごく優秀ならば髪型や服装などには本当にこだわりませんという意味です。これは一部の企業を除けば確かに真実です。でも、ほかと採用基準を変えてまで取りたいほど優秀な学生というのは、まずいません。というか、そんな人は就職稼働なんてしてません。そして、多少優秀というレベルならこの枠には入らないんです。

 

2つめは、「採用基準を多少ゆるくしたけど、最低限の常識はわきまえてね」という意味です。ほとんどの企業はこれです。個性がどうとかは、この「最低限の常識」の上でのゆらぎなんです。

 

そして「最低限の常識」というのは、時代や業種、職種によって変わってきますが、実際に働くときにわざわざ上司が説明しなくても自ら空気を読んでもらうことを期待しています。例えば、営業職で入社したのに「ぼくはスーツは着たくないです」と言われても困るわけです。そして「なぜスーツを着なくてはいけないか」を説明もしたくありません。スーツを着させるのに説明が必要な人は、ほかの仕事でもいちいち説明しなければ、いわれたとおりに動かない可能性が高いからです。

 

企業に新卒として入るというのは、その会社が築いてきたビジネスモデルに沿ってオペレーションをうまく回す要員になるのが基本です。ビジネスモデルが、清潔感のある服装と髪型で顧客に安心感を与え信頼されることに立脚しているなら、自由な髪型の人はそぐわないのです。昔よりはだいぶカジュアルになりましたが、銀行員なんかはそんな仕事ですね。

 

世の中には、髪型を管理しなくてはいけない仕事もあるということです。管理する以上、統一されていたほうがコストが安く済む。それだけのことです。何がコアコンピタンスなのかは事業によって違うので、管理しなくてはいけないポイントも変わってきます。

 

そして、これは顧客がどう感じるかがポイントなので、最初から茶色なのか染めて茶色なのかは関係ないのです。ファッションで入れたタトゥーでも、ヤクザが入れている入れ墨でも、銭湯では隠してくださいというのと同じです。

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パンテーンの広告は近づくと就活生の本音というコメントが大量に書き込まれています。「ここに量産型のロボットみたいで」とありますが、ここに大きな齟齬があります。おおっぴらにいう企業は決してありませんが、企業はプロトタイプ型や専用機ではなく、量産型を求めているのです。いや、とてつもなく優秀ならカスタム機があってもいいのですが、カスタム機だけではオペレーションが回りません。研修という育成制度も、量産型なら統一手法でいけます。病欠や退職などがあっても量産型なら替えがききますが、カスタム機ではそうはいきません。髪型で表すような個性なんて別にもとめていないのです。

 

いやはや。いやな世界ですね。

 

もし自分が量産型ではなくて、単機で敵と戦える能力があると思うなら起業すればいいでしょう。実は指揮官型だと自認しているなら、アンテナの角を隠して量産型に偽装してしばらく過ごせば、きっと1〜2年で管理職として抜擢されるでしょう。

 

結局のところ、企業は新卒に「オペレーションをそつなくこなす」即戦力を求めています。その上で、将来ビジネスモデルをチューニングする経営幹部や、部下を束ねる管理職になる適性があればマルとします。

 

パンテーンの広告に書き込まれたコメントに、企業目線やビジネス目線のものが全くなかったのは意図的なのでしょうか。