FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

セミリタイアに向いたライフプランシミュレータがない

老後2000万円問題からあと、ライフプラン作成が人気のようです。各社がいろいろなものを出しているのですが、セミリタイアに向いたものが全くないことが不満です。

どのライフプランシミュレーターも似たりよったり

ライフプランシミュレーターを見つけるたびに試してみているのですが、どれも本当に似たりよったりです。年収や退職年齢、子供数などを入れて、生活費を入れると、必要資金やそのための必要積立額を出してくれます。

 

どうも、ほとんどのシミュレーターは下記の点に注力して、差別化を図ろうとしているようです。

  • 簡単に入力できるUI
  • ビジュアルに見せて分かりやすいUI

コレ自体は悪いことではないのですが、正直、各社大した違いはありません。そのくせ、セミリタイア志向の人には決定的に向いていません。

セミリタイアのためのライフプランに必要なこと

何が問題かというと、まず退職年齢が60歳以上を基本としていることです。まぁ60歳で退職してしまうと老後資金が足りないから、もっと長く働きましょうということが盛んに言われるくらいなので、気持ちは分かります。ただ、これではセミリタイアのシミュレーションには使いません。

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そして、松井証券のシミュレーターのように、退職年齢を40歳から選べるものもありますが、今度は逆に資産額の上限が低すぎるのです。例えば松井の場合、最大でも5000万円しか選べません。普通に考えても、40歳で退職するのに5000万円しか貯蓄がなければ老後資金が足りないのは分かりきっています。年収は手動入力なので、年収3000万円とかあればなんとかなるのかもしれませんが、全体のコンセプトがちぐはぐです。

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シミュレーターというなら、何かを調整したいが

シミュレーターというからには、試算した上で、理想通りでなければ何かのパラメータを調整して、自分の生き方をコントロールすることになります。老後資金構築に向けてコントロールできるパラメータは、実は限られています。

 

コントロールできないものは、下記の通りですね。

  • 年収 老後資金が足りないからといって年収をアップして試算するのは無理があります
  • 寿命 これは自分で選択できません。自殺でもする計画でない限り

ではコントロールできるものは何かというと、次になります。

  • 退職年齢 これが大きなパラメータです
  • 生活費 こちらも重要です
  • 積立額 一見重要に見えますが、ほぼ確定している年収から生活費を引いたものなので、実質生活費とイコールです
  • 運用利回り ポートフォリオの組み方で想定運用利回りは大きく変わるのですが、これをいじれるシミュレーターはほとんどありません

セミリタイアを目指す場合、退職年齢はある程度固定です。老後資金が足りないからといってリタイア年齢をどんどん遅くしていったら、それはセミリタイアになりません。生活費は最も重要なパラメータです。ここが最もコントロールできるものになります。

 

運用利回りはコントロール可能ですが、当然ながら想定リターンを上げるということはリスクも上がることになります。リスクは損失可能性ではなく、ブレの大きさですので、ある程度の長期運用を想定することで、リスクの影響を低減して、年平均リターンを平準化することができます。

 

ところが、セミリタイアの場合、資産を取り崩していいくので、あまりリスクが大きいと、資産が大きく減ったタイミングで取り崩すという悪い選択をしなくてはならなくなる場合があります。つまり、取り崩しに入る頃には、リターンも抑えてリスクも抑えることが重要になるはずです。それを加味して、想定リスク・リターンをコントロールできるポートフォリオを構築しなければなりません。

 

本当はそれをシミュレーションして提示してくれるライフプランシミュレータがあればいいのですが、まぁまだありませんね。もしあったら、どなたかぜひ教えてください。

ライフプラン設計に欠けているもの

実際のライフプランシミュレーターを開発している人に話を聞いたことがあります。そのシミュレーターでは、「入力しやすく分かりやすいUI」を目指しているということなのですが、その結果、生活費は「まぁざっくり」、年金額は「厚生労働省のモデルケース」という数字になってしまっています。

 

これはいただけません。何しろ、セミリタイア志望者も含めて、もっともコントロールできるのは生活費だからです。そして老後の生活を支えるのは年金であり、これをどう見るかが最も重要だからです。

 

しかし、生活費をしっかり入力させられないのも分かります。家計簿を付けている人なんてほとんどいないからです。ただ逆に、セミリタイア志向のある人は、家計簿は必須です。正確な家計状況の把握なしにライフプランを作れません。特にセミリタイアを目指す場合は、これが非常に重要になります。

年金はいくらもらえるのか

もう一つ、年金のほうはどうでしょう。

 

まず国民年金はパラメータは加入期間です。20歳から60歳までの40年間支払うと、年額約78万円になります。ここからは年収などでの変化はありません。

 

厚生年金は、加入期間と年収で変わります。マックスの54年間加入(中学卒業から70歳まで)で、給料もマックス(月額62万)、賞与もマックス(150万円✕年3回)をもらい続けたとして、年額300万円です。一方で、22歳から65歳まで働いて厚生年金に加入し、年収が平均の511万円の場合、厚生年金は年額120万円程度になります。

 

もっとシンプルな計算式もあります。

  • 年数 × 年収 × 0.005481

というものです。22歳から働き始め45歳でのアーリーリタイアを目指すとすれば年数は23年です。これは60歳まで働く場合の60%の年数です。この場合、定年まで働くのと同じ年金をもらうには、平均年収が1.7倍必要ということなります。横にリタイア年齢、縦に平均年収を取ると、下記のような表になります。

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これに国民年金の78万円を足したものが65歳からもらえる年金年額ということになります。当然ですが、平均年収が高いほど年金額は増えますし、加入年数が長いほど増えます。これを計算せずに、老後の生活費は想定できませんし、つまり必要な老後資金も計算できません。

 

もらえる年金は減っていく可能性がありますし、マクロ経済スライドという、名前はかっこいいが実質は年金額を減額する制度がありますので、これよりも多くなることはなさそうです。でも、どのくらいもらえるのかは、厚生労働省モデルケースでは全くダメで、個人ごとに大きく違うわけです。

理想のセミリタイアシミュレーター

 では理想のシミュレーターはどんなものになるでしょうか。出力したいのは、現在の資産規模で何歳まで生きられるかの年齢です。または、100歳まで生きる前提で、リタイア時にどれだけの資産があればいいかを表示させたいです。

 

それに向かって変動させられるパラメータは、下記になるでしょう。

  • リタイア年齢
  • 生活費
  • 運用利回り

前提とするのは下記です。

  • 22歳または+数歳から厚生年金を払い続けている
  • 年金受領は繰り下げして70歳から(+40%になる)
  • リタイア後も60歳まで国民年金は払い続ける
  • 収入から生活費を引いた残りが貯蓄額

運用利回りを変動できるようにすることには異論もあるかもしれません。一般的に、利回りをターゲットにして運用すると失敗すると言われるからです。ここでは、利回りを1〜6%の間で変動可能にします。考え方としては、株式を中心とした最適なポートフォリオを組み、現金の比率を調整することで利回りをコントロールするというものです。

 

分離定理によると、人によって最適なリスクは違っても、最適な運用方法は変わりません。そして、現金(同等物)の比率を変えることで、利回りとリスクを変更することができます。最適なポートフォリオが想定利回り6%ならば、半分を現金にすると、リスクも半分、利回りも半分になります。このように、6%程度をマックスとして、現金比率を変えることで想定利回りをコントロールできます。

 

なんだかんだいって、年金は老後生活の基礎になります。特に、長生きすることが最大のリスクと言われる昨今では、終身でもらえる年金は重要です。そして、損得を抜きにして、長生きリスクに備えるという観点では、最大まで繰り下げ受給を選び、70歳以降の受給額を増やすのが得策になります。

 

この、「リタイア年齢」「生活費」「想定利回り」をコントロールすることで、適切なセミリタイアプランが作成できるでしょう。

 

ちなみに固定的に入力するのは下記の値です。

  • 現在の年齢
  • 現在の年収(会社員前提)
  • 現在の資産

細かいことは気にしない

シミュレータは、精緻にしようと思えばいくらでも精緻にできます。ただし、下記の点は敢えて盛り込まないくらいでいいのではないかと思っています。

  • 税金関係(運用益に対する約20%の税金を除く)
  • 年金の減額
  • 老後の生活費減少
  • 教育費や自動車の買い替え、旅行費用などのイベントもの

税金関係は実務上の理由です。住民税や社保などについては地域によっても細かなところが変わります。20年、30年スパンでは税制も変わるでしょう。消費税だって10%が続くとは思えません。

 

年金の減額もそうです。マクロ経済スライドという、名前はかっこいいが要はインフレになっても年金をアップさせませんという制度もあります。どのくらい減るかは想定できません。

 

税金は上がり、年金は下がる一方で、老後の生活費が減少することだけを織り込むのは危険です。逆に、現在と同じだけの生活費がかかるという想定をしておけば、かなり保守的になります。

 

イベントものの費用は、FPに相談すると細かく聞かれることですね。ただこれも盛り込む必要はないと思います。どうするかというと、将来想定されるイベント分の費用を、現在の資産額から差っ引いておくのです。教育費や自動車代などで3000万円くらいかかると見込まれるなら、現在の資産額から予めそれを引いておきます。その上で、現在の資産を入力するわけです。なぜならこれらのイベント費用はほぼ確実にかかるもののわけで、その原資を投資によって増やそうなどと考えるのは大きなリスクだからです。そしてこの部分も保守性という意味では大事です。

シミュレータの実行イメージ

まず仮に50歳のリタイアを想定して、現在の生活費を入れ、3%程度の想定利回りを入力します。現在の資産額を入れて、100歳までOKと出たり、逆に100歳まで生きるために必要な資産額を現状上回っていればOKです。

 

100歳まで保たなかったり、また100歳まで生きるために必要な資産額に達していなかった場合は、パラメータを変動させます。例えばリタイア年齢を遅くしたり、生活費を減らしたり、運用利回りをアップさせてみるわけです。

 

目標はセミリタイアなので、リタイア年齢を遅くしすぎるのは本末転倒です。生活費は減らすにも限度があります。となると、運用利回りをアップさせたい誘惑に駆られるわけですが、これを全部株に投じて6%を狙うとなると、今度はボラティリティの上昇により意図せぬ資産減の可能性が出てきます。

 

そのため、シミュレータとしては期待平均利回りだけでなく、期待通りに運用が行える可能性を、頻度という形で表示したいところです。例えば100回試算して、50回は期待通りにいくなら50%。90回は期待どおりにいくなら90%という具合です。全部を株に投じると、期待利回り的にはセミリタイアが達成できそうでも、うまくいく可能性が40%とかになる場合が出てくると思います。すべて現金なら可能性は100%になるので、この間のどのあたりに設定するかを考えることができます。

 

さてさて。仕様はできました。自分で作ってみてもいいのですが、だれかIT知識のある方が作ってくれないかな? なんて思ったりもします。

 

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