優待クロスを初めてほぼ1年になります。優待クロスのやり方について解説した記事は、いっぱいありますが、それらを見ても不安に思ったり、これでいいのだろうか? と思うことがたびたびありました。そんなわけで、今回は、初心者だった自分に向けて、「優待クロスはこうやればいいんだよ」という、初心者向け記事を書いてみようと思います。
- 優待クロスのメリット
- 空売りの方法
- 全体の流れを確認
- 注文の出し方
- 権利落ち日のアクション
- 手数料を下げるためのさまざまな工夫:現物の買い方
- 手数料削減:信用売りの指値注文
- 上級技:株式移管
- 場中で在庫が出てきた時
- そういえば証券会社は?
- よい優待クロスライフを
優待クロスのメリット
簡単に優待クロスのメリットから。日本の上場企業の多くは株主優待を発行していて、中にはとても魅力的なものがあります。株価1618円、500株で80万9000円ながら、年間4万円のお食事券をもらえるコロワイドなどですね。
こうした優待を取得するには「権利付き最終日」に株式を持っている必要があります。ところが、株価というのは権利が付いた翌日に、おうおうにして下落するものです。優待はもらったももの、株価が優待価値以上に下落して損失になった。そんなこともよくあります。
そこで、この下落を相殺するために、信用売りを行い、クロスを建てるのが優待クロスです。例えば、A社の株を買うとともに、同額でA社の株を空売りします。株価が下落しても、空売り側は利益が出るので、2つが相殺されて損得なし。株価変動の影響は受けないというわけです。
空売りの方法
株を買うのは簡単です。問題は空売りのほうです。これ、最初はすごくドキドキします。信用取引は「ダメ、絶対」なんて言われる中で、さらに危険な香りのする空売りですから。
空売りをするには、誰かから株を借りてきてそれを売るのですが、大きく分けて2つの方法があります。1つは、「制度信用」といって日証金を経由して機関投資家から借りるものです。デメリットは1つだけあって、あまりに借りたい人が多いと「逆日歩」といわれる追加のお金を払わなければいけないということ。そのため一般的に上級技と言われています。うまく優待をゲットしても、その価値を上回る逆日歩を払うことになったなんてこともよくあるからです。
初心者は「一般信用」を基本的に使います。これは証券会社がどこからか集めてきた株を借りるもので、条件は証券会社によってまちまち。貸株料も返済期限もいろいろです。唯一共通しているのは、逆日歩が発生しないということ。ただし、証券会社が持っている一般信用で貸し出せる株は数に限りがあるので、終わってしまったら、もう空売りすることはできません。
SNSなどで「在庫」などと呼ばれているのがこれです。
全体の流れを確認
方針としては、一般信用の空売りを使い、現物と同時に持つクロスにすることになります。それでは、始まりから終わりまでを見ていきましょう。
- 前日の夕方(15時以降)から翌日早朝にかけて、空売り注文と現物買い注文を同時に出す
- 権利落ち日になったら、現物を空売りの返済に充てる「現渡」を行う
これだけです。10月末権利確定の銘柄だったら、この日を株式を持った状態で終えなくてはなりません。株式というのは売買したらすぐに自分のものになるわけではなく、2営業日後に受け渡されます。
つまり、10月31日権利確定銘柄だったら、この日は土曜日なので、前日の30日を株式を持って終える必要があります。30日に株式を持っているには、その2営業日前の28日に株を約定させている必要があります(T+2)。この28日を「権利確定日」といいます。また、29日になったら、これの受渡しは11月2日ですから、もう売ってもかまいません。この日を権利落ち日といいます。
各銘柄について、いつが権利確定日で、いつが権利落ち日なのかは「優待クロス カレンダー」などで検索すると出てくるので、チェックしてみるといいでしょう。
注文の出し方
さて、注文の出し方です。これは翌日の寄付きで「成行」になるように注文します。なぜそうするかというと、寄付きの成行きならば、売りも買いも同じ値段で約定するからです。
具体的な例を、日興証券の注文画面で。「一般信用」を選び、「成行」を選びます。失効条件は「寄付」にしてもいいですが、夜間に注文すれば「なし」でも「寄付」と同じ扱いになります。
同時に、買いのほうも成行で注文を入れておきます。これで朝9時を迎えれば、めでたく売りと買いが同値で約定しているというわけです。簡単ですね。
権利落ち日のアクション
権利落ち日になったら、もう株を保有している必要はないので、クロスを解消します。信用売りの「建玉」から、「現渡」を選びます。具体的な例を日興証券の画面にて。
これで、持っている現物株と、信用売のポジションが相殺されて、どちらもなくなります。
手数料を下げるためのさまざまな工夫:現物の買い方
さて、優待クロスは薄利の投資です。そのため、手数料はできるだけ下げる必要があります。最初に優待クロスにかかるコストをまとめておきます。下記のそれぞれのコストは、証券会社によって違うので、確認しておく必要があります。
- 現物購入手数料
- 一般信用売り手数料
- 信用売 貸株料(1日ごとに発生)
- 信用売 事務手数料(30日ごとに発生する証券会社あり)
- 現渡手数料(カブコム以外は基本無料)
まず現物の購入ですが、日興証券の場合、信用買いを行い、それを「現引き」します。これによって、現物買いの手数料がかかりません。日興証券は信用取引の手数料は無料なので、1日分の信用金利がかかるだけです。ちなみに「現引き」も手数料無料です。買いは一般信用よりも金利が安い制度信用を使います。買いには逆日歩支払いは必要なく、逆日歩がかかるような状況ならば逆に受け取れるのでナイスです。
楽天証券の場合、「いちにち信用」で信用買いして現引きです。こちらも金利しかかかりませんが、さらに取引金額が100万円以上ならば金利もかかりません。また、楽天証券で「いちにち定額」コースを使えば、1日100万円までは手数料がかかりません。
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手数料削減:信用売りの指値注文
日興証券の場合、信用売の「指値」を使うことでさらにコストを削減できます。日興証券は指値注文の期限を「今週中」とすることができるので、目一杯高い金額で指値注文をすることで、信用売りの権利を確保したまま金曜日まで約定せずに待つことができます。
木曜の夜になったら、指値を成行に変えて、金曜の朝に約定するようにします。同時に買いの注文を入れるのも忘れてはいけません。
この方法は、最高で1週間分の貸株料を節約できる定番の方法ですが、いくつか落とし穴もあります。途中で株価が急上昇してしまい、意図せずして約定してしまうというのが一例です。
上級技:株式移管
さらにコストを抑えるために、信用売を建てたのとは違う証券会社で現物株を買い、その株を移管するという方法もあります。楽天証券で現物をローコストで買い、それを移管するというのが定番ですね。
また、日興証券には貸株サービスがないので、楽天証券で現物を買って貸株に出し、最後ギリギリのタイミングで日興証券に移管するという手もあります。わずかですが、収益を増やせます。
いずれにせよ、移管には数営業日かかることを忘れてはいけませんし、権利付き日近辺には楽天証券の移管停止日があります。このあたりは注意です。
場中で在庫が出てきた時
優待クロスを一般信用でやる場合、いつどの証券会社に信用売りの在庫が出ているかの把握が最重要です。早くから押さえれば貸株料がかさむし、遅れれば取り逃してしまいます。
信用売在庫は、誰かが使ってしまえばなくなりますが、注文を取り消したり、証券会社が在庫を補充すると増えることもあります。そのタイミングはまちまちで一定のルールはないようです。
もし場中で在庫が出てきた場合はどうしたらいいでしょうか。場中では成行にすると不本意な価格で約定してしまいます。この場合、「引け」の成行きで注文を入れれば、同じように買いも引け成りで入れておくことで、同値での約定が可能です。もちろん、昼休み中ならば、「寄付」「成行」でも問題ありません。
そういえば証券会社は?
一般信用の在庫は証券会社によって異なります。そのため在庫の抱負な証券会社を使うとともに、コストについても気にしなくてはなりません。下記は優待クロスでメジャーな証券会社と、僕の感触です。
- 日興証券 在庫大量 手数料無料 貸株料安め ※優待クロスでは必須
- 楽天証券 在庫多め 手数料ほぼ無料 貸株料安い ※優待クロスでは必須
- GMOクリック 在庫普通 手数料普通 レアな銘柄があることも
- マネックス証券 在庫少ない 手数料高い レアな銘柄があることも
- 松井証券 在庫少ない 手数料安い あまり取れたことがない
- SBI証券 在庫普通 手数料高い あまり取ったことがない
- カブコム 在庫多い 手数料高い 細かなコストが気になってほぼ使わない
よい優待クロスライフを
簡単に初心者向けの優待クロスの基本を買いてみました。これは基本で、日興証券の指値を利用した持ち替えや、異名義クロス、さらには制度信用などの応用がありますが、いずれにせよ、基本のキは、売りと買いを同値で建てるということにあります。
そしてとにかくコストを気にすること! それでは皆さんのよい優待クロスライフを祈って。