FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

日経平均バブル後最高値の意味 連続性はあるのか?

11月6日、日経225平均は大きく上昇して2万4325円で終わり、バブル後最高値を付けました。メディアでは「29年ぶり高値」という言葉が踊っていますが、さて、この意味をどう考えたらいいのでしょうか?

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連続性が実はない日経平均

「バブル後最高値」というからには、バブル絶頂期の日経平均最高値である3万8915円(平成元年 1989年12月)と、11月6日現在の2万4325円を比較していることになります。

 

ところが、Wikipediaにもあるように、日経平均は次のような歴史をたどったようです。もともとは「裁量による銘柄入れ替えはせず、倒産や合併時に新たな銘柄を加える」というルールでした。ところが、徐々に裁量性を増し、そして連続性がなくなっていったのです。

  • 1989年12月 バブル最高値
  • 1990年1月  日経平均暴落
  • 日経平均について、現物と先物のさや取り(アービトラージ)はじまる
  • 1991年10月 ルール変更、指数連続性弱まる
  • 2000年4月 30銘柄一挙入れ替え。指数15%下落。指数は不連続に

この30銘柄一挙入れ替えが大問題でした。入れ替え銘柄発表は4月15日、実際の入れ替えは4月24日。営業日で1週間の間、指数に追随するインデックスファンドのオペレーションは混乱します。

除外銘柄は日経平均から除外される前に下がり、新規採用銘柄は採用される前に大きく上昇し、採用された後は割高に買われた分下落しましたので、日経平均はこの前後で本来の姿よりも低く表現されていることになります。

2000年4月の30銘柄入替で日経平均は10%は低く見えている - ファイナンシャルスター

このときの爪あとにより、日経平均は本来よりも10%ほど低く見えているのではないかという考察もあります。つまり、バブル時期と比較するなら、現在の日経平均は2万6757円相当だということです。

 

結果、政府も日経平均株価の不連続性を指摘することになりました。

「(日経平均株価)指数の連続性というものは目下失われている」

宮沢大蔵大臣および堺屋経済企画庁長官の両大臣

 

「現行の日経平均株価の水準と過去の水準との間に一種の断絶が生じ」「今後,株価水準を時系列的に評価する際には,東証株価指数(TOPIX)の動きに一層着目する必要があると考えられる」

経済白書

言ってみれば、 2000年を堺に、日経平均を比較してもあまり意味はないということですね。

TOPIXと日経平均

では、1969年から算出されている東証株価指数(TOPIX)はどうでしょうか。こちらは、東証一部上場株の時価総額合計をもとに、1969年1月4日を100としてその推移を指数化しています。つまり、TOPIXイコール日本の代表的な株式の時価総額の合計でした。

 

ただしこちらも、株式の持ち合いによって時価総額のダブルカウントが起きるという問題が顕在化します。A社がB社の株式10%を保有していたら、A社の株価のうち10%にはB社の株価が反映されてしまいます。これがダブルカウントですね。

 

そのため、2005年10月から2006年6月にかけて、単純な時価総額合計ではなく、浮動株基準株価指数に変更を行いました。これは、市場で流通している浮動株の時価総額で重み付けするというものです。要するに、浮動株の時価総額合計ですね。

 

結果、TOPIXと日経平均はどう推移したのでしょうか。青がTOPIX、赤が日経平均です。バブル期からその崩壊のタイミングでは、日経平均とTOPIXはほぼ連動していたのが分かります。ところが、日経平均の30銘柄入れ替えによって乖離が生じ、TOPIXのほうが10%程度高い状況が続きました。

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その後、このことが理由かは分かりませんが、乖離は解消に向かい、ほぼ連動性が高まってきました。そして、コロナ禍からの回復局面では、日経平均のほうが高い状態です。

NT倍率は歴史的高値

TOPIXと日経平均の比較指標として、もう一つ有名なものにNT倍率があります。これは、日経平均をTOPIXで割った倍率で、だいたい10倍から14倍程度の間になります。NT倍率が大きければ、相対的に日経平均が強く、小さければTOPIXが強いという関係ですね。

 

これを見ると、やはり日経平均が急落した30銘柄入れ替えの2000年に、倍率は下落傾向にあります。また、TOPIXの浮動株基準移行後は上昇傾向にあります。

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日経平均株価:NT倍率チャート | 投資の森

ただ、この変化は指数計算方法の変更だけが影響するわけではありません。日経平均は単純平均に近いため、単価の高い値がさ株の動きが、大きく影響します。値がさ株は、ハイテク関連や外需関連が多いため、要するにファーストリテイリングやソフトバンクググープ、ファナックなどが好調ならばNT倍率が上がり、不調なら下がるという指標にもなっています。

 

そして、このところNT倍率の上昇は著しくなっています。90年代の13倍近辺を抜けて、14.67倍に達しており、まさに歴史的高値となっています。ブルームバーグによると、1980年4月25日以来の、40年ぶりの高水準だそうです。

www.bloomberg.co.jp

ちょっと面白かったのは、日経平均のほうが短期の需給の影響が色濃く出るという話です。先物取引市場では、TOPIXは存在感はほとんどなく、基本的に日経平均です。そのため、「空売りが溜まった日経平均先物には、米株高を受けて買い戻しが入りやすいという見方」「相対的に先物買いの恩恵を受けやすい日経平均が優位に立っているのは……」ということです。

 

つまり、米国株上昇を受けて、日経平均先物買い、続いて日経平均現物の上昇という流れがあって、一方で、TOPIXはそうした流れがなく、日経平均に比べて出遅れが続いている――。このような理解でしょうか。

 

それにしても、株価指数は景気の先行指標としても誰もが気にするものでニュースにもなりますが、意外と恣意的に計算方法が変わり、そして先物市場の強さによっても影響を受けるわけですね。面白いものです。

 

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