FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で自由主義者、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

GMOクリックのレバCFDをレバ指数ETFと比較する

昨今、指数にレバレッジを掛ける投資法が流行で、これが熱狂末期の投機的な行いなのか、人的資産の将来価値を含んだ最適ポートフォリオを作るためのレバなのかは分かりませんが、面白い状況になってきています。

 

ただ、多くの場合、リターンに2倍なり3倍なりのレバレッジをかけたETFなり投信を前提にしているようです。そして、そこに対して、「期待中央値はこうだ」とか「減価が」とかやりとりがあるわけですが、レバレッジをかける手法はこれだけではありません。

 

元本自体にレバレッジを掛ける、信用取引とかCFDならば、そんな面倒な話はなく、2倍レバなら期待リターンも期待中央値も素直に全部2倍。ボックス圏でも減価なんてしませんし、2倍以上のレバをかけるのだって簡単です。

 

という話をすると、出てくるのが2つの疑問です。

  • ロスカットが怖い
  • でも手数料や金利が高いでしょう

今回はここを考えてみたいと思います。

信用取引にかかるコスト

まず信用取引です。かけられるレバレッジは最大で3.33倍。コストは、取引手数料と信用金利です。取引手数料は数百円単位なので無視するとして、信用金利が最も安いのは野村證券の0.5%でしょう。

 

ただ実質エクスポージャ100万円分のポジションを作るのに、3倍レバETFなら33万円を購入すればよく、信託報酬は33万円に対して1%程度かかります。つまり、エクスポージャ100万円に対しては0.33%で済むわけです。一方で、信用取引の場合、100万円のポジションに対して0.5%かかってきます。というわけで、コストだけを比較した場合、少し信用取引のほうが不利になります。

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CFDにかかるコスト GMOクリック証券の場合

ではCFDではどうでしょうか。手数料は掛からない代わりに、スプレッドがかかり、また価格調整額(後述)というものがかかります。

 

スプレッドは、S&P500指数のCFDの場合、BIDとASKの差が0.4ドル。現在、S&P500は4659ドルなので、0.008%と極めて低コストです。

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では価格調整額のほうはどうでしょうか。この調整額がCFDを難しくしている最大の要因なのですが、GMOクリックでは3つの調整額があります。

 

「金利調整額」は株式や現物を原資産としてCFDを組成する場合に、毎日かかるコストです。基本的にマイナス。FXでいうスワップコストのようなものですね。オーバーナイト金利なんて言ったりもします。金額は、「当社がカバーを行う際に発生する金利および貸株料に銀行間金利を加味したうえで当社が決定いたします。」となっています。ただし、こちらは指数のCFDには発生しません。

 

「権利調整額」は株式を原資産としたCFDを組成した場合に定期的に発生するものです。これは、原資産から配当や分配金の支払いがあったときに、その額をもらえるもの。基本的にプラスです*1。指数のCFDには配当はないので発生しません。

 

「価格調整額」は先物を原資産としたCFDに発生するものです。いわゆるロールオーバーコストです。先物を使ったCFDの場合、先物には清算期限があるので、だいたい3カ月おきに乗り換えが発生します。このとき、期先の先物のほうが安ければ差額がプラスになるし、高ければ差額はマイナスになります。

 

商品先物の場合、期先になるほど保管コストがかさむので、基本的に価格に保管コストを加えて期先高になります。いわゆるコンタンゴです。株価先物の場合は、市場金利と配当利回りで理論的には価格が決まります。

先物価格 = 現物価格 x (1 + (金利 – 配当利回り) x 決済までの日数 / 365)

ざっくりいうと、金利の分だけ先物価格は高くなり、配当の分だけ安くなる感じです。この理由は簡単な思考実験で分かります。現物価格が100で、1年後の先物価格も101だったらどうなるでしょうか。

 

まず現物を100で購入し、借り入れて1年もの先物を101で空売りします。1年後、決済日に1の利益が出ますね。金利が1%なら、利払いが1あって、この取引では利益がゼロになります。もし先物価格が102なら、利払いをしてもノーリスクで1の利益が出るので、裁定取引によって先物価格は101に収斂するというわけです。

 

配当のほうは逆で、現物を100で購入し、先物を101で空売り、金利1%のとき、決済日には損益ゼロです。しかし現物からは配当が出るので、その分利益になってしまいます。そのため、先物価格が低くなって、利益を相殺するというわけです。

米国S500CFDの金利相当額を試算する

というわけでS&P500を原資産とするCFDである「米国S500 CFD」のコスト構造を試算してみましょう。

 

GMOクリック証券で価格情報が取れる、最も昔の2018/3/5の終値は2718ドル。同日のS&P500指数は2720ドルでした。そこから最新の2022年1月13日のCFD終値は4651ドル、同S&P500指数は4659ドルです。

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期間騰落率はわずかにCFDのほうが低くて、0.15%ほどビハインド。ただ、ごくわずかなパフォーマンス差です。

 

ではどこにコストが発生しているのか。それは、やはり価格調整額です。これは、先の式から、「配当額ー金利」が付与されることになります。この期間のCFD調整額を見ると、1単位あたり合計で4886円でした。ではこの期間のS&P500の配当はどうだったでしょうか。S&P500 ETFのVOOの分配金を見ると、計21.048ドル。VOOの単価をCFDにそろえ、ドルを円に変換すると、2万6222円となりました。

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明らかに、S&P500の配当のほうが多いですね。「配当額ー金利」の式からいうと、差額が金利コストだと考えられます。

 

まずこの期間、4年間のざっくりとしたCFD調整額利回りはというと、年率で0.23%となりました。一方のVOOは配当利回り1.23%です。その差、1%。つまり、だいたい金利相当額が1%ではないかと推計されます。これは、コロナ禍前の米国金利が高かった頃の調整額がマイナスとなり、つまり引かれる金利が高く、コロナ禍後の低金利状態では調整額がプラスになっていることからも、だいたいの感触が分かります。

 

直近1年だと、

  • CFD調整額利回り 0.74%
  • S&P500配当利回り 1.27%

となっており、その差は0.54%。CFDの先物は3カ月ものであり、直近の米国債は3カ月ものが0.11%なので、そこに組成手数料が乗っていると考えると、だいたい計算が合うかもしれません。

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結論 意外とCFDのコストは安い

では結論です。CFDのコストは実質0.5%程度。信用取引に比べてもそれほど悪くないということが分かります。

 

では最後に、レバレッジETFと比べてみましょう。実はレバレッジETFも、実態としては指数先物に投資して、それをロールオーバーすることで運用しているため、中身としてはCFDと変わりません。大和「iFreeレバS&P500」の設定日2018年8月31日から現在のリターンを、CFDと比較してみます。

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この間、レバS&P500の基準価格は123%上昇しました。一方で、CFDの米国S500価格は60%の上昇です。そして、そこに受け取れた分配金を足すと62%になります。CFDは最大10倍のレバがかけられますが、2倍として計算してみるとどうでしょう。分配金含まず120%、含むと124%となり、わずかですがレバS&P500を抜きました。

 

なるほど、コストを加味しても、この期間についてCFDはレバ2倍S&P500と同等以上のパフォーマンスを出したということです。

CFDとレバETFの違い

さて、改めてCFDとレバETFの違いをまとめておきましょう。まず投資対象はいずれも指数先物です。ここは違いがありません。しかしレバを掛ける対象がそれぞれ違います。レバETFはリターンに日次でレバをかけます。このメリットは決して元本割れしないことと、上り相場のときは複利効果が働いて伸びが加速することです。一方で、ボックス圏では減価します。

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CFDのほうは、元本にレバレッジをかける形です。素直にレバレッジがかかり、減価などを気にする必要がありません。また期待値だけでなく期待中央値も、レバの量にかかわらずレバに完全に比例します。一方で、大きく株価が下落するとロスカットの可能性が出てきます。

 

もう1つ税制の違いがあります。レバETFが株式同様の分離課税の譲渡所得なのに対し、CFDは分離課税の雑所得。先物やオプションなどと同じ箱になります。税率は同じですが、損益通算できる対象が異なることに注意が必要です。

 

この期間の株価は下記のとおり、コロナショックを除けばほぼ右肩上がりで上昇しており、日次リバランスの構造からいうと、レバETFに非常に有利な展開だったと考えられます。

 

にもかかわらず、CFDは互角以上の成績を出しました。もちろん、コロナショックで40%近い下落になったことには注意が必要です。2倍以上のレバレッジをかけていたら、タイミングによってはロスカットされている可能性がありました。

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それでも、低金利環境下では、元本にレバレッジをかけるCFDは魅力的な選択肢になってくるでしょう。信用取引では市場金利が信用金利に反映されるのにすごく長い時間がかかりますが、CFDではほぼタイムラグなく反映されます。直近までの低金利を生かせる投資法だった*2ともいえると思います。

 

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*1:ただ、もちろんですがショートポジションの場合は払うことになります。

*2:また金利上昇局面にあるので、なんですが……。