FIRE: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIREを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

「FIREセミナー」に参加してみた

一巡してFIRE卒業が話題になるなど、バズワードとしては旬を過ぎた感のあるFIREですが、まだまだセールストークのキャッチとしては有用なようです。今回は、とある「FIREセミナー」に参加してみました。

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無償セミナーあるある

投資系のセミナーは大別して無償のものと有償のものに分かれます。有償のものは、比較的マジメにコンテンツをつくっているところが大半ですが、ちょっと講師をしたこともある身からすると、受講生のニーズに振りすぎかな? と思うところも。

 

要するに、受講生は投資理論とかアセットアロケーションとかよりも、「で、けっきょくどの株が上がるんですか?」という話を聞きたいという潜在的ニーズがあります。なので、受講生の参加率が高かったり評価が高いことを見てコンテンツを調整すると、「今週の目玉銘柄はこれだ!」みたいな競馬新聞みたいな内容になるわけです。そんな中で、ぼくを講師として招いてくれたところはすごいとは思いますけど。

 

閑話休題。うって変わって無償セミナーというのは要するにセールスのための客寄せです。証券会社とか大手の運用会社とかがやるものは、金融庁の厳しい指導もあり、特定の商品の購入を促すものはできなくなっています。まさに、情報提供なわけです。

 

なので、マネックスとか楽天証券とかがやっている無償セミナーは、けっこういい話が聞けたりして、比較的ぼくも好きです。

 

一方、株式系以外のセミナーは、ずばり商品の紹介と勧誘です。露骨に「投資商品の紹介ですよ、うひひ」とまでは言いませんが、「僕らも無料でセミナーだけやっていたら、ご飯が食べられませんので」くらいは言ってきます。

 

今回のFIREセミナーは、そのものずばり、後者でした。わかっていながら参加してみたのは、果たして業者が「FIRE」というキーワードをどう料理するのか、興味があったからです。

セミナーと言いながら、対面商談

今回のセミナーも当たり前のようにオンラインセミナーです。ZoomのURLが送られてきて、そこにアクセスする仕組み。でも、ちょっと手が込んでいると思ったのは、いきなりセミナーが始まらないことでした。

 

まず入室すると、ブレイクアウトルームに誘導されます。そこには業者の担当がいて、挨拶と事前のセミナー内容の説明が行われます。カメラをオンにしてもらえますか? というところまで、計算されていますね。

 

5分ほど、年齢だとか勤め先だとか、どんなニーズでセミナーに来たのかを聞かれて、「FIREに興味があって」と答えました。そしてやっとセミナー!と思ったら、びっくりです。

セミナー……動画だった

セミナーはなんと動画でした。「これから40分ほどFPの人のセミナーを動画で流します」だそうです。てっきりライブで話すのだと思っていたのですが、これは意外。ちょっと手抜き感も感じましたが、まぁ動画でもライブでもコンテンツ自体に変わりはありません。というか、録画のほうが完成度は高いともいえます。

 

ではその動画はどのようなものかというと。意外にいい動画でした。シナリオは次のような形です。

  • 資産運用は老後資金を作るため
  • 本を読んだりネットで調べても仕方ない。自分でやってみて初めて分かるものだ
  • 挑戦したほうがいいが、ただし失敗すると貯金がなくなってしまう
  • FPとして、相談は最終的に運用の話になる
  • そこでお勧めなのが、投資信託と投資用不動産だ

まぁFPの定番的なストーリーで、よく練られているなぁとは思いながらも、特に新しい発見はありません。そして、まず投資信託の説明が行われます。

  • 投資信託には4つの特徴がある
    • 少額から始められる
    • 自動引落でできる
    • さまざまな投資対象がある
    • プロに任せられる
  • 選び方は、分散、手数料の安さ、積立、複利の活用
    • GPIFに倣ったアセットアロケーションにする
    • 信託報酬手数料の安いものを選ぶのが王道
    • アクティブ運用はインデックスに勝てない
    • ドルコスト平均法を使え
    • 複利を考えると分配金が出ないものがいい
    • NISAやiDeCoなど税制優遇があるものを使おう

いや、まともじゃないですか。ドルコスト平均法のロジックは、定口買付と比較して有利という話をしていて、ちょっとミスリードじゃない? とは思いましたし、GPIFのアセットアロケーションがかなり古いものなのも気になりましたが、まあ全体としては合格レベル。よい内容でした。

投資用不動産がすごい!

面白かったのは、続く投資用不動産のパートです。いきなり「投資信託と同様、不動産だけは初心者でも気軽に始められる」ときます。そして、最大のポイントはレバレッジ投資だと。ちょっと雲行き怪しいぞ、と冒頭から感じますね。不動産の魅力は、合計5つあるといいます。

  • 他人資本で資産が作れる
  • 将来の不労所得になる
  • 節税になる
  • 生命保険代わりになる
  • インフレ対策になる

そしてこういいます。

老後2000万円問題、15年で2500万円貯めようと思ったら、毎月13.8万円を貯金しなくてはなりません。でも、不動産ならあなたの代わりに入居者がこれを払ってくれるのです。

ほほー。そこを並べて推してきたか。そして、投信とも比較します。

投信と不動産はまったく別物です。どちらがいいか悩むものではありません。100万円で利回り4%の投資信託を買うと、老後に受け取れる金額は394万。一方、利回り4%の投資用不動産なら、

80歳まで生きた場合、1080万円

90歳まで生きた場合、1800万円

100歳まで生きた場合、2520万円

うわ。投資用不動産すごい!

 

と思った人は、説明の罠にハマった人です。これは確実に、不動産業者のセミナーですね。FPは、それをわかっていて、敢えて投資信託よりも不動産という流れになるようにセミナーを組み立てています。

 

不動産は値下がりのリスクがありますが、それについても「ローンの支払いをしてくれたのは居住者。多少下がってもいいじゃない」と、いきなりアバウトな説明が始まります。

 

そして、最後に不動産のリスクについて。下記のようなリスクがあると説明します。

  • 空室リスク
  • 修繕リスク
  • 入居者トラブル
  • 金利上昇
  • 自然災害

そしてこれらのリスクは、販売業者がよく考えて対策しているので、ぜひ聞いてみてほしいと。さらに、

投資用不動産は誰にでもできるものではありません。借り入れができなければ、いくら勉強して調べても無駄です。借り入れができるかは、気軽に業者に聞いてください。

と。もう後半は、露骨な不動産投資誘導でした。

FIREなら不動産なのか

そして最後に、セミナーを聞いてのQ&Aと題した、不動産の売り込みです。ちょっとやりとりを。

  • 九条:不動産の話、これ2500万円くらいで表面4%の区分マンション投資ですよね。ということは、キャッシュフローは赤字。どのくらいなんですか
  • 業者:お客様の属性にもよりますが、金利が優遇されるなら、月々1万円以下の支払いで済みますよ
  • 九条:FIREセミナーということで、FIREするために重要なのはどういう投資法なんでしょう?
  • 業者:老後に一番重要なのは、不労所得です。配当とか家賃収入とか。生活を支えるのに、どのくらいの不労所得が必要なのかで考えましょう。
  • 九条:でも区分マンションでCFが赤字だと不労所得が得られないですよね
  • 業者;そこは、頭金や繰り上げ返済を活用してもらいたいです。
  • 九条:でも不動産投資の最大のメリットはレバレッジということですよね。頭金の活用は頭金をたくさん入れる、そして繰り上げ返済を行うということは、レバレッジを減らすという話ではないですか?
  • 業者:それはそうですが、FIREしたいなら繰り上げ返済をお勧めしています。
  • 九条:レバレッジが特徴であれば、例えばレバレッジがかけられる投信についてはどうお考えですか?
  • 業者:私はかなりいろいろな投資をやっていますが、レバレッジ投信をやるなら、個別株に投資しますね。
  • 九条:なるほどそうですか。

不動産を否定はしないけど

まず投信についての説明はほぼ王道。そしてそこからの、でもやっぱり不動産のほうがいいですよ!については、見事なつなぎだと思いました。個別個別については、不動産の説明も間違っていないと思います。

 

また、不動産が資産を拡大する素晴らしいツールだというのも同意です。大きなレバレッジをかけながら、追証がないというのも不動産の特徴だし、諸外国と違って、インカムゲインが期待できるというのも、日本の不動産の特徴です。正直、借り入れが起こせる属性があるなら、不動産を手がけない理由がないと思うくらいです。

 

でもだからこそ、物件選びには気をつけたいところ。都内の不動産、特に山の手線内となると、4〜4%の表面利回りがいいところ。その上、管理費と修繕積立費が乗ってくる区分マンションでは、CFがマイナスになるのが普通です。

 

となると、キャピタルゲインに期待するか、保険代わり、節税対策というセールストークとなるのも分かります。築30年以上たったワンルームマンションを、老後資産として捉えるかどうかという話もあります。

 

少なくとも、市場に出れば取り合いになる物件がある一方で、広告を出して集客しAmazonギフト券を付けてセミナーで話を聞いてもらわないと売れない物件もあります。不動産投資をするなら、どっちの物件に投資したいか? そういう話でもあるわけです。面白いものです。

 

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