金価格が高騰しています。消費税込みで国内売買価格は1万円を超えました。そんなとき、家族が「金歯が取れた」というのです。歯医者に行くと勝手に金歯を処分されたりするので、「金歯持ち帰ってきて」と伝え、それを売却してみることにしました。果たして価格は……。
金価格はグラム1万円超え
金は現在国内で過去最高値更新中です。まず長期チャートがこちら。2005年にはグラム1500円だったものが、なんと現在は1万円です。
直近5年のチャートがこちら。2019年から見ても1万円を超え、5年で2倍になっています。
こりゃ、金歯であっても高く売れるに違いない。ということで、新宿まで出かけて、いくつかの買取店で見積もりを出してもらい、売ってみました。
なんぼやに行く
最初に出向いたのが新宿のなんぼや。雑居ビルの上のほうの階にあるのですが、エレベータを降りてびっくり。なんかすごい豪華な作りです。買取店ってチケット屋みたいなところをイメージしていたのですが、セレブな感じ。
受付を済ませたら、個室に案内され、スーツを着た店員さんがやってきます。お飲み物は何になさいますか? とか言われて、外車のディーラーにでも来た感じ。
売却したい金歯を出すと撮影し「内容確認のために別室にお持ちしてもかまいませんか?」と。はいはい、どうぞ。「ではその間に会員登録をお願いします」とiPadを渡されます。まだ売ると決めたわけではないんだけど、会員登録とかこういうステップを踏まれると、また来ますって言いにくいなぁ……なんて思いながら住所氏名年齢とかを入力です。
登録がおわって少ししたら店員さんが戻ってきました。聞くとこの金歯は18Kで重さは2.8グラムだそう。よく聞く18K(18金)というのは75%が金で残りが銀や銅などで構成された金を指します。金は24分率で表され、24Kというのが金含有率99.9%以上。18Kというのは18/24なので75%なんですね。
店員さんが見積もりを話します。「買取店はどこでもそうですが、金歯などは加工が必要になるため、どの店でもその手数料がかかります。普通は20〜30%の手数料がかかりますが、お客さまは初めての来店でもあり、今回19%を提示させていただきます」
うーん。いかに自社の見積もりが高いかを説明するときに使う典型的なトークです。20−30%が本当に普通なのかもよく分かりませんし、19%が妥当なのかもよく分かりません。
「今回の金歯は2.8グラムでした。当社では18Kの買取価格はグラムあたり7700円になります。そこから手数料を引くので、今回1万8000円を提示させていただきます」
直近の24K金のインゴットは買取価格が10,409円/gです。18Kは含有率75%なので、単純計算でも7800円くらい。7700円はかなり妥当です。2.8g x 7700 x 81% = 17,463円。これを1万8000の見積もり提示なので、これも妥当ですね。
「わかりました。ありがとうございます。それでは他社の見積もりも取ってみますので、こちらの見積もりの有効期間を教えていただけますか?」と聞くと、本日中なら、ということでした。悪徳業者だとたいていここで「見積もりは今ここまでで有効な特別価格。他社の見積もりも取るならこの見積もりでは買い取りできません」とかいって、この場で売買を決めようとしてきます。なんぼやでは、本日中ならばOKということで、良心的なちゃんとしたお店だということがわかりました。
とはいえ、こうした買い取りは相見積もりが基本。ここで決めるわけには行きません。
大黒屋とおたからやへ
続いて向かったのは同じく新宿の大黒屋。ブランド品の買い取りなどでも有名なチェーンですね。
狭い階段を二階に上がると、ケータイショップのカウンターのような小さな机が一つ。女性の係員が座っています。金歯の買い取りを相談したいと伝え、モノを出すと、測りに載せて重りを測り、ペン先のようなもので軽く叩いて、続いて小指の先くらいの黒い石(おそらく磁石でしょう)を付けて何かを確認しています。形状に加えてこのチェックで18Kの金歯だと鑑定したのでしょう。
ここまで5分もかからず。査定価格は9270円! 2.8グラムなので、3310円/gです。まさか前の買取店の半分の査定になるとは思いませんでした。「この価格になります。もしお売りになる場合は身分証明書の提示が必要になりますが、いかがいたしますか?」と係員。前の店舗の査定を下回るので、売ることはありませんね。ただ査定まで非常にスピーディーだったのは驚きました。
続いてはすぐ横にあった「おたからや」です。自動ドアをくぐると、店員さんが「なんでしょう?」と。「金歯の買い取りのご相談を……」と伝えると、ちょっと面倒そうな顔をして「今、うちでは金歯はグラム500円になります。それでもよろしいでしょうか?」と伝えてきました。
え? グラム500円? 5000円の間違いじゃなくて? 「そうですか。それならば結構です。ありがとうございます」と伝えて、退店。改めて最初のなんぼやへと戻って買い取ってもらいました。
大手のほうが査定が渋いとは限らなかった
下記のように、当初の見積もり通り1万8000円で買い取っていただけました。これまでは捨てていたような金歯が、こんな値段になるとはちょっと驚きです。そして、国際的に相場が決まっている金について、ここまで業者によって価格が違うというのも驚きでした。
経験上、こうした買い取りは部屋とかが豪華な大手は経費がかさむため、無名の薄汚い業者のほうが高い査定を付けてくることが多いと感じていたのですが、今回は最も豪華なしっかりした感のあるなんぼやが最も高査定を出したのは驚きです。本当はもう少しマイナーな業者も回ろうと思っていたのですが、年末ということもありお休みになってしまっていて、そこそこ有名な3業者だけの相見積もりになってしまいました。
ちなみに18K以外の買い取り価格もWebにありました(1/5時点)。ただここから約20%の手数料が引かれることは注意です。
売却価格には200万円の壁があった
買い取りにあたり、ちょっと店員さんとQ&Aしました。
Q:売りたい人が多いと値が下がったり、少ないと値が上がったりするのか? つまり需給は買取価格に影響するのか
A:金は市場価格に基づいて買い取り価格を設定している。当店における需給は関係ない
Q:消費税はどういう扱いなのか?
A:200万円まで消費税は関係ありません
この回答が????だったので、ちょっとあとで調べてみました。まず前提としては日本では金には消費税がかかります。そのため、購入価格も買取価格も消費税が含まれています。ただし、個人が金を売却して税込みの代金を受け取っても、消費税納税の義務はないようです。
正確には、消費税は事業者が事業として行う取引に対して課税されるものなので、個人からの金の買い取りは基本は非課税。ただし消費税相当額を上乗せして払っているということになるのでしょう。免税事業者との取引でも、消費税相当額を上乗せして支払っているのと似ていますね。
では先程の回答の200万円というのは何なのか。これは所得税に関係したものです。200万円を超えた買い取りでは事業者側に支払調書を提出しなくてはいけなくなるという意味です。支払調書とは、給与や退職手当、報酬などを与える者が、その明細を記入して税務署に提出することを義務付けられている書類の総称。所得税法などで定められています。これが提出されることで、税務署は金売却による所得があったことを把握するというわけです。
金を売却しても、通常はそれを税務署に知られることはありません。そのため、確定申告をして所得税を払う人のほうが少ないのでしょう。これを防ぐために支払調書が作られ、マイナンバー付きで税務署に送られるというわけです。
金を売却すると、そこには譲渡所得として所得税がかかってきます。所有期間が5年を超えていれば、売却価格から所得価格を引いて、さらに50万円を引き、それを半分にしたものが課税所得となり、そこに累進課税で税金がかかります。つまり、譲渡所得は合計で年間50万円までなら無税。そのため、今回の僕のように1万8000円の金歯の場合は、消費税だけでなく所得税も住民税も気にしなくていいということになります。
ぼくは金のインゴットも保有していて、この5年で2倍程度の価格になっています。これもいずれ売却するのですが、年間50万円ずつ売れば無税だし、200万円までなら支払調書なし。これは覚えておくといいですね。