菅首相の人気取り政策ともいえる「携帯電話料金4割値下げ」は、賛同を得ているのかどうか知りませんが、少なくともちょっと携帯に詳しい人なら、「格安SIM=MNVOを使えば、もっと安くなる」ということを知っています。ただし、無線部分はともかくネットワークにボトルネックもあり、システム上の制約もあるため、必ずしも快適に使えるとは限りません。
ところが、2021年4月までの1年間の期間限定ではありますが、現在のベストプラクティスがあります。それは、楽天モバイルを契約して、複回線としてeSIMを利用する方法です。
※2021年4月までと書きましたが、これは最初期に申し込んだ人の無料期間が終了する時期で、正しくは「開通日から1年間無料」ですね。失礼しました。いま申し込めば、1年間は無料でサブ回線の恩恵を受けられることになります
eSIMって何?
eSIMは数年前から話題になっていましたが、一般ユーザーにとっても普通に利用できる環境になったのは、楽天モバイルからではないでしょうか。通常のSIMは物理的なカードをスマホに挿して使いますが、eSIMはソフトウェア的に導入して使います。
具体的には、携帯キャリアが発行するQRコードを、スマホのカメラで読み込めば、それだけでOK。その回線をスマホで利用できるようになってしまうのです。
物理的な抜き差しがないので、導入は簡単で、SIMを郵送で受け取る必要もありません。端末側も物理的なスロットを用意する必要がないので、コンパクトにできます。具体的には、iPhone XS/XR、11以降のiPhoneはいずれもeSIM対応です*1。AndroidではGoogleのPixel 4以降や楽天のRakuten MiniがeSIM対応です。
楽天モバイルの場合、サイトで契約を申し込み、eKYCによってオンラインで本人確認も終了し、eSIMならその場でQRコードが生成され、iPhoneなどでそれを読み取れば、もう楽天回線を利用できるようになります。思い立ったら即日、利用できるわけです。
楽天モバイルを副回線として使う
今回のテクニックは、主回線は従来どおりの物理SIM契約を使い、楽天モバイル回線はeSIMとして副回線に入れるという方法です。iPhoneやPixel4、5はこのように複数の回線を同時に利用できます。
iPhoneを例にとると、主回線、副回線という名前ではありますが、どちらの電話番号でも電話着信が可能です。発信時も、どちらを主として使うか選べるほか、アドレス帳の登録ごとに、「前回利用した回線」または「主回線または副回線を常に使用」を選べるようになっています。
データ通信についても、優先的に利用する回線を選べるだけでなく、ネットワークの状況によってもう1つの回線を自動的に使用することができます。
楽天モバイルは、ご存知のとおり、データ通信は容量無制限です。つまり、副回線に楽天のeSIMを設定して通信を楽天優先にしておけば、
- 通常は楽天回線で、高速、容量無制限
- 楽天圏外の場所では、普段の主回線を利用
という状況になるわけです。
さらに、「Rakuten Link」アプリを使えば、通話も無料です。ありがたいことに、iPhoneの通話履歴は、他アプリからの発信も記録されており、リダイヤルを行うとそのアプリから通話を行えます。これは意外とAndroidよりも優れており、複数通話アプリを使うときは圧倒的に便利だったりします。
要するに、従来の番号で着信を受けられる状態のまま、無料通話が使いたければ楽天回線を使って、電話も無料でかけられるわけです。
楽天モバイルはとにかく無料
なぜここに来て改めて楽天モバイルを勧めるかというと、さらに無料化が進んだからです。もともと、申し込みから1年間、月額2980円の基本料金を2021年4月まで無料で提供していましたが、先日、さまざまな手数料も無料にすることを発表しました。つまり、
- 事務手数料無料
- SIM交換手数料無料
- 契約解除料無料
- MNP転出手数料無料
です。つまり、いま契約してもまったく料金がかからずに、使い放題のサブ回線を入手できて、それを手持ちのiPhoneに入れられるというわけです。
※アンテナピクトはこうなります。上がモバイルデータを使う回線、下の点がもう一方の回線です
1年後に無料期間が終了したときの選択肢はいくつかあります。
- 解約する (無料)
- 副回線で継続する (月額2980円。楽天ポイントで支払い可能)
- メイン回線として使う (従来の主回線コストを削減)
- MNPで転出する (MNPで移ると優遇のあるキャリアはまだあります)
いずれにしても、損はありませんね。感じとしては、楽天は本気でシェアを取りにいっており、もともとがソフトウェアベースのローコストな設備でインフラを作っているだけに、コストを下げても競争力がある感じです。楽天モバイルでいったん楽天エコシステムに取り込んでしまえば、そうそうユーザーは逃げないだろうという自信も感じます。
東京なら電波は入る。しかも高速
つながらない入らない不安定だという評判の楽天モバイルですが、少なくとも東京ならばかなり入ります。しかも、ぼくの自宅では、ドコモ回線よりも電波強度が強い状況です。楽天モバイル一つだとさすがに心配ですが、サブ回線としてどちらも使えるなら、少なくともエリアの狭さはあまり問題ではありません。
しかも速いですね。iPhoneは、5G対応のiPhone 12に変えても、楽天モバイルの5Gのは利用できないようですが、4G LTEでもかなり速いです。これはユーザーが少ないためでしょう。11月時点でユーザー数は160万人としており、かなり小規模。下手をすると1つの基地局に1人、2人しかぶら下がっていない感じなのではないでしょうか。利用者が増えると分かりませんが、現状は速度は快適です。
SMSの次世代版であるRCSは、電波が入らないところでもWi-Fiを使って電話が可能です。090番号からの発信において、Wi-Fiに繋がっていれば、それ経由で電話をかけます(Wi-Fi Calling)。自動IP電話という感じですね。楽天モバイルはこのRCSを実装していて、無線LAN環境においてはそこから電話をかけます。
一見、便利そうな機能なのですが、これがちょっとやっかいで、電波の不安定なWi-Fiの場合、通話が不安定になることがけっこうあります。音質も、あまりよくありません。現状Wi-Fi Callingのオフはできないようなので、ここはちょっとひっかかっています。また、通話品質も大手キャリアのVoLTEに比べると低く、IP電話以上、3G通話程度、VoLTEが最高、という感触です*2。
いろいろと不具合がある上に*3、サポート体制がひどくてつながらない、まともな対応をしてもらえないことから、相当イメージが悪かった楽天モバイルですが、メイン回線ではなくサブ回線用に使うなら、これはアリです。1年間の期間限定ではありますが、この半年間は、これを使ってギガが足りないことからおさらばしたいと思っています。