今年も確定申告の時期になりました。2020年1年間の収支をもとに、2月15日から受付開始です。いろんな書類と首っ引きになって書類作成となるわけですが、さて、確定申告を行うメリットはどんなところにあるのか、まとめておきます。
必須でなくても確定申告をする理由
確定申告は、株式の場合、特定口座で取引していれば特に必要はありません。逆に、確定申告が必要になるのは以下のような場合です。
- 給与収入が2000万円以上
- 一般口座で株式の取引をした
- 先物FX、CFD、オプションなど分離課税の商品の取引をした
- 50万円を超える一時所得があった
- 20万円を超える雑所得(ソーシャルレンディングや貸株、仮想通貨売買)があった
また、次のような場合は確定申告で税金が戻ってくることはよく知られていますね。
- ワンストップ制度を使わない場合のふるさと納税(寄付金控除)
- 医療費控除
でも、これら以外の場合でも、確定申告をすることで税金を取り戻すことができる場合があります。次の4つの場合です。それぞれについて見ていきましょう。
- 複数の証券会社で取引した場合
- 年間で損失を出した場合
- 外国株式から配当をもらった場合
- 所得が少なく税率が低い場合
- 所得が極端に少ない場合
- 必須でなくても確定申告をする理由
- 複数の証券会社で取引した場合
- 年間で損失を出した場合
- 外国株式から配当をもらった場合
- 所得が少なく税率が低い場合
- 所得が極端に少ない場合
- 確定申告はe-Taxでも郵送でもできる
複数の証券会社で取引した場合
まず1つ目は、複数の証券会社で取引した場合です。特定口座は税金を自動で計算して、必要な分は支払ってくれますが、これはあくまでその証券会社内に限っての話。例えば、証券会社Aでは損失が出て、証券会社Bでは利益が出た場合はどうなるでしょうか?
証券会社Aで50万円の損失、証券会社Bで100万円の利益の場合を考えてみます。証券会社Aでは税金ゼロ、証券会社Bでは利益に対して20.315%の税金(20万3150円)が取られます。
ところが全部を合計して見た場合、実際の利益は50万円です。つまり税金は半分の10万1575円でいいはず。これを実現するのが確定申告というわけです。
もちろん、すべての証券会社で利益が出ていたり、すべての証券会社で損失が出ていれば確定申告によるメリットはありませんが、そうでなければ確定申告したほうがお得というわけです。実際には、特定口座だと事前に税金が引かれているので、確定申告で前金が戻ってくる(還付)ことになります。
年間で損失を出した場合
2つ目は、全部合計した損益がマイナスだった場合です。これだけ言うと、投資に失敗したように見えますが、必ずしもそうではありません。実際の利益と税務上の利益は異なるからです。しっかり資産が増えて入金額もプラスなのに、税務上の利益は損失ということもあります。
さて、合算して損益がマイナスなら税金を払う必要はないのですが、確定申告をするのはなぜでしょう。それは、この年の損失を翌年以降に繰り越せるからです。例えば、今年の利益が▲50万円、そして来年100万円の利益を出した場合を考えてみましょう。
確定申告をしなければ、今年は無税、来年は100万の20.315%の20万3150円の税金です。ところが、確定申告をして損失を繰り越した場合、来年の利益100万円から今年の損失50万円を引いて、利益50万円分だけの税金で済みます。つまり税金は半分の10万1575円でいいのです。もし損をしても、これは将来の税金を減らせるものになるので、大事にしたいところです。
この損失の繰り越しは最大3年間可能なので、3年分は損失を活かすチャンスがあるということになります。
外国株式から配当をもらった場合
3つ目が外国株式から配当をもらった場合です。国内株式からの配当は、20.315%の源泉課税で完了しますが、外国株式の場合、現地(例えば米国)で10%課税され、さらに国内で20.315%課税されます。
ところが確定申告を行い、外国税額控除という仕組みを使うと、現地分の課税を取り返すことができるのです。
ただし、いくつか注意点があります。
- NISA口座でも米国源泉課税はあって、これは取り返せない
- 控除には限度額がある
このあたりは、別記事に書きましたので、ご参照ください。
所得が少なく税率が低い場合
4つ目は、「総合課税と配当控除の活用」です。株式の譲渡益と配当は、20.315%の分離課税になっています。給与のように累進課税ではありません。ところが配当に関しては、分離課税ではなく総合課税を選択できるのです。このメリットは何かというと、20.315%よりも税率が下がる場合があるのです。
これは配当控除と呼ばれます。所得税がマイナス10%、住民税がマイナス2.8%されます。累進課税なので、給与所得が高いと税率が上がってしまいますが、それでも合計して次のような計算になります。2017年からは住民税のみ「申告不要」を選択できるようになり、さらに税率が下がりました。
- 課税所得195万円以下 計 5%
- 課税所得330万円以下 計 5%
- 課税所得695万円以下 計15%
- 課税所得900万円以下 計18%
課税所得900万円以下なら、普通に税金を払うよりも全然お得になります。しかも課税所得というのは年収ではないことにも注意です。年収から、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除などを引いたのこりが課税所得だからです。課税所得が900万円を超えるのは、独身でも年収1300万円超。大学生の子供が2人いるなどの場合、1500万円でも課税所得は900万円を超えません。
詳細や注意点は下記のページにまとめました。
国税庁の「確定申告書作成コーナー」では、分離課税と総合課税をそれぞれ選択して税金がどう変わるかをシミュレーションすることもできます。いやはや便利な時代になりました。
1点追記です。配当控除か、配当と株の譲渡益の損益通算のどちらかしか選べません。もし株の譲渡益で損失が出ていた場合、それを配当と通算して税金の還付を受けるか、配当を総合課税として配当控除を受けるかを選択することになります。
株式で8万円の損失、配当が10万円だった場合、次のどちらかを選ぶことになりそうです。
- 配当控除を受ける 配当の7万9685円の税金を、総合課税で減らす。譲渡損は繰越
- 損益通算 配当益を譲渡損で相殺し、配当の配当の7万9685円の税金のうち、8万x20.315%の6万3748円が還付
ややこしいですが、次の図のようになります。
所得が極端に少ない場合
最後に、所得が極端に少ない場合の作戦です。先の総合課税&配当控除による税削減は、あくまで配当に関してのものでした。ところが、所得が少なければ、株の譲渡益についても控除が可能なのです。
給与などの所得は収入から所得控除を引いた残りの課税所得に対して税金がかかります。この所得控除には、給与所得控除、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除などがありますが、これらの控除を差し引いた結果、課税所得がマイナスになってしまう場合があります。所得額よりも控除額が多い場合です。
このとき、なんと株式などの分離課税の譲渡益から余った控除額を差し引けるのです(※税金の基礎知識(2) | 学ぶ・セミナー | 大和証券)。
これは普通に働いている人には関係なさそうですが、リタイアした人、専業主婦、子供については、試算してみる価値がありますね。こちらも国税庁の「確定申告書作成コーナー」でシミュレーションできるはずです。
確定申告はe-Taxでも郵送でもできる
確定申告というとかなりハードルが高い印象をもちます。ぼくも初めてやったときはそうでした。ところが、国税庁の「確定申告書作成コーナー」はかなり分かりやすく、質問に対して数字を入力していけば、それだけで申告書が完成します。数字のもととなる年間取引報告書さえ用意すれば入力にかかる時間は1〜2時間といったところでしょうか。
さらに申告書の提出には現在4パターンが用意されています。
- 税務署や特設コーナーの窓口に行って提出
- 印刷して郵送する
- ID/パスワード方式でネットで提出する
- e-Taxを使ってネットで提出する
窓口での提出は税理士に相談できるというメリットはありますが、コロナ禍の中あまり人混みに出て行きたくないものです。印刷して郵送は最も簡単です。昨年まではぼくもずっと郵送していました。
ID/パスワード方式は、それを入力すればネットで提出できるものですが、IDとパスワードを取得するのに税務署に身分証明書をもって行く必要があります。一回取ればそれがずっと使えるのですが、今年新たに取るのはちょっと嫌ですね。ぼくは昨年取得して、それからはID/パスワードで申請しています。
e-Taxは現在国税庁が推進しているもので、マイナンバーカードを読み取り機で読み取ることで、申請できるものです。今年はマネーフォワードやfreeeがスマホでe-Tax申告可能なアプリをリリースしていますが、どちらも月額課金がかかります。国税庁も「e-Taxソフト(SP版)」を提供しており、こちらもスマホで申請可能なようなのですが、どのようにするのかはちょっと分かりませんでした。今年はぼくもこちらでトライしてみたいと思っています。