FIer: 投資でセミリタイアする九条日記

九条です。資産からの不労所得で経済的独立を手に入れ、自由な生き方を実現するセミリタイア、FIerを実現しました。米国株、優待クロス、クリプト、太陽光、オプションなどなどを行うインデックス投資家で、リバタリアン。ロジックとエビデンスを大事に、確率と不確実性を愛しています。

ビットコインに所有権はあるのか

f:id:kuzyo:20211220204808j:plain民法をちょっと調べると、面白いことが分かります。ビットコインには所有権は発生せず、「ぼくのビットコイン」といっても非常に曖昧な領域にあるのです。どういうことでしょうか。

デジタルデータに所有権はない

まず、現在の民法では、デジタルデータには所有権は発生しません。物理的なモノにしか所有権はないのです。そのため、データを記録したHDDが盗まれた場合は窃盗罪になりますが、データなどの情報は盗まれても窃盗にはあたらないのです。

 

しかし、実際にはデータ自体に価値はあるので、それを盗む輩も存在します。2014年のベネッセ事件では、派遣社員がデータベース内の顧客情報を不正にコピーして名簿屋に売却しました。しかし、これは窃盗罪では処罰できなかったわけです。

 

そのため、「不正競争防止法」で処罰したり、2015年の法改正で個人情報保護法が改正され、「業務に関して取り扱った個人情報データベース等を、自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で提供または盗用した場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金」(個人情報保護法83条)という法律が作られたりしました。

 

また、写真家のHDDに入っている撮影画像をコピーして盗んだらどうでしょうか。ポジや紙焼きを盗んだら、これは物体なので窃盗です。またHDDそのものを盗んでもHDDは物体なので窃盗です。しかし、コピーして盗んでも窃盗にはならないわけです。では、どんな罪に問われるのか。これは著作権侵害です。ただし、私的複製ならば著作権侵害にはならず、これを商用利用したり不特定多数が閲覧できるようにしたら違法になるという位置づけです。

 

これらはデジタルデータを「財物」として認めたわけではなく、あくまでその目的などに限定して罰則を定めたものです。そんなわけで、デジタルデータの価値はどんどん高まるのに、その法的な位置づけは継ぎはぎだらけというのが現状だったりするわけです。

ビットコインに関する権利

これがビットコインの法的な権利ではさらに困ったことになります。一応、日本は仮想通貨関連の法律では世界に先駆けて位置づけを明確にしたことになっています。資金決済法2条5項で定められています。

第2条5項

この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三項に規定する電子記録移転権利を表示するものを除く。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

これは仮想通貨を「ブロックチェーンを使っている」とか「暗号によって保護されている」という技術的な側面ではなく、その機能によって定義しています。

 

そして先の民法で見たように、ビットコインはデータでしかないので、ビットコインには所有権がないことになります。では、実態のない無体財産権にはあたるでしょうか。こちらは、国税庁が下記のように定めています。

無体財産権という用語は、一般に物権及び債権を除いたところの財産権として用いられていますが、印紙税法では、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号及び著作権の8種類のものに限って無体財産権ということにしています(第1号文書の定義欄参照)。

無体財産権の範囲|国税庁

さらに、電子マネーのような前払支払手段であれば、発行者に対する債券と位置づけられますが、ビットコインには発行者がいないため、これにもあたりません。

 

そんなわけで、モノを購入したり現金と購入できる明らかな財産であるにもかかわらず、法的にはなんとも微妙な位置づけだというのが仮想通貨なわけです。

ビットコインを盗んだらどんな罪なのか

持っている人に所有権がなく、盗んでも窃盗罪にならない。となると、ビットコインを人から盗んだらどんな罪になるのでしょうか。

 

2017年に起きたビットコイン強盗殺人事件の判決を見てみましょう。これは、ビットコインのセミナーで知り合った相手を殺害し、現金、カバン、スマートフォンを奪い、ビットコインを奪って自身の口座に移し、現金化したという事件です。

 

ここでは判決は強盗殺人罪として有罪、無期懲役となりました。

(強盗)
第二百三十六条
 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

ただし、「強盗」の第1項が成立したのは現金とカバンを奪った点で、ビットコインについては、第2項の「財産上不法の利益を得」という観点での有罪になったと見られます。ビットコインは財物ではないからです。

 

「財産上不法の利益」というのは、要は詐欺です。

(詐欺)

第二百四十六条

 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

このように、財物ではなく窃盗罪は成り立たなくても、それを強引に奪った場合は、詐欺的な内容が適用されるというのが、現在の状況のようです。

www.mc-law.jp

NFTでさらに混乱へ

ビットコインについては、それを自身が管理するウォレットに保存している人は、まぁまれでしょう。そのため、盗まれるとしたら取引所のハッキングであり、これは不正アクセス禁止法で禁じられています。

 

ただ、この不正アクセス禁止法は「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」とけっこう軽いんですね。まぁ実際に何億円もの仮想通貨を盗んだら、詐欺罪とかでも追訴されるでしょうけど、法整備が追いついていない感はあります。

 

さて、今後問題になるのは取引所においてある仮想通貨ではなく、多くの人が手元のウォレットに保存しているであろうNFTです。NFTは、仮想通貨の1つですから、ビットコインと同様、所有権はなく財物でもありません。

 

さらに、そもそもNFTを買った人は「何の権利」を買ったのかという問題もあります。デジタルアートには、著作権がありますが、NFTを買ったからといって著作権を買い取ったことにはなりません。NFTが持つ権利は、それぞれの取引所が規約で定めたものに限られるというのが現状です。

 

さてNFTをだまし取ったら、「財産上不法の利益」ということで詐欺にあたったり、するのでしょうけど、いったい捜査機関がNFTとはどういう性質のものかを理解して行動してくれるのかというのも怪しいものです。

 

世の中の進歩に法律は追いつかないものですが、なかなかに仮想通貨周りは一筋縄ではいかないようです。

 

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