節約ノウハウによく出てくる「生活レベル」。「生活レベルが高いと貯金できない」「生活レベルを一度上げると落とせない」……etc.これは実際に事実だと思います。貯蓄や節約最重視の考え方だと、生活レベルをいかに上げないかが重要になります。
では生活レベルとはいったい何を指すのでしょう? 憲法でいう「健康で文化的な最低限度の生活」に必要な金額の何倍を消費しているか、を生活レベルと考えてみましょう。
生活保護の支給額を「健康で文化的な最低限度の生活」だと仮定すると、夫婦+子供で月額14万円+アパート代らしいです。アパート代を6万円とすると、年間で240万円になります。支出480万円なら最低限度倍率2倍、960万円なら4倍になります。
不思議なものです。難しいことを考えなければ、生活レベルは高いにこしたことがありません。いい家に住み、美味しいものを食べ、欲しいものを自由に買える生活のほうが望ましいに決まっています。
にもかかわらず、「生活レベルを上げないように」という話がでるのは、次のような理由があるからです。
- 収入を越えて支出してはいけない(レベル0)
- 貯蓄できないほど支出してはいけない(レベル1)
- 収入のために労働時間を伸ばしすぎてはいけない(レベル2)
- 収入が減少してもOKな支出レベルに抑えるべき(レベル3)
レベル0とレベル1は論外というか当たり前として、レベル2とレベル3は論点です。レベル2の例としてよくあるのは、支出を増やしたが故に残業やノルマなどがきつく、仕事中心というか収入中心の生活になってしまうことです。仕事自体も人生の経験でありスキルアップの機会であり、それ自体を楽しめるのであれば過度な労働時間というのもみのりのあるものになります。ところが、収入を増やすために働くというのは、不毛な時間になりがちです。
仕事のアウトプットが評価されて給料が上がるのであれば歓迎ですが、人がやりたがらない仕事をしていることの迷惑料として昇給されると感じたら、その仕事は収入のためにやっている領域に近づいていると考えましょう。
「あの人は管理職なんだから謝りにいったり、人が抜けた穴を自ら埋めるべき。そのために高い給料をもらっているのだから」こんなふうに発言している人は、管理職の役職手当は迷惑料だと考えているのでしょう。
レベル3の観点では、セミリタイアが視野に入ってきます。少なくとも年功序列的に給料が上がり続けるとか、一度上がった給料は下がらないという時代は終わりました。常に、自分の給与のピークはいまではないか? と考える視点が大切です。
「ピーターの法則」というものがあります。これは「能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。つまり無能となるレベルまで出世する」というものです。自分の出世が止まったと感じたり、5年昇給がなかったら、無能レベルまで出世した証拠でしょう。つまり、そこからの人生は、給与という観点では下り坂になる可能性が高いということです。
今後、収入の減少が見込まれるわけで、レベル0〜2を守るなら徐々に生活レベルを落とさなければいけません。ところがいったん上げた生活レベルを落とすのはたいへんなので、そもそも生活レベルを上げないようにしよう、となるわけです。
レベル3の観点で生活レベルを上げない最も確実な方法は、昇給部分をまるごと貯蓄に回すことです。またはそれを自己投資に使うことです。これは理想ですが、なかなかそうはいきませんけどね。
生活レベルを上げないための最も簡単な方法は、生活コストをできるだけ変動費化し、固定費化しないことです。
何が固定費で、何が変動費なのかは、これはこれで奥が深いので、別途考えてみることにします。